遊びのブログ

[本や映画の感想] カテゴリの記事

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  『里奈の物語』

  ある女性起業家の成功体験が描かれているようだった。また、天職を見つけるヒントについても書かれた本だった。そういった意味で、中高生の課題図書にしてもらいたい本だと思った。私が感動したのは、主人公の里奈という女性が、自分のために流す涙より、自分より恵まれていない人に対して流す涙と怒りが大きい人のように思えたからだった。会ったことはないが、それはキリストを連想させた。年齢を重ねても、このような人格者は稀だと思う。なぜ、里奈のように本当の母親の愛情を知らない子供がこのように育ったのか最初は疑問に思ったが、最後まで読んで、なんとなく分かったような気がした。子供は、実際に育ててくれた人たちを見て育つということだろう。たとえ血が繋がっていなくても。前半では、幼い頃から里奈の面倒を見てくれる人はおらず、自分で自分を育てたように見えなくもないが、それも、叔母の幸恵の愛情を受けていたからこそ出来たことで、やはり里奈は、幼いながらも幸恵を見習って育ったということなのだろう。そういった意味では、本当の母親の愛情を知らないとはいえ、里奈の境遇は恵まれていたと思う。この本には、主人公以外にも親ガチャでハズレを引いた子どもたちが大勢出てきて、10代半ばの少女たちが自力で生きていく方法を模索している様子が描かれている。世間では少子化対策が議論されているようだが、まだ生まれていない子どものことより、すでに生まれている子供をどう育てるかのほうが重要なような気がした。そして、里奈と幸恵のように血の繋がりがなくても、他人の子供に深い愛情を注げるような人間に育てた方が、後々、この国に住む人たちは幸せになるような気がした。そういった意味で、子育ての方法についても書かれた本のようだった。一見、この本に描かれている世界は不幸の掃き溜めのように見えるのだが、実際は、幸恵を見守るスナックのママ志緒里から幸恵、そして里奈へと受け継がれるものによって彼らの芯はブレることがなく、周囲を幸福に導いているように見えた。そこが魅力的だった。里奈の物語 [ 鈴木 大介 ]価格：2,090円（税込、送料無料) (2023/5/4時点)楽天で購入

  2023.05.04

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  『キル・ビル』

  【中古】キル・ビル　Vol．1 / クエンティン・タランティーノ【監督】楽天で購入以前見たはずと思ったが、初めて見たような驚きがあった。その理由は恐らく、パツキン女優が関係していると思われる。主人公のザ・フライドを演じたユマ・サーマンである。『パツキン一筋50年』で秋本鉄次氏が何度も取り上げていた通り、ユマ・サーマンは長身の金髪美女で、おまけに垂れ気味の優しそうな目をしているから、日本人受けが良さそうな顔だ。また、私はユマ・サーマンとヴィヴィカ・A・フォックスが戦っているシーンを見て、黒人女性の尻に惹かれた。オーレン石井を演じたルーシー・リューや、GoGo夕張を演じた栗山千明さんはアジア系美人だから、当然、親しみのある顔のはずだが、この映画では般若のようであり、その三白眼を見ただけで命の危険さえ感じてしまった。実際、彼女たちを軽く見た男たちは、残忍な方法で殺されていた。そんな風に国際色豊かな美人が集まる映画において、私は金髪美人と黒人女性に惹かれた。ストーリーなどそっちのけだった。それ以外で印象に残ったのは、この映画に出てくる中華風な日本の街の風景だ。時代も不明瞭で、飛行機の機内に金髪女性が日本刀を持ち込んでいても誰も不審に思わなかったり、カワサキのバイクに刀を差して公道を走っていたり、日本人のヤクザが侍みたいに刀を担いでいたりなど、時代も場所も特定できない不思議な雰囲気の街だった。オーレン石井が部下を連れて入った料亭は、タイのゴー・ゴー・バーのような感じで、バンドはどこの国のだかかわかない曲を奏でていた。その他、この映画のテーマソングなのかどうか知らないが、『Bang Bang』が良かった。

  2021.08.29

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  『友罪』

  友罪 [ 生田斗真 ]楽天で購入この映画は、犯罪加害者の苦悩を描いているようだった。観終わった後、加害者に共感するとまではいかないが、その更生に水を差すような立場には立ちたくないと思った。そういった点で、読者の関心を自分たちの利益に誘導するジャーナリストを気取ったマスコミの連中が憎らしく思える映画だった。かといって、死刑廃止論に全面的に賛成する気持ちにはなれない。一つ一つ、個別の事例に合わせた対応が必要だと感じた。その他に印象に残ったのは、主人公を演じた瑛太さんである。例えば、『俺達急行A列車で行こう』で瑛太さんが演じた役は、この映画と比べると普通の人で、あまり印象に残らず、というか、オタク演技がわざとらしいように感じて、共感できる部分が少なかったような気がする。しかし、この映画で瑛太さんが演じた鈴木という男は、それよりかなり変というか、犯罪者だから、普通なら共感できるとは思えないのだが、その境遇に自然に共感してしまうような演技をしていたように感じた。明らかに変な人間を演じるのは、普通の人間を演じるよりやり易いのかどうかわからないが、こういう変わった人間を演じるのが瑛太さんは上手いと感じた。そういった点で、生田斗真さんもまた良かった。この二人のおかげで、ストーリーに没入した。　

  2021.08.29

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  『われらが背きし者』

  われらが背きし者 スペシャル・プライス【Blu-ray】 [ ユアン・マクレガー ]楽天で購入ステラン・スカルスガルド演じるロシアンマフィアの資金洗浄係の男は、確かに男気があって熊みたいに堂々としていて頼りがいがあり、愛嬌もあって憎めない男だが、彼がやってきたことを思うと、今更亡命なんて、よく言えたものだなと思わなくもなかった。まあ彼自身もそのことは自覚しているみたいで、自分自身のことより家族のことを心配してなのだが、それにしても、都合良すぎる。冒頭に書いたような理由で、ユアン・マクレガー演じる大学教授が彼に惚れ込むのもわからなくはないし、彼は女性や子供など、弱い者がイジメられるのだが我慢できないタチなので、マフィアの家族を守ってやりたいと思う気持ちはよくわかった。しかし、映画を見ていると、金持ちの接待に負けて協力した感じが否めない。大学教授もマフィアのボスに倣って男気を示すことで、妻との仲が改善されたように見えたので、その行為は彼自身をも成長させたのだから、命をかけてやりきった甲