健康保険制度の崩壊
医療が受けられない~ゆきづまる国民健康保険~Nスペの予定を見ていると表記の番組があった。実は国民健康保険を含む社会保険料は広義の税金であり、健康保険税の納付などという言葉を役所も使っている。私は長年企業の経理を担当していた。社会保険に関する手続きも実務経験がある。労働者の立場から見て、国民健康保険と社会保険はどう違うのか。保険料の半額を雇用者が払ってくれる社会保険に加入した方が得だという事は一般常識である。しかし常識が通用しない場合がある。それは国民健康保険料は前年度の所得に基づいて算定されるからである。国健の方が得な場合とは、前年の所得が少なかった場合である。ここで言う所得とは、実収入の事ではない。税務署に行って申告して確定した前年の所得に応じて当年7月から来年6月までの一年間の保険料が決まるのだ。だから確定申告は重要なのである。還付される所得税額よりも、翌年の負担する社会保険料の減額の方が一桁大きいのに、それを知る人は意外に少ない。例えば私は平成14年3月から8月まで失業していた。その間の受給した失業保険は所得税法上、無視される。その結果平成14年度は納付税額0円になった。源泉徴収された所得税は全額還付された。だが納付税額0円という確定申告が通るとメチャ美味しいのだ。まず国民年金の支払免除申請が通る。これで一年間年金はタダになる。国民健康保険も介護保険分以外は全額免除になる。平成15年7月~平成16年6月の国民健康保険料はたった20,300円ですんでしまったのだ。所得税の申告と市役所の健康保険課および社会保険事務所への手続きを知っていれば、実際にはそこそこの収入があっても、社会保険料はタダ同然になってしまうのだ。が去年、国民年金に関する法改正があって減免申請が難しくなった。今年からは国民健康保険料の算出方法が変化したし、減額申請が認められる範囲が極めて限定されてしまった。であるから税務署を欺きうまく確定申告しないと甘い汁は吸えない事になってしまった。むろん世間のお年寄りにこうした悪知恵のある人は少ないので、払えない人が増えてきている。こうなった原因は地方交付税の減額等による地方自治体の財政困窮と健康保険の歳出増加にある。社会全体が高齢化し、健康保険加入者も高齢化・所得減少の傾向にある。従来の算式で保険料を集めていたら保険財政は大赤字で、地方自治体が赤字再建団体に成りかねない所まで、追い詰められているのだ。もともと国民健康保険は自営業者の為の保険という位置づけであった。しかし高齢化と中小零細企業が社会保険を維持できない所が多いため、高齢者および低額所得者(非正規労働者)全体の受け皿と化してきてしまった。とてもではないが市町村で支えられる物ではなくなってきている。厚生労働省は今のままでは2020年には勤労者の自己負担率を6~7割。老人の自己負担率を4~5割にしなければいけない、と言っている。これでは医者に行けなくなってしまう。どうせ行けないのなら保険料なんか誰が払うもんか・・って事で崩壊するであろう・・と私は予測するのだ。