「いのちの風」
先日、「いのちの風」というクラシックコンサートに誘われて軽井沢へ行ってきました。そのチケットを下さったのは、中二の頃にお世話になった東京の大田区にある教会のおばさんで、そのおばさんのことを私は第三の母だと思っています。私にとって、抑圧と押し付けの象徴であると言ってもいいキリスト教ですが、もちろん、そうでない部分もあって、というか表裏一体なのかも知れませんが、それを「キリスト教の愛」と言うのだと個人的に思っています。その「キリスト教の愛」を象徴するのが、そのおばさんです。そう言うと、おばさんが抑圧と押し付けの象徴であるかのように受け取られるかも知れませんが、そうではなく、おばさんは「母の愛」の象徴です。そうなると、母の愛が抑圧と押し付けの象徴のように受け取られるかも知れませんが、受け取り方によってはそういう部分もあるのではないかと思います。そして、その抑圧と押し付けの象徴というか、そのものである実の母と一緒に、フルート奏者の紫園香さんという方のコンサートに行きました。ゲストには詩画作家の星野富弘さんが来られていました。クラッシックは、オーディオ機器の音確認のために聞くこともありますが、正直、クラッシックの魅力を理解できないまま年をとってしまいました。今回のコンサートも、母に頼まれてしょうがなく、という気持ちもありましたが、結果的にはなかなか楽しかったです。50人ほどのミニコンサートで、うまいコーヒーも出て、堅苦しい感じではなかったからかも知れません。あるいは、ゲストに星野富弘さんが来られていて、星野富弘さんの印象が、当初思っていたのと違ったからかも知れません。コンサートで演奏された曲は、フォーレ「祈りながら」、カタロニア民謡「鳥の歌」、ドップラー「ハンガリアン田園幻想曲」、「You raise me up」などでした。最後に演奏した映画『ミッション』の主題歌にもなった「ガブリエルのオーボエ」が良かったです。演奏の合間に、いのちのことば社社長夫妻が星野富弘さんの詩を朗読し、星野富弘さん本人のコメントが入りました。星野富弘さんの詩画集は、子供の頃に読んだことがありましたが、有名になってから拝見したことはありませんでした。ご存じない方のために説明すると、星野富弘さんは24歳の頃に頸髄を損傷し、首から下の自由を失ったにも関わらず、口に筆をくわえて、詩と絵を描いている方です。昨年だったか群馬テレビに出ているのを拝見し、なんだかずいぶん偉い人になってしまったんだな、と思った記憶があります。しかし、実際に本人の言葉を直接聞いた印象は、かかあ天下の群馬の田舎によくいる、腰の低い、気さくなおじさんという感じでした。毎週、うどんを食べるのと賛美歌を歌うのを楽しみに、教会へ通っているそうです。私もうどんは好きだし、賛美歌を歌うのは嫌いではないので、共感できました。星野富弘さんは、たしかクリスチャンだったと思いますが、そのことを前面に押し出さない感じに好感を持ちました。無理やり人に対して伝道をしなくても、その生き方を見て、人がキリスト教に関心を持ってくれればいいと考えているのかも知れません。【楽天ブックスならいつでも送料無料】愛、深き淵より。新版 [ 星野富弘 ]価格:1,512円(税込、送料込)紫園香さんは、各所で活躍中のクラッシック演奏家ですが、パンフレットによると、若いころ、自分の愛する能力の欠如に愕然とし、父親の会社の倒産で経済的基盤を失ったことも合わさってクリスチャンになったそうです。住み慣れた家を出る時、フルートと圧力釜を持って出たという話が、さすがお嬢様だと思うのですが、その話から非常に実利的な人という印象も持ちました。音楽家にとって楽器はめしの種だし、圧力釜は熱効率が良く、結果的には経済的に料理ができます。50代ということですが、非常に魅力的な女性でした。星野富弘さんも、紫園香さんも、人生の困難を自分の努力で乗り切ってきたという自信に満ちあふれているように見えるのですが、最後の最後、人間の力ではどうにもならない部分をどうけじめつけるかという点が共通しているようで、今回のコンサートの題名、「いのちの風」という名前は、それを示しているのだと勝手に思いました。私は芸術的なものを全く理解できない人間ですが、星野富弘さんと紫園香さんの話の中に出てきた、風を表現する言葉、あるいは音を表現する言葉はいいなと思いました。夏の軽井沢の町の中は人で溢れているのですが、それ以上に緑が濃く、確かに、空気も緑にしてしまうような風景でした。【楽天ブックスならいつでも送料無料】風の旅 [ 星野富弘 ]価格:1,512円(税込、送料込)星野富弘さんの詩で思い出すのは、石関さんです。岩渕まことさんなど、有名な日本のゴスペル歌手が星野富弘さんの詩に曲をつけて歌っていますが、そんな有名なクリスチャンだけでなく、無名な数多くの4畳半ゴスペルシンガーが、星野富弘さんの詩に曲をつけて歌っていることと思います。紫園香さんが星野富弘さんを知るきっかけになった「ぺんぺん草」という詩は、私の場合、石関さんの歌声として記憶に残っています。