週刊 マンガ便 やまだ紫「ねこのふしぎ話)」(興陽館)
やまだ紫「ねこのふしぎ話)」(興陽館)「やまだ紫って、亡くなってたん?」「そうよ。だいぶ前のことよ。」「これは、でも、最近、出てんやね。あんたが買うたん?」「うん、だいぶん前やね。お嬢さんが、出さはったんちゃうかな。遺稿集かな。そんな感じ。」 やまだ紫というマンガ家について、わが家でシマクマ君があれこれ言うのは気が引けます。チッチキ夫人と、ひょっとしたら、ピーチ姫のテリトリーで、まあ、お裾分けのようにして読んできました。 「性悪猫」(ちくま文庫)とか「しんきらり」(ちくま文庫)とか、あっちの棚にあったはずですが見当たりません。まあ、そういうものです。 今、目の前にあるのは「ねこのふしぎ話」という単行本ですが、興陽館という出版社の名前は聞いたことがありません。巻末に載せられているやまだゆうという人の「猫も人もふえたりへったり」という「あとがき」(?)のなかに、2009年に亡くなったやまだ紫の作品集が、なぜ、2021年に出版されるのかという経緯が書かれていますから、ぜひ、本書を手に取ってお確かめください。収録作品は「こうして猫がへったりふえたり」が11話、他には「鈍たちとやま猫」、「子供の制服」、「猫の不思議話」、「招く猫」といった短編作品で、90年代から2000年代の初めころに「ガロ」に載せられていた作品らしいですが、単行本になったのは初めての作品群らしいですね。 やまだ紫が愛し、彼女を愛した、白取千夏雄という「ガロ」の担当編集者であった方が保存されていた原稿の書籍化のようです。ちなみに白取千夏雄さんもすでにお亡くなりのようです。 いつものように猫と娘たちとの暮らしの日々が淡々と描かれているマンガ集です。ファンの方はとっくにご存じでしょうが、ご存じでない方が気付かれればいいなという案内でした。