海を飛ぶ夢
アレハンドロ・アメナーバル監督の作品。これだけでも見たくなりますよね。主人公のラモンは26年前に引き潮で海面が下がっているのに、不注意から海に飛び込み脊髄損傷を負ってしまい四肢麻痺となり、兄の家族に介護を受けて生活しています。ここからわかるのは脊髄損傷は頚髄であったと思われますが、頚椎レベルで2,3番目などにはいたっていないであろうということです。人口呼吸器がついていないからです。彼は周囲の人にこれ以上迷惑を掛けたくないと思い、さらに自分の人生を考えたとき、これ以上生きていることは苦痛と考え、尊厳死(つまり自死)を訴えます。支持者が集まり、無料で裁判を引き受けてくれる弁護士も現れます。弁護士は足が不自由な女性フリア(Julia)で、ラモンは彼女に好意を寄せます。さらに、息子2人を一人で育てる女性もラモンに好意を寄せたりと、ラモンもなかなかもてます。ラモンは口に筆を加え詩を書いていますが、フリアはその美しい詩を本にしようとします。一方、裁判所は尊厳死を許してくれません。フリアは発作を起こし、彼女もまた車椅子になります。ラモンは周囲の人に助けられて・・・・。そのころ、フリアはすっかり痴呆状態となっています。ラストに海の青い波が漂います。感傷的な映画ですが、ひとつ引っかかりました。まだ若いフリアが「脳血管性痴呆」と日本語に訳されています。これはおかしい。覚せい剤で脳血管障害は起こりやすいですが、どうも違うぞ。多発性硬化症かな。と思って、英語のサブタイトルがついているアマゾンコム(アメリカ)でかったDVDで見るとCADASILとある。なるほど、それなら納得。CADASILはcerebral arteriopathy, autosomal dominant, with subcortical infarcts and leukoencephalopathyの略で、若い年齢にもかかわらず、しかも糖尿病や高血圧などのリスクファクターが乏しいにもかかわらず,皮質下梗塞や白質病変が進行する優性遺伝性疾患です。遺伝子も同定されています。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/dispomim.cgi?id=125310上に詳しい説明があります。