藤原敏行 秋来ぬと目にはさやかに見えねども
藤原敏行(ふじわらのとしゆき)秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる古今和歌集 169秋が来たと目にははっきり見えないけれども風の音にはっと気づかされたなあ。註古今調特有の理屈っぽさもやや感じられるが、繊細な感覚と端正な言い回しで秋の訪れを詠った秀歌。さやか:亮(さや)か。分明。はっきり、くっきりしていること。「爽やか」とは語源的に無関係。ね:打ち消し・否定の助動詞「ず」の已然形。おどろく:気づく。目が覚める。はっとする。現代語「驚く」の語源だが、ニュアンスは異なる。れ:自発の助動詞「る」の連用形。自然とそうなる意味。「ぞ・・・ぬる」は強意・整調の係り結び。「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形。「音」と「おどろく」が掛けてあるのかも知れない(当時、濁点表記はなかった)。 秋 リトアニア 鰯雲(煙樹ヶ浜) 月見饂飩ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン * 画像クリックで拡大。