『おとし穴』 (勅使河原宏、1962年)
先日の『他人の顔』に続いて阿部公房・勅使河原宏コンビの『おとし穴』を鑑賞。期待しすぎたせいか実は感激の薄かった『他人の顔』の後でこの2人の映画には1番有名な『砂の女』を超えられるものは無いのかな、なんて思っていたけど見事に裏切られた。『おとし穴』・・・推理劇の要素を含む割には最後の最後まで事件の動機ははっきりしない。だけど観ている過程であちこちでほぐれていた糸がそれなりに繋がってくるのが心地よい。そして、今までに観た三作の中では台詞や独白が少ないせいか最も分かりやすい感じもした。いや・・・理解が追いついていない部分は絶対にあるのだけど(何しろ私とディノの解釈が珍しくズレていたぐらいだし)、そして実際にはまだまだ見落としている部分が多くて消化不良なのかもしれないけど、初見で自分なりに味わったものだけででも気持ちいいほど満足できる映画なのだ。いかなる消化能力の人でも必ずしら何かを得られる、滋養に溢れた作品という事か??そして、白黒の画面のなんて美しいこと・・・炭鉱や寂れた町が舞台のこの作品には美しい物なんてほとんど写っていないのに。カメラの勝利か。ノックアウトされた割に表現できないのでこれ以上書かずにおくけど他の2作ほど観念的なものに振り回されたくなくて、でも何かに圧倒されたい人にぴったりの作品です。ランキングに参加しています。投票(をクリック)していただけると、嬉しいです。上の写真はサン・ミッシェルにて。