坂本野原 あいかわらずお美しいと言ったきり言葉つづかず初恋びとに
坂本野原のはらあいかわらずお美しいと言ったきり言葉つづかず初恋びとにきれいだね信じられないぐらいだよ酔いにまかせて小声で言いぬその直後寄ってたかってちゃかされる同窓会の定番のノリこの齢になってさえなお煩悩は風と共には去らぬなりけり恋人よ君は旅立つ南へと向かう列車で桜咲くころ東京へ嫁いだ君のしあわせをひそかにいつも祈っているよ美しい思い出だけを永劫とことわにぼくらの時代ときは過ぎ去ってゆくGod, our first and lost love is eternal, isn't it?妻子には言えぬ思いを胸に秘め同窓会の夜は更けゆくうきうきでどきどきわくわくブギウギと挨拶すれど全然ウケずすべからく同窓会は若返りの妙薬だから出席すべし血圧が上がっていると自分でもはっきりわかるほどのときめき思春期をともにすごしたかけがえのない関係は家族うからのごとしフジモンの芸風に似て立ち位置はガヤだなとわれ自己像措定セルフ・イメージまだ短歌詠んでいるのと訊く女子に坂本野原さかもとのはらでググってと言う本名を名のれよという無茶振りにそりゃ無理だよと宮仕えの身新しくCD買い足したそうなハーブ・アルパートとティファナ・ブラスのドストエフスキーっぽいよとオードリー・オールナイトニッポンを褒むI君とCとS君ありがとね幹事はいつも貧乏くじね3年後高校同窓会がある こちらはKとぼくが幹事で一生涯Kが親分おれ子分 思いがけずもエリコにウケたちらほらと夭折したる旧友とものいて死の原因をこまごまと訊く親友のUは心筋梗塞で大学病院に死す 医師なのにぼくたちはどこから来たかどこへ行く同窓会は黙示している* 厳密に言えば、「同窓会」とは、その学校の卒業生全体をいう言葉であり、一つの年次の卒業生の会合は「同級会、同期会」が正しいという意見もあるが、現代語の世間一般の用法に従い、ここでは同窓会とした。