グローバル企業に対する課税が難しいのは何故か~日本の法人税の問題点(3)
現行の法人税法ではグローバル企業に対する課税が難しいのは何故か、をのべる。たとえばT自動車がアメリカに工場を作って現地生産する場合を考える。アメリカの自動車会社と同じ部品を使える部分は現地で調達する。しかしT社独自のエンジンやユニットは日本の工場から出荷した物を使う、と仮定する。このアメリカ工場の経営形態が1)T社が直接経営している場合2)T社が出資した100%の小会社が経営している場合3)現地の企業などなど多くの関係者が出資した会社が経営している場合によって経営の有り様も変わるかもしれないしアメリカの法律上の扱いが変わってしまうので当然課税関係は変わる。ところが、日本の現行の法人税法は全世界所得課税・外国税額控除方式だ。現地法人の経営形態が変わっても「実質的経済活動は同じであるから課税関係は変わらない」という考え方が日本の法人税法の考え方なのだ。これ昭和27年から変わっていない。いかに現実と乖離しているか・・車の実販売価格を 50,000ドル、1ドル85円、国内から供給した部品価格を 8,000ドルアメリカ工場での直接原価 15,000ドルアメリカ工場での間接経費 7,500ドルと仮定する。このアメリカ工場の経営形態が1)T社が直接経営している場合ならば、T社の粗利益は19,500ドルになる。しかし現実には2)か3)の現地法人が経営している場合がほとんどだ。現地法人が決算して利益に対してアメリカ連邦政府と州政府に税金を払い、株主である日本の本社に配当を支払う。日本の本社は現地法人との取引と配当を収益に計算して日本政府などに税金を支払う。ところが日本の税制は連結納税を認めていない。一方では全世界所得課税・外国税額控除方式なのだ。これは現地でいくら損しても日本本社の所得から控除しませんが現地法人が利益を出せば基本的に日本政府に対して納税義務を負うという、実に日本政府にとってムシの良い話なのだ。むろんグローバルスタンダードでない事は言うまでもない。私はグローバルスタンダードを無批判に受け入れよなどとは言わない。むしろ逆でもっと現実的な税制に変えないと実質的にグローバルスタンダードに取り込まれてしまう、と思う。