ビンセント・ミネリ「若草のころ」シネ・リーブル神戸no143
ビンセント・ミネリ「若草のころ」シネ・リーブル神戸 「愛しのミュージカル映画たち」の最終回はジュディ・ガーランドでした。前にも言ったことですが、1970年代に映画を見始めたころ、アメリカ映画だけではなくて日本映画の喜劇とかの、ぼくにとっての案内人は小林信彦でした。 その頃のぼくは淀川長治とか双葉十三郎といった人たちのすごさがわからなくて、ちょっと理屈っぽい小林信彦に惹かれていたのでしょうね。 まあ、今となってはどの方もすごいなあと思うのですが、問題は、その当時、本のなかで話題になるちょっと古めの映画を見ることができないことでした。マルクス兄弟やバスター・キートンといわれても、まあ、困ったはずなのですが、そこは、それ、「読んでわかったつもり」という得意の思い込みで、理屈だけはくわえこんでいたのですが、今になって、ホントおバカだったことだと思うのですが、まあ、後の祭りです。 まあ、そういう女優さんの一人がジュディ・ガーランドでした。今回の企画の中で二度目の登場です。最初に登場したのは「イースター・パレード」でしたが、彼女よりもフレッド・アステアの足技に目を奪われた気がしましたが、今回はジュディ・ガーランドの映画でした。 映画はビンセント・ミネリ監督の「若草のころ」です。 オルコットという人の「若草物語」という4人姉妹の小説がありますが、よく似た趣向の物語でした。もっとも、この映画の原作は「若草物語」ではありません。「5135 Kensington 」という短編小説集の中の一つ、「Meet Me in St. Louis, Louis」という小説の映画化で、著者のサリー・ベンソンという人は、この映画の三女アグネスなのだそうです。 まあ、それにしても、20世紀前半のアメリカのホーム・ドラマには共通する型があったんじゃないでしょうか。既視感のある家族のお話でした。 1903年のセントルイスという町が舞台で、「Meet Me in St. Louis, Louis」という、映画の題名にもなっていますが、1904年のセントルイス万博のテーマソングような歌が、映画でもテーマソングでした。 ほかにも、たくさんの名曲が歌われるのですが、中には「茶色の小瓶」とか「埴生の宿」とか、ぼくでも知っている歌がダンス・ミュージックとして使われていて、ちょっとご機嫌でした。 「ああ、この子面白いなあ。」 そう思ったのが四女のトゥーティ(マーガレット・オブライエン)の演技でしたが、1945年のアカデミー賞の「子役賞」だったそうです。今でも、そういう賞はあるのですかね。 次女のエスター(ジュディ・ガーランド)が高校生ぐらい、四女のトゥーティ(マーガレット・オブライエン)が小学校に上がる前の少女という設定ですが、二人の明るさがさく裂するホーム・ドラマでした。 見終えて気づいたのですが、1944年の映画なのですね。太平洋戦争の最中の作品ですが、「余裕シャクシャクのアメリカ」を感じました。日本では1951年に公開されたようですが、その時、この作品を見た日本人がどう感じたのか、ちょっと興味を惹かれます。 ついでにいえば、この作品はジュディ・ガーランドとビンセント・ミネリを結び付け、あの、ライザ・ミネリ誕生の出発点というか、お膳立てというかの映画らしいですね。この映画で出会った監督と女優が結婚しなければ、ライザ・ミネリは生まれなかったわけですから、それはそれですごい映画ですね。 まあ、何はともあれマーガレット・オブライエン(トゥーティ・スミス 四女)に拍手!でした。それに尽きます! 「愛しのミュージカル映画たち」全6作完走しました。はじめは「お勉強」のつもりで見始めたのですが、ほとんどハズレなしの楽しさで、「もっと!もっと!」という気分で、楽しみの世界が広がりました。歌とかよく分からないのですが、ちょっと古いミュージカルの世界から最近の作品まで、今や興味津々です。こういう企画は、ホント、ありがたいですね。監督 ビンセント・ミネリ製作 アーサー・フリード原作 サリー・ベンソン脚本 アービング・ブレッチャー フレッド・F・フィンクルホフ撮影 ジョージ・J・フォルシー音楽 ジョージ・ストールキャストルシル・ブレマー(ローズ・スミス 長女)ジュディ・ガーランド(エスター・スミス 次女)ジョーン・キャロル(アグネス・スミス 三女)マーガレット・オブライエン(トゥーティ・スミス 四女)ヘンリー・H・ダニエルズ・ジュニア(スミス・ジュニア 長男 通称ロン)メアリー・アスター(アンナ・スミス 母)レオン・エイムズ(アロンゾ・スミス 父)ハリー・ダヴェンポート(祖父)マージョリー・メイン(ケイティ メイド)トム・ドレイク(ジョン・トゥルーイット 隣家の青年)ジューン・ロックハート(ルシル・バラッド ロンの恋人)ヒュー・マーロウ(ダーリー大佐)チル・ウィルス(ミスター・ニーリー氷売りの男)1944年・113分・G・アメリカ原題「Meet Me in St. Louis」配給:東京テアトル日本初公開 1951年3月6日2022・03・10-no33・シネ・リーブル神戸no143