藤原彰子 見るままに露ぞこぼるるおくれにし心も知らぬ撫子の花
藤原彰子(ふじわらのあきこ、しょうし)見るままに露ぞこぼるる おくれにし心も知らぬ撫子なでしこの花後拾遺和歌集 569見ているだけで涙がこぼれるのです。見ていると、朝露がこぼれる撫子の花を無邪気に摘んで持ってきた、遺されたことを心にも知らぬ、花のような撫でし子よ。註一条天皇の中宮(皇后)だった作者が、崩御によって皇太后となったある日、まだ父の死を知らぬ頑是ないわが子・敦成あつひら親王(のちの後一条天皇)が、撫子の花を摘んできたのを見て詠んだ。「文学担当」の女房(侍女、女官)だった藤式部(紫式部)の指南も入っているかも知れない。象徴主義的技法を用いている佳品。* NHK大河ドラマ『光る君へ』10月27日放送。