エジンバった(3)終わりよければ全てよし
23rd Aug今日はレスターに帰る日。なので、朝から劇を見ようと頭を捻る。<星の数>そして選んだのはShakespeare for Breakfast (£5.50)。クロワッサンとコーヒーつき、という客引きっぷりに「2流の臭い」がしたので悩んだのだけど、2003年Sell Out Showという肩書きを発見して安心してみる事に。しかも4ツ星評価も発見。そうそう、フェスティバル中は色んな新聞(TimesやGuardianなども含む)や雑誌が劇の評価をし、4ツ星、5ツ星クラスは、それを「ババン!」とポスターに宣伝文句として貼り付ける。3ツ星程度なら宣伝にならないために、貼っていない。つまり、宣伝文句がないような舞台は3ツ星以下であると推測できるのである。<散策 日本刀>開演までまだ時間があったので、少しだけ周りを探索。そしたら、ある店で西洋刀に混じって日本刀を発見!二本で£50か£70。お好きな色をどうぞ。……ってか、何で?劇場に戻り、3階に行くと、すごい人だかり。これは期待できる!!実は今まで見た演劇はどれも30人に満たない少人数の客数ばかりだったのだ。客席に入ったら300人は入ろうかという規模で、舞台装置も立派。舞台の三方を客席が囲む形のもので、僕はその正面2列目真ん中に陣取る。それにしても、客席の上にクロワッサンが置かれている風景というのはなかなか奇妙な風景である。<舞台レビュー(2)朝食とエロスとミュージカル Shakespeare for Breakfast>(内容)内容はミュージカルに始まってミュージカルに終る、というもの。いきなり高レベルなミュージカルを披露し、要所要所で唄とダンスを挟みつつ、「演出家のワガママと下半身に振り回されながら、劇団員が公演に向けて練習に励む」という演劇で話は進み、最後は演出家を追い出して、めでたく公演にこじつけた団員たちのミュージカルで締める。(評価)ディモールト良かった!凄過ぎ!!脚本自体が面白いんだけど、役者の声量・動き・感情など、どれを取っても一級品!演劇の基礎を高レベルでクリアし、ミュージカル部分ではダンスと唄で魅せるんだから、すごいとしか言えない!台詞も唄の歌詞もコメディの要素がふんだんに盛り込まれていて、息抜く暇なく笑わされる。これだけの演劇をコーヒー・クロワッサン付で約1200円で見れたのは安い!あっという間の70分だった。(演劇的に勉強になった点)・21日に見た「Losing Venice」では、一人の役者に躊躇いが見えた為、それが劇全体の評価の低下に繋がった。 今回の劇では全員のレベルが高く、安心して見れた。 そうなると、集中して劇の内容にのめり込む事ができる。好循環で楽しめたのだ。 そういう責任感が(たとえチョイ役でも)必要なんだなぁ、と改めて感じた。・「演劇公演に向けてのドタバタを描く」という試みは、実は僕自身やってみたかった劇である。 こんな脚本が書けたらなぁ……。・当たり前だけど、大きな声、綺麗で大げさな動き、顔は客席目線、自信に満ちて役を演じる姿勢は必須。(社会勉強)・個人の最低点がその団体の評価になるというのは「会社」ではよくあることではないかと思う。 誰かの失敗によって、会社全体の評価が下がってしまう、というのは想像に難くない。 これは海外における「国籍」でも起こる。僕はそういう見方をしないようにしているけど、 (レスター語学コース唯一の日本人♂の)僕が問題あるような事をしちゃったら、 「これだから日本人は……」と思われると考えてほぼ間違いないだろう。 23歳になった訳だし、社会的な責任感を持って行動したい。・元気な演劇は、人を元気にしてくれる!(おまけ:ドッペルゲンガ-)高校時代の友人でいろく(仮名)によく似たアジア人が、綺麗な白人の奥さんを連れていたのを発見!役者の1人がESS時代のセクション長に似ていた!(おまけ2:宣伝文句)Edinburgh’s most effective wake-up call back‘Certainly worth getting out of bed for!’ (INDEPEDENT)‘Sizzling!’ (SCOTTISH DAILY EXPRESS)‘A sure-fire prescription for early morning blues’ (SUNDAY TIMES)It’s the dress rehearsal for Will- “The Musical!” and all is not going well for ambitious young director…when suddenly, out the depth of long theatrical history, Shakespeare’s “lost” musicals are discovered! The whole course of music theatre history could he changed forever should these ancient blueprints into the wrong hands…<舞台レビュー(3)演劇の凄さを思い知った!! the duchess of malfi by apricot theatre>すごく満足な演劇を観た幸福感に満たされながら、同じ劇場(舞台の場所は違う。2階だった)で演じられる『the duchess of malfi』(学割£6.50)を、さっき余分に貰ったクロワッサンを食べながら待機。今回は、なんと五つ星の劇である。4ツ星であのレベルだったから、これは期待できるッ!とワクワクしながら観たんですけど……期待通りやん!!!すごいってマジで!!!!!……と、興奮してしまいました。(内容)嫉妬と死が混ざり合い、人間の関係が…いや…その………って言うか、ぶっちゃけ解りませんでした!!!(笑)(評価)解らないのに、スゴイって、これ如何に?