『Tokyo !』 (ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ボン・ジュノ、2007年)
猛烈な頭痛に襲われていたある日狙いすぎの題名と企画だな、と半ば呆れながら『Tokyo!』を観にいった。フランスでは10月15日公開だけど日本では8月に上映されたみたいなので今回はネタバレ有りで書いてみます。オムニバス3作のうち、トップバッターはミシェル・ゴンドリーの『インテリア・デザイン』。売れない映画監督(加瀬亮)とその恋人(藤谷文子)が東京に住む元同級生の家に居候しだすところから始まるこの作品、カップルの日常を淡々と映し出すので一見地味だけど実はかなり楽しめた。特に二人がする(女)「私達って会話してないよね」(男)「そんなことないだろ、してるだろ」といった感じのやりとりには笑ってしまった。私とディノもそういう言葉を交わす事があるから・・・。2人ともすごいおしゃべりだから会話数は多いんだけどね・・(^^;この会話の男女を逆に置き換える事ができるのかどうか想像してみようとしたけど、私にはどうも不可能らしい。こんなクレームをつけるのは女の特性なんだろうか??終わりの方になってかなり急(&ムリ)な展開があったけど主人公の女が何ともけなげなヤツでそれまでに色々な感情を一緒に味わってきたせいか、口うるさい私でも特に不満を感じる事なく観終われ期待していなかった分、満足だった。お次はカラックスの『メルド』。「メルド(=クソ)」と名乗る赤髭の怪人(ドゥニ・ラヴァン)が手榴弾などで東京の街を襲撃し、逮捕されてから裁判を受けるが・・・というあらすじのこの作品。・・・私はこれ、ダメです。上映中に頭痛が最高潮に達したので、もしも両脇に数人の観客がいなかったなら退室して帰っていただろう。この作品を観ながら私が「この映画も悪くないのかな」と思ったのは、次の三点だけ。1.作品冒頭でメルドが銀座らしき大通りで通行人に嫌がらせをしながら疾走するところ。なにかのコントみたいで笑えた。2.メルドが日本の社会現象になった、とニュースキャスターが伝えるシーン。VTRの中ではメルドへの刑をめぐってデモ行進をする人々やなぜかメルドを崇める人々の作った新興宗教の集いなどが写り「日本もそこまでおかしくないんじゃない?」とイラッとしたけれど、日本製のメルドのフィギュアも紹介されていたのには少し笑えた。3.最後の最後で思いっきり肩透かしを喰らいもうガッカリ感120%になった直後、「今度はメルドがアメリカに現れる」という知らせとともに「Merde in USA」という、もうどうでもいい、しかもダジャレなんだかなんだか分からない文字が画面いっぱいに浮かぶところ。落胆した直後だったので、なぜかこれだけでも笑えた。・・・・こう考えると、上記の部分だけ編集して(あらすじが分かる様に)逮捕と裁判のシーンを各1分ずつ追加して、トータルで6分間ぐらいの短編にしてくれれば楽しめたのかもしれない。個人的感想は、以上です。そして最後はボン・ジュノの『シャイキング東京』。「ひきこもり」というとネガティブなイメージしかないけれど、凄まじいまでに整理整頓された一軒家に一人で住みテレビを観ずに本ばかり読んでいる、どこか詩的なところすらある主人公(香川照之)の暮らしぶりに興味を抱かされたまま、ストーリーを追っていく事ができた。ピザ配達の女の子(蒼井優)にまた会いたくて、遂に家を飛び出すひきこもりの男。彼が走る東京が俯瞰で映し出されると、私達は実は誰も外を歩いていない事に気づく・・・。この作品の山場で私達は、恋によって自分の殻を破る男、という前向きな展開にわくわくしつつも、それと同時に実は皆がひきこもりになっているというネガティブな設定を知らされる訳だ。これをどう捉えていいのか分からないけど彼が一人で突っ走る夏の日差しで明るい街は見ていて気持ちがいい。シュールで不思議なところも残るけど、終わってしまえばとにかく可愛い恋物語。『メルド』で帰ってしまわなくて良かった・・・とつくづく感じた、最後に持ってくるのも納得の作品だった。結局、気乗りしないまま観始めたのに『インテリア・デザイン』と『シェイキング東京』鑑賞中は退屈する暇すらなかった。誰がどう考えても毛色の違う『メルド』は真ん中に持ってくるしかなかったし、3作品の順番がパーフェクトだったのもとても良かったと思う。ランキングに参加しています。投票(をクリック)していただけると、嬉しいです。上の写真は、珍しく早起きした朝に撮りました。結構前だけど・・。