ギックリ腰
生まれて初めてギックリ腰になった。周囲の人から体験談は聞いたことはあったものの、その度に私は、大げさだなあと思った。息をしただけで痛いとか、立ち上がれないとか、我慢が足りないんじゃないかと思った。また、ギックリ腰というのは自分の肉体を感覚的に把握できていない人がなるものだと思っていた。つまり、自分の肉体をコントロールする術を心得ていないから、無理をしてそういうことになるのであって、普段の所作に注意が足りないからだと思っていたのだ。しかし、自分がなってみて初めて、これはいきなりなるものであって、しかも大げさどころの話ではなく、相当辛いということを知った。正直な話、こんな痛みが続くなら、死んだ方がマシかと思った。何より、眠れないのが辛かった。仰向けでも、うつ伏せでも、横向きでも、じっとしているだけで痛いのだ。そうかといって、寝返りを打とうとすれば、更に強烈な痛みが襲ってくる。また、日々の生活の中で、常に自分の身体全体に注意を払うことなど、できないということを思い知った。寝ている時でさえ人間は無意識のうちに複雑な動きをしていて、脳が勝手に上手く身体をコントロールしているからこそ、無事に寝返りが打てるのであり、自分の意識などでコントロールしているわけではないのだった。ギックリ腰になってみて、毎朝気持ち良く起きられること自体が奇跡なのではなかとさえ思えた。感想はさておき、私はどんな理由でギックリ腰になったのだろうか。その元兇は先週、BOSEのスピーカー、101MMと301AVMを吊るす木材をホームセンターで買って、工作室で加工した時だ。久し振りにのこぎりで合板を4枚引いた。たった4枚だけだが、20年前に肩鎖関節脱臼(5型)して手術しなかった右鎖骨が、いつもより上に持ち上がり、肩甲骨に引っかかって違和感が出た。その二日後、プールに行って500mほど泳いだところ、翌日、肩から背中の上部が痛くなった。そこで、その日は念入りに、前屈運動の多いラジオ体操第2を独自に改良したオリジナルストレッチ体操と、身体をでんでん太鼓のように捻るスワイショウを300回ほど行った。どうも、それが良くなかったようだ。背骨上部の痛みは寝違えたような痛さだったので、一晩眠れば良くなると思っていたら、翌日は腰が痛くなった。それでも昼間のうちは、その痛さはそれほど強いものではなかった。座る時に少し痛む程度だった。しかし、その日の夜、風呂に入った時には痛みが増していた。そのまま何の対策もせず、いつもの様に寝室に入り、仰向けの体勢で腰の8の字旋回運動と股の開閉ストレッチを行ったところ、激しい痛みが腰に襲って来た。今まで体験したことのないような痛みで、そのまま横になっていることさえできなかった。かといって、起き上がることもできないし、寝返りも打てない。気を抜くと腰が砕け、強烈な痛みが走る。ウトウトし始めると腰の力が抜けて、足の重みで腰が捻れて強い痛みが発生する。そこで、どうにかして痛みを発生させずに寝返りが打てないものかと工夫してみた。仰向けから右横に寝返りを打つ場合、まず膝を少し立て、腕を頭の上に伸ばし、腰を意識して力を入れた状態で、頭を支点にして腕を回転方向に引かれるようなイメージで右側に回転すると、腰に負担がかからないようだった。しかし、そのやり方に従っても、僅かでも腰から意識が抜けると痛みが走る。回転時に足と頭との間に捻れが出るともう駄目だ。そうやって無事に寝返りが打てても、痛みが収まるのはしばらくの間だけで、比較的楽な仰向けの体勢でも、同じ体勢を続けていると腰に鈍い痛みが出てくる。なので、今度は右横の状態から仰向け、またはうつ伏せに体勢を変えなければならない。右横の状態から仰向けに向きを変える場合、膝を立てた状態で行うと強烈な痛みが走る。足の自重がもろに腰にかかってしまい、腰が捻れるようだ。その足の重みを支えられない。この場合、膝を伸ばし、身体が一直線になる体勢で左に回転すると痛みが走る度合いは減った。その時、左側の腰を先に落として行くようにすると痛みが少ないようだ。仰向けから右に回転する場合と戻す場合では膝の曲げは逆になる。つまり、膝を閉じる方向に身体を回転させる場合は大臀筋の補助で膝を立てた状態でも身体を回転させられるが、膝を開く方向に身体を回転させる場合は、足の付け根にもろに力がかかって支えられないようだった。その部分の痛みは恐らく、寝床での無理なストレッチに影響されたらしい。うつ伏せの状態でもしばらくは痛みが収まることはあったが、うつ伏せは腰に負担がかかるのか、あるいは内蔵の圧迫感のせいなのか、しばらく続けると不快になってくる。いずれにしても、同じ体勢を続けていると腰だけでなく、両腕や右足のつま先がしびれてくるので、こまめに体勢を変える必要があった。このような腰痛は初めてだった。もし、医療現場にロボットが使われるようになれば、介護者は楽になるだろうが、このような患者の痛みを敏感に感じ取って、患者の膝を少し曲げてやったり、同時に腕を伸ばしてやりながら、頭を中心に寝返りをうたせるような真似がロボットにできるだろうかと心配になった。やはり、人間相当の人工知能を搭載して意思疎通ができるロボットでないと、形だけの寝返りマシンになってしまいそうで怖い。それではまるで虐待マシンだ。28日夜から29日の朝は猛烈に痛く、午前1時半から4時半まで寝返り研究で終わった。寝ていても起きていても痛いのだが、起きていた方が、それも立っているか椅子に腰掛けていたほうが痛みは小さかった。それも、時間が経つにつれて変化した。一度寝転んでしまうと、もう2度と起きられないのではなかという気がした。仰向け状態からそのまま身体を起こすことは不可能だった。横向きからも駄目だった。起き上がる場合は、まず、うつ伏せに持って行ってから、腰に意識を集中させ、腕の力を使って徐々に上半身を起こして行く必要があった。そのまま起きようとしても、腰の筋肉の一部がスコーンと抜けてしまったかのように、力が入らないのだ。正確に言えば、意識を腰に集中して行けば入ることは入るのだが、いつものように素早く腰を固定することができない。まさに、腰が抜けてしまったという言葉がピッタリの状況だった。そして、今回の腰痛で一番不安に感じたのはトイレだったのだが、その件に関してはまた機会があったら書くことにする。それはそうと、ここ数日の間で、私はいくらか賢くなったような気がする。身体を自由に動かせないとはこういうことなのかと、何かに教えられたような気がした。つまり、自殺の方が楽だから死ぬ、という理屈が分かったような気がしたのだ。これまで映画の感想で好き勝手なことを色々書いてきたが、いくら映画を観て共感しても、本人でなければその心情は理解できないということをギックリ腰になって実感した。ギックリ腰の場合は1日経つといくらか良くなっていることが分かるので、じゃあ死にましょうというところまでは行かなかったが、この痛みが永遠に続くとしたら、私は生き続ける自信がない。病気や怪我でこの状態が永遠に続くとしたら、私も『世界一キライなあなたに』の主人公のように、自殺ほう助をお願いするかもしれない。【中古】迅速発送+送料無料+動作保証!! BOSE ボーズ 101MM ミュージックモニタースピーカーシステム【@YA管理1-53-718568 / 722062】【エントリーでポイント+10倍】 スピーカー天吊り金具 壁掛け金具 BOSE対応ブラケットペア SWB-101