裁判を受ける権利 ~マスコミ~
理不尽にも、地方自治体が住民の正当な基本的人権の行使を妨害するとはなんたること。裁判外で原告住民を攻撃する汚いやり方。こんなことがまかり通ってはたまらない。農民Aさんは、A4紙一枚に事件の概要といま起きている裁判妨害について、愛読しているA新聞社地元支局へファックスを入れました。でも数日待ちましたが、無反応。取材の電話もなにもありませんでした。ほったらかし?大新聞にとって、地味な民事訴訟などニュースバリューがないと判断したのでしょうか。一ヶ月後の夜、こんどは地方のN新聞社に電話を入れてみました。担当らしき女性記者は、1時間くらいAさんの話しを聴き、これまでの経緯が分かる資料があれば、全て送付してほしいと。Aさんは、公共工事によってもたらされた被害状況、自治体とやりとりした書面、民事調停の申立、裁判資料、人権救済など手元の資料をコピーし、厚さ1センチ以上になる資料を記者宛に宅急便で送りました。その後半月経過。結局それ以上の取材はなく、担当記者からは何の音沙汰もなく、記事になることはありませんでした。そんなある日、B新聞から「読者の広場」にAさんの投稿を掲載するという連絡がありました。農民Aさんの投稿記事は、編集部のほうで投稿者名を匿名にしたほうが良いというアドバイスがありました。Aさんの名前や自治体の名称を原稿通り掲載することで、Aさんにさらなる理不尽が降りかかることへの配慮でした。あと、字数制限を含めていくぶん要約的な内容になりましたが、全国の読者の目に止まることとなったのです。裁判をしたら人権の侵害が 奈良県 山口友和(注:編集部がつけた仮名です。) 公共工事の不備をめぐって、自治体を相手に裁判をしています。あくまで自治体側に不備はないとの一点張りでしたので司法の場での話し合いを求めたのですが、自治体側は、弁護士をつけて争ってきました。 小さな街ですから、裁判をしていることなど、むしろ隠しておきたいことです。ところが準備書面が自治体に届いたころから、裁判の情報など一般人が知るはずもないものが流されてきました。 自治体側の出席は、代理人弁護士のみ。傍聴人もいない裁判の内容が、どんな証拠が提出されているのかまで、すべて漏れているのです。しかも、それをもとに悪質な風説が流されて、人権侵害が生じています。 本人不在の会合で「おやじと息子が住民相手に金を要求しているらしい。けしからん」といった、虚偽の会話が交わされています。家族に向かって「あんたとこの家風は怖い」と暴言をはく議員もいます。相手の主張が気に入らないからといって、こうした陰険な圧力をかけ、個人のプライバシーや人権の侵害までされ、とまどっています。 地方公共団体が司法の場で堂々と争うならまだしも、裁判外で相手の住民に圧力をかけるなどとは、納得できません。B新聞の掲載通知には、『“奈良県の山口さんにガンバッテと伝えて”、“必要ならビラを配って地域の人に訴える手伝いをしたい”といった激励の電話が入りました。がんばってください。』と、添え書きがありました。投稿を取り上げてくれたB新聞が全国に配達されたこと、そして、良識のある人たちの励ましが嬉しかった。暖かいものがこみ上げてくるのでした。しかし、おおかたの新聞が興味を示さなかったことは、何を意味するのだろう。商業新聞は、地味なネタには興味がない?それとも、係争中の事件だから遠慮した?いや、係争中でなければ起こり得ない訴訟妨害という人権侵害であり、係争中であるからこそタイムリーで一刻の猶予もない事柄だろう。“正義のペン”とは、権力に対峙する姿を膾炙してマスコミに向けられる言葉。裁判を受ける権利=基本的人権に対して、敏感さが足りない。マスコミさえも鈍感になっているのかと、Aさんは思う。