「火垂るの墓」英語版カスタマーレビュー
「短歌人」7月号原稿の短歌の締切りで、ここ数日間は完全に煮詰まっていたため、ブログの方はなんか気合いが入ってなくてすいません。・・・そのせいか、割と練れた、というか煮詰まったというか、まあ何とか形にはなったと思う。・・・出来た作品は、歌誌掲載後に発表します。さて、きのう9日付の読売新聞夕刊ライブラリー面の「愛書探訪」という連載読書評欄に、作家の石田衣良が、野坂昭如の名作「火垂るの墓」について書いていて、その関連で、アマゾン・コム・サイトの英語版「火垂るの墓 Grave of the Fireflies」DVDと、そこに付けられた、現在実に587本に及ぶ厖大なカスタマーレビュー(全て英文)について触れていた。・・・さっそく覗いてみると、これはもう驚くほどの絶賛の嵐である。しかも、多くのレビューが実に見事な名文で、力が入っている。僕の貧しい英語力でも十分分かる。特に、「最も役に立ったカスタマーレビュー Most Helpful Customer Reviews」欄に掲載された「全てのメディアの中でも、最も悲しい表現形態の超絶的なアニメ Transcends Anime to be one of the saddest forms of any media」という論文や、「心揺り動かされるほどパワフルで、心奪われるほど詩的な反戦アニメ Emotionally powerful, hauntingly poetic, anti-war anime」などは、そのまま英語の教科書級であると言えるだろう。ご存知の通り、一定の事象に対する、例えば日本文化に対する世界の評価を知るのには、今やインターネットに敵うものはない。この圧倒的な高評価は、そのまま日本文化の底力を示していると言って差し支えないだろう。ちなみに僕は、野坂昭如が直木賞を受賞した原作を、最初の雑誌掲載時ではないが、中学生の頃、新潮文庫収録時のほぼリアルタイムで読んだと思うが、まぎれもなく現代日本文学の名作だと思う。火垂るの墓/アメリカひじき(新潮文庫)文庫に同時収録された「アメリカひじき」も、戦後アメリカ軍(進駐軍)の軍需物資のあるものを「アメリカひじき」だといって料理して、美味い美味いと食ったという老婆の、悲惨にして、ある意味では今でいう“イタい”ユーモアも感じさせる名作。ちなみに、石田衣良の同記事によると、「火垂るの墓」は、作者の野坂氏が売れっ子作家の絶頂期にあって複数の締切りに追われていたある日、午前6時に書き始め、午後3時には完成稿を編集者に手渡したのだということだ名作が生まれる過程というのはえてしてそんなものであり、夏目漱石は、かの「坊ちゃん」をノリノリで1週間で書き上げたと言われるし、ドストエフスキー、バルザックらは博打でこさえた莫大な借金返済に追われ、借金取りの目をかいくぐりながら次々と世界文学の最高峰を生み出した。・・・これぞ人間精神の不可思議だ~。「締切り」って偉大~?火垂るの墓 完全保存版サクマ式ドロップス