死神の精度 文春文庫版 伊坂幸太郎
伊坂幸太郎の本の紹介が多いなと思いつつ、「死神の精度」を読みましたので紹介します。とにかく、伊坂幸太郎さんの本は簡単に読むことができるのが長所です。たぶん、1,2時間で読めてしまうんです。つまり、お手頃感があります。スナック菓子みたいなものですね。それから、ゴダールへの言及(こだわり)とか自分の他の作品の登場人物の侵入とか、彼独自の世界観が、主題が異なる作品でも共通していて、次の作品に対する読者の感情移入を容易にさせます。(こういうのってすでにジャイムス・ジョイスなども作品内に他の作品の人物を登場させたりしていて、別に新しい技法でもなんでもないんですけどね。) この作品では、これまで見られた彼の暴力へのあこがれと反発が姿を消していて(隠していて?)、その分、安心して読むことができます。 情報部から与えられた情報にもとづき、あるひとりの人間にちかづき、死んでもいいかどうかを調査する死神「千葉」が主人公です。死神たちは姿や年齢も変えて人間にちかづき、一週間後に「可」と報告すれば、その人間は事故などに巻き込まれて死ぬことになりますが、「見送り」とすると、その時には人間は死を免れるのです。 ヴェンダースの天使たちは「図書館」にあつまるのですが、音楽好きな死神たちはレコードショップのCD視聴コーナーに集まって音楽を聴くのを楽しみにしています。 そんな死神と1週間つきあつことになった様々な人間の姿態を描いた短編の連作が本作品です。もちろん、伊坂幸太郎の作品ですから、他の作品の登場人物がちょこっと現れたり、また、連作中の他作品とのつながりが後でわかったりと工夫がこらしてあります。 つまらない通勤・通学時の読書にはぴったりだと思います。