入院
息子のお弁当を作って実家へ向かう。途中実家へ電話を入れるが既に留守電。私の携帯電話がマナーモードだったために繋がらなかったのか?そこへ主人から電話が入る。「市立病院へ来て欲しいって母さんから電話があったぞ」「わかった」市立病院の内科へ行くと母が知人と一緒に不安そうな顔で座っていた。私を見つけると「お父さん、脱水症状を起こしているって、今、点滴をしているの」処置室へ入るとカーテンを引いたベッドに横たわって顔にタオルをかけた父がいた。「おとうさん、」と呼びかけるとややあって私の方に目を向けた。が、父の顔は干からびて見え唇は白く乾いてしまっている。声にならない声で「すまんな」と言った。もう少し早く帰っていれば・・・悔しくて涙がこぼれた。主治医と話す。「急性腸炎です。脱水症状が酷いので入院して様子を見ましょう。手続きをお願いします」直ぐに個室の手続きをした。トイレが近いのだ。嘔吐もまだ治っていない。大部屋での入院生活は父のあの性格では無理だろう。治るものも治らない。特別室しか空いていないと聞いたが、そんなことはかまっていられない。とにかく父が入院生活をしやすいようにしなければ・・・。ふらふらしながら歩くのもままならない父は車椅子で移動。検査に行くのも全て私が付き添った。昨年の母の入院がこんなところで役に立った。喜ぶべきか?やっと検査が終わり個室へ移動。倒れこむようにベッドに横になった父は疲労の色が隠せない。それでも母に心配をかけまいとして『母さん、もう大丈夫だから家に帰ってゆっくりしなさい』と言った。「お父さん、自分のことだけ考えてちょうだい。病気を治すことだけ考えて」点滴に繋がれた父の姿はいつもの威厳が感じられない。世界一怖い父が今は病人になっている。8時まで病室で過ごし、看護は私たちがしますからお帰りください、と看護婦さんに促され病室を後にした。母も疲れているので帰ることにし、簡単に夕食を済ませてからお風呂を沸かし、ゆっくりと入ってもらう。ベッドに入ったのは11時半をまわっていた。主人に今日の報告をメールでしてから息子にもメールを入れる。息子からの電話を聞いてから父はお粥を一口すすったのだった。孫は特効薬になったのだろうか?母の寝息を確認して私も目を閉じた。