トルストイーイワン・イリイッチの死ー夫婦喧嘩
ロシアの文豪トルストイの名前を知らない人はいないと思うが、その作品を読んでいる人は意外と少ない。彼の代表的な作品は「戦争と平和」、「アンナ・カレーニナ」、「復活」、「イワンの馬鹿」、「人は何で生きるか」、「文読む月日」、など数多くあるが、今回は「イワン・イリイッチの死」を読んだので、その中で感じたことを2回に分けて紹介する。今回は結婚と夫婦生活について書いてみたい。イワン・イリイッチは才能と環境に恵まれ、検事になり、裁判官になり、上からも下からも信頼され、その仕事への評価も高く、社交界でも大もての存在だった。家柄がよく、チャーミングで、器量も悪くなかった女性と付き合い、もっといい女性がいるかも知れないが、この人でもまー悪くないかなと思って結婚した。所が妻が妊娠して1,2ヶ月した頃から理由のない嫉妬、いたわりの要求、恐ろしい剣幕での罵り、彼が屈服するまで罵り続けるなど最悪の夫婦生活になってしまった。裁判所での彼の仕事は順調で世間的には尊敬を集めていたが、家庭では虐げられるので、何かと言えば仕事に逃れ、家庭との間に壁を作るような生活になっていった。彼は後に重病になり、やがて死を迎えることになるが、その病者に対する妻の態度は「夫の生活法が悪いから」、「薬を決められたようにきちんと飲まないから」などと、病気になったのは彼のせいだと非難していたので、妻が心配したり思いやってくれてる印として額に接吻してくれた時も、その欺瞞性を感じて心から憎悪を感じる状況だった。この反対に素晴らしい男性と思って結婚したら、とんでもない男性だったりすることもあり、結婚する時はいい人だなと思って結婚しても、その後は夫婦喧嘩が絶えない夫婦があるのは、世界万国共通だと思う。イワン・イリイッチは職場である裁判所や世間の人たちは彼にうやうやしくかしずいてくれるのに、妻は自分を馬鹿にしたり、軽蔑したりするのに絶えられなかった面もあると思う。これは世間一般夫婦というものは殆どがそんなものだと言うことをエリートだった彼は知らなかった悲劇がある。妻から言わせると彼は世間の人には素晴らしく礼儀正しいが、家では机や家具が曲がったり汚れていたりしても文句をいう気難しいところがあり、結婚する前は彼に惚れ抜いていたくせに、こんな人と結婚して人生を台無しにしたと考えており、どっちもどっちのところがある。この二人は家柄もよくエリート同士の結婚だが、どちらかというと有名人とかエリートの結婚はプライドなどがあり、そのことを自覚してよほど心して自分と相手を大事にしながら生活しないと失敗することが多い。これに反して、自慢すべきものが何もない庶民同士の結婚はうまく行くことが多い。結婚には夫婦喧嘩はつきものだが、それによって相手を憎むのではなく、返って契りが深くなってくれればと思っている。喧嘩している時は一方的に相手が悪いと思えるが、一息入れて悪くはないと思っている自分に目を向けてもらいたい。自分にもきっと悪い所があるだろうし、それより、好きで結婚した相手なのに、こんな些細な問題でいがみ合っている自分に気がつくはずである。そうなれば面子などかなぐり捨てて自分が折れることである。一方が折れれば喧嘩はなくなる。事件の決着の仕方には不満でも相手を思いやって自分が喧嘩をやめたという気持ちはまんざらでもないはずだ。後にしこりを残さない決着をつければその喧嘩は後退ではなく一歩前進になるはずだ。