製造業に派遣社員が多い理由
この文章は池田信夫氏のblogにコメントしようと書いたものです。投稿してから気付いたのですが20行以上のコメントを削除するってことらしくお蔵になるのも悔しいので、ここの書きます。製造業に派遣が多い理由は、技術の陳腐化が早いためだと思います。私は2003-2007年に三重県の液晶パネル工場で派遣労働者(外国人を含む)の労務管理をしていたものです。世間ではS社は非正規労働者を安く雇い搾取している・・と思われています。でも私は現場にいて思ったのは現実はそんなに単純じゃないという事です。現場にいますと従事者の半分は外国人でした。どうせ外国人を雇うなら最初から中国に工場を造ったらいいじゃないか・・と思いました。中国に工場を造ると業務上の機密が保持し得ない。付加価値の高い工程・技術資本集約的な工程・試験研究開発的な部分は日本に残す。労働集約的な工程・技術的に安定し作業が99%マニュアル化された部分はどんどん低賃金国の工場に移すというのが現場の実情です。すると日本人の正社員と非正規社員がパイの取り合いをしているのではないのです。景気が良かろうが悪化しようが生産技術や製品は急速に陳腐化し、その付加価値は下がっていってしまいます。それにつれて日本人の雇用は縮小し低賃金国労働者の雇用に置き換わってしまうのです。三重県の液晶パネル工場の最盛期は約6000人の労働者がいました。そのうち非正規労働者は60%を超えていました。それが昨年末には15%になったというのです。たった1年半で2500人も削減したというのです。同様の現象は自動車・電機など日本の基幹産業に発生しています。私が言いたいのはこれは景気変動だけが理由ではない、ということです。雇用が失われた最大の理由は技術の陳腐化と価格・付加価値の下落によるという事です。技術の陳腐化によって失われた雇用は回復しないのです。景気が回復したって一度流出した雇用が国内に戻ることはまずあり得ません。日本と中国の賃金水準が均衡するなんて考えられません。どうすれば日本の雇用は回復するのでしょうか。新たに付加価値の高い技術・サービスを開発するしかないのです。ところが・・新しい技術を開発したって同業他社と価格競争してしまうと生産設備やオペレイション技術は急速に海外に移転し雇用も失われます。任天堂みたいに世界中に独占的に製品を供給し、継続した利益を上げる企業が国内に必要だという事になります。電機・自動車・鉄鋼などの主力企業を再編して日本企業同士が過当競争するのをやめさせるべきだと私は思います。生産設備やオペレイション技術を急速に海外に移転しないようにする。液晶テレビは日本メイカー同士が技術開発競争をしすぎて研究開発・設備投資を回収もできていません。資本家も投下した資金を回収できないので、付加価値を生産によって得られないが故に労働分配率も低い。マルクスが予言した資本の利潤率も低く、労働分配率も低い、資本家も労働者も疲弊する構造を打ち破る事が今の課題だと私は思います。