ストの記憶・学生編《前編》
公共機関のストに比べたら一般市民へのダメージが少ないので日本ではあまり話題にはならなかったかもしれないけど、今回は学生も同時にストを起こしていました。時には公共機関のデモや、電気会社だか電話会社だかのデモとも合流していたらしい。 そういえば私、フランスで5年間も学生していたのに「学生スト」に関わった事がありません。なんでかというと1つ目の理由は、「『フランスにおける学生の立場』は、自分には関係ない」と思っていたから。私はあくまで留学生でそのうち日本に帰るものだと思っていたし、勉強が大変でストを手伝うだけの余裕もなかったからね・・・。 それだけの理由で不参加だなんて「薄情」と言われそうだけど、ただの「お祭り気分」で参加している学生もチラホラ混じっているデモ風景をTVで見るとイライラしてしまう私は、どうも自分から学生ストについて深く考えようとは思えなかったのだ。 第一、私の身近にはストに積極的に参加している人がほとんど居なかった。2003年初夏あたりにストがあった頃、うちに遊びにきたフランス人の女の子が「昨日デモに参加したの」なんて言っていたけど、まるで「日本食レストランに行ったの」とか「図書館で○○に会ったの」みたいな世間話レベルのノリだったし。 私が学生ストのある一面を垣間見たのは2005年だけ。 その時ドクトラ《Doctorat=その年から「博士課程の1年目」に格下げ(?)になった学年》の1年目だった私達は毎週2時間、ゲスト講師のお話を聞くのが義務になっていた。大学校舎の入り口が机のバリケードでブロックされてしまって以来学部生の授業は行われていないみたいだったけど、私達の講義はもともと、校舎から数十メートル離れた別の建物で行われていたので、スト中でも全てがいつも通りに進んでいた。ゲスト講師の中には遠方から来ている方達も居たので、彼らとの連絡も担当していた司会役の教授はさぞ命拾いした思いだったろう。 講義の後いつも通り駅に向かって一緒に歩いていると、ソフィーが言う。「昨日さ、デモに参加したんだ。だってこの間スタージュ先(=研修先)を探していたら、メチャ安い賃金を提案されちゃってさ・・・(注:彼女のおかしな具合にくだけた仏語を私の脳内で日本語に訳すと、一昔前の海外ドラマの吹き替え風のこんなセリフになってしまう。ごめん、ソフィー・・・。)」 相槌を打ちながらも、その話を漠然と聞くだけの私。(またもや)ごめん、ソフィー!話し甲斐のない聞き手で! でも彼女も外国人の私には何も期待していないのか、それともデモに参加してはみたものの実はそう熱心でもないからか、いかにその「提案された賃金」が安かったかをぼやくだけで、さっさとその話を終えてしまった。かと思うと今度は、大学校舎に寄っていきたいと言う。 私にしたら、「入り口がブロックされている校舎になんて一体どうやって入るの?どうせ中には誰も居ないんじゃないの?危険だったりするんじゃないの?」というのが本音だったけど、ソフィーは私の反応も気にとめず「友達と中で待ち合わせしてるから。みにかーはどうする?」と言って、校庭に向かっていく。 ・・・・・よしっ!私も好奇心半分で、彼女の後を追う事にしたのでした。《続きます。》 (上の写真は、ガイドブックでは「学生街」とも称されているサン・ミッシェルの夜。私はサン・ミッシェルはかなりの観光客街だと思うけど・・・?まぁソルボンヌ本校や、大手古本チェーン、数々の独立系映画館があるからかなぁ。)