夜空をきみにあげる。おわり。
「あの子を誘うのにはきみの許可が必要なの?」京介さんがつまらなそうな顔をしています。「おかしいな~とは前々から思っていたんだけど。それはフェアじゃないでしょう?」先に手を出したくせに今更フェアかどうか確かめるなんて、大人の言うことじゃないです。「博斗。俺はあの子が好きだよ。」「あの子じゃなくて。真夕でしょう。」背丈は同じくらいです。でも年は京介さんのほうが上。「真夕を呼んでよ。」「呼びません。」「へえ?」「このバイト、俺も真夕も辞めます。京介さんはいいひとだけど、こうなった以上もう関わりたくないんです。そのほうがお互いのためです。」淡々と話す博斗は、大人びて見えました。「なんか・・俺のほうが子供みたい。」ふううと息を吐くと京介さんは手を振りました。「俺は遊びのつもりじゃ無かった。あの子を育ててみたいとさえ思った。愛情かけてるつもりだったよ。でも・・・ここにいるときはいつも博斗が邪魔してくれてたな。」「邪魔?」「いつも傍にいた。手を出さないけど傍にいた。・・本当にむかつく位置にいた。」くくっと笑うと。「あのティーカップは真夕が使ってるんだろう?・・あの子に似合いそうな色を選んでおいてよかったよ。」「・・・え?」「おつかれさん。」京介さんは携帯を片手に事務所を出て行きました。博斗は、その後姿に一礼して。フロアーに戻りました。「博斗は星がすきなんだろう?昨日真夕が言ってたぞ!なな。おしえてよ。天の川ってどこにあるんだ。」おさかな先輩が駆け寄ってきました。天の川を見つけて、ロマンチックに願い事をする気でしょうか。「・・東の空の白く輝く星と。オレンジ色の星2つを繋げた中に・・ありますが・・。」「そーんな言い方じゃわからないよ!こう・・目印とかないのか?」「空は・・みんな輝く星でいっぱいですけど。よく見ると色がちがうんですよ。俺、眼鏡していても見えますけどね。」「見慣れないものは不安だなあ。それに慣れていけば良さもわかるんだろうな。」先輩はメモに<東の空・・>と書き始めました。「俺も深海魚を調べてみたら面白かったですよ。先輩がはまるのも少しわかります。」博斗はにこっと笑いました。「おまえ・・なんか顔が変わってない?」「は?」「こんなに落ち着いた顔してたかな?と言うか・・あまり博斗の顔見たこと無いかも。」まじまじと見られて、ひきそうです。「先輩。仕事あがりに空をみたら丁度いいですよ。星がよく見えますよ。」慌ててさっさと離れます。遠くの棚から真夕がこちらに来るのが見えました。すこし離れていただけでも今日は不安でした。「博斗。靴を返して来たよ。」真夕が傍に来て微笑みました。「携帯も・・・・番号もメアドも削除した。」げ。聞きたくも無い事実を聞いた気がします。「ちゃんといえたし。断れたし。だから信じてね?」瞳が潤んでいます。真夕なりに思うところがあったのでしょう、震えそうな唇が見ていられません。「・・帰ろう。そろそろ星が見えるよ。」「ケーキ。」「ああ。はいはい。・・・買って帰ろうね。」「おんぶ。」「また歩けないの?」博斗の迷惑そうな声も真夕は嬉しいみたい。今日も手を繋いで、帰りましょう。夜道は暗いけれど。空に輝くお星様がふたりを守ってくれますよ。 おしまい。ありがとうございました!!!