タイはこの後どこに向かうんだろう
仕事柄、十数年間にわたりほぼ毎月の様に訪問しているタイですが、ここの所、例によって(苦笑)かなりキナ臭い感じです。毎回毎回「赤シャツvs黄シャツ」の構造になってるんですが、今回は少々心配しています。まぁ、基本的には都市部を中心とした旧支配者層に農村部の支持をバックに戦いを挑むタクシン一族って事です。タイ人でもない私が、他国の政治に口を挟むべきではないと思いますが、あまりにタイの国益や国民の未来を無視した奴らに対しては、「どっちも早く逝っちゃってくれ!」と言う感じです。インラク首相の被害者面もイライラするし、反政府指導者ステープ氏の「毎朝、美顔マッサージしてます?」的に妙にツルツル、テカテカした厚顔みると張り倒したくなる自分がいます。 立憲君主制に移行する以前から、タイの政治や経済を牛耳ってきた旧支配者層。こいつらは、自分の利益だけを追求し農村部や貧困層に対する思いやりは配慮なんてまったくしてきませんでした。今でもバンコクっ子の中には、東北地方(イサーン)の人達を「コン・ラオ=ラオス人」と蔑称し差別する奴らがたくさんいます。さすがに最近ではあまり聞かなくなりましたが、かつて農村部では「口減らしと生活維持のため娘が身売り、都会に出て風俗」と言う話がゴロゴロしていました。 それにもかかわらず、タイの金持ちの金満振りって言ったら、金持ちでもちゃんと税金取られちゃう我が国の成金達なんててんで話しになりません。まぁ、決して経済大国ではないにもかかわらず、世界で一番金持ちの王様は誰でしょう・・・って所で、旧支配者層の搾取振りが伺えると思います。 「タクシンは農村部に金をばら撒くから選挙をすると自分たちが負ける」とか反政府指導者ステープ氏はのたまっておりますが、言葉は正しく使っていただきたいものです。正しくは「俺たちだって負けずに金ばら撒いてるけど、数でタクシンに勝てんっ!」でしょ。今回のデモに参加している中には「基本的にはタクシンを応援しているけど、デモに参加すると日当もらえるから。選挙になれば当然タクシンに投票するぜぇ!」と言う奴がワンサカいます。良くも悪くもたくましい人達です。 そんな旧支配者層に対抗するように力をつけてきたタクシン一族だって似たようなもの。確かに農村部や貧困層に金をばら撒きましたが、やり方としては「よしよし君達には一律50円あげちゃおうっ!でも、その際に手数料として一人当たり100万円僕が貰う事にするからね」みたいな感じです。なんだか我が国の田中角栄元首相を見るようです。でも、まったく自分たちの方を見向きもしてくれなかった旧支配者層に比べればタクシンはまさに神様!・・・「角栄先生は悪い事したかもしれんけど、おらが村に大きな道路作ってくれたし公民館だって建ててくれた」と言う新潟県民を見ているかのようです(ちなみに私、母方が新潟でして、実際にそういうことを力説する地元の爺婆をたくさん見ております)。と言う訳で、タイ北・東北部の農民層の間ではタクシンの人気は絶大です。 そしてタイでは都市部の人口よりも農村部の人口の方が断然多いので、何回選挙をやっても勝つのはタクシンサイドという図式になってますから、反政府側(旧支配者層)が選挙をやりたがらないのは当然です。彼らとしては選挙ではなく、政権譲渡と言う形で権力を取り戻したい訳ですし、今までは何回も同じ事を繰り返してきました。 でも、本当に今回もその図式で大丈夫なんでしょうか。選挙なしの政権譲渡で、今までと同じように農村部の人達はおとなしく引き下がるのでしょうか。最近、バンコクで農村部出身の人達と話をすると、以前とはずいぶん意識が変わっている事に驚かされます。要するに「基本的人権」に目覚めつつあるんでしょう。以前であればタイ人ならば絶対口にしないはずの「××様」に対する不満も、かなり親しくなった後の私的な場所であれば平然と口にするようになっています。 旧支配者層は「農民や貧困層なんて所詮・・・」的な旧泰然とした意識で事を進めると、後々取り返しの付かないような騒動になる恐れがあると見ています。私にとっては「第二の故郷」とさえ言えそうなタイだけに、今後平和的解決の方向に進む事を願ってやみません・・・とか書いてますが、残念な事におそらく解決策がない事はほぼ間違いありません。まったく困ったもんです。