と、思われるかもしれないが、僕の英語力では、あの会話量についていくのは至難の業でして。それより、演劇的な演出、演技力、役者、というか演出が特にずば抜けてスゴかったのですわ。実は、フェスティバル中の会場は、どこも全て即席。しかも、1日にうちに同じ会場で4組・5組と入れ替わりで舞台に立つ。だから、大道具なんて持っての他。小道具を駆使しながら世界観を表現する必要がある。演劇には大別して「きちんとしたセットでやる」というものと「無い物をジェスチャーで表現し、観客はある物として受け取る」というものがあるのだけど、役者や演出家によって、好き嫌いは別れます。僕は後者の方が好きで、それってTVドラマではできない世界の構築なので、演劇の良さが引き立つと思うからなんだけど、まぁ、これは人それぞれ。今回見た演劇では、勿論後者に当たる。大道具を使えないというのは、マイナスでもなんでもない。プラスになる。この演劇がそれを教えてくれた。ただし、内容に死や性的表現が随所に盛り込まれており、本気でDeepなKissをしていたので(昼の12時から)、ちょっと子供には見せにくいし、僕自身が演じるのが難しいだろう。また、どの役者のレベルもめっちゃ高い(最低でも3000円は取れる)ので、この脚本・この演出をしようと思ったなら、すごいメンバーを集めないと難しい。(演劇的に勉強になった点)・演出が見事。小さな劇場(とはいえ100人は入る)で、即席の舞台ゆえに一番前の席との境目が、ほとんどない。 だからこその演出が「その場に居ないことになっているキャラは動かない」 たとえ舞台の真ん中にいようと、話し終えて首をカクンと下げた後は、その人はその場に居ないのである。 舞台上では「居る人間」以外は原則として動かない。 この結果、客は「居る人間」の会話に集中できる。・その静と動の切り替えが見事で、暗転中の動きすらも無駄が無い。 他の人の演技中にモノをはける事があったが、無表情であることで「黒子」であるとわかる。 これも、客に舞台に集中させる工夫である。・最初のシーンは、ピエロ(登場人物は6人全員が様々なピエロのメイク)が歌い、まずOPテーマ。 その後、舞台に散らばるように置いてあった小道具をハケて、真ん中にあった「試着室」から再登場。 「試着室」とは、カーテンが舞台の真ん中にドン!と置いてあるのだが、これを着替えのスペースにしたり、 出入り口の役目を果たしたり、上やカーテンの隙間から顔だけ出して会話してみたり、と多様な用途で使う。 大きな小道具は、「試着室」と古びたトランクと椅子のみ。それらを色んな用途で使う事で客を飽きさせない。・次のシーンで、2人の男達が、チャットの形で人物紹介。 1人1人をピックアップして話すのだけど、その紹介されるキャラは舞台の真ん中に来る際に、衣装チェンジをする。つまり、他のサブキャラを演じる役者から帽子やコートを機械的に着せられることで、メインキャラになる。着替えさせた後は、メインキャラと解説役以外は動かない。 これを最初のうちにする事で、「服装でキャラは変わるのだ」という事と「同じ役者であっても、この服を着ている時はこの役を演じているのだな」という約束を、客と交わすことができる。 また、この時に「動かない人間は居ない」というルールを客に定着できる。 ・衣装の使い方もすごい。帽子と上着がメインだけど、仮面舞踏会な仮面をつけることで「その他の人」になったり、男役者が鹿鳴館なスカートを装着する事で「女メイド」に変化したりもする。 着替えスペースは舞台袖か「試着室」だが、舞台上でスカート装着などもある。・表情が全てを語ることができる。 特に「女メイド」役の男役者は、台詞が無い所で表情が豊かに変わり、英語の会話がわからなくても、彼の表情を見れば内容は推測できるほど。・メイクは眉毛や唇の形、アイシャドウで、それぞれ個性を付けている。 ピエロメイクは顔の表情を強調したり、キャラの定着に一役買っているのかもしれない。 ・伏線の張り方。 舞台中盤で5人が「試着室」から、歌いながら前に迫ってくる。各人は紐、聖書、剣、銃、瓶を舞台前方に置く。この直後は話が何事もなかったように進むのだが、終盤になって、それらがストーリーの進展とともに使われていく伏線になっている。・やはり中盤、歌とともに、バケツにワインのような赤い液体が注がれる。 そのバケツはやっぱり放って置かれるのだが、舞台終盤で「血糊」の役を果たす。 いきなり口に液体を含んだかと思うと、血を吐きながら断末魔の捨て台詞を語ったり、 スポンジに血を含ませて「え?明日の舞台は?」と要らぬ心配をしてしまう程ベットリと衣装につけたりする。 舞台上で飲食物(水を含む)は基本的には御法度なんで、マネができるか否かはわからんけど。(社会勉強)・「静と動の切り替え」というのが、とても重要だと思った。「いつも全力でもいけない」という教訓、「黒子に徹すべき時は目立たないようにする」という教訓などが学べる。常に目立つ必要はない。出るべき時は出る、引っ込むべき時は引っ込む事が肝要だ。・「表情の大事さ」が特徴的だった。最近、後輩から「(言葉も大事だけど)もっと欲を言えば、表情とか醸し出す雰囲気とか、言葉のない自分でもいろんな表現ができたら面白いだろうな、って思います。」という言葉をメールで貰ったんだけど、表情が語るもの、そして雰囲気が語るものって少なくない。そういうものを大事にしてみようと思う。・冒頭での定義付け。どういう条件で話をするのか、というイントロダクションは必要である。演劇だけではない。エッセイでもそうだし、プレゼンでもそうだ。 ・制約をプラスに変えるという思考。大道具が一切使えないという条件で、どうやって色んなもの表現するのか。この演劇では、制約を「世界観の構築」の手助けにしてしまって、制約がマイナスではなくプラスに転じている。そういう思考は大事ではないだろうか?工夫次第では制約はプラスへのステップでしかない。はー、ってな訳で、色々と学べました。演劇って凄いやぁ☆そう思いませんか? ちょっと長くなったので続きは明日の日記にて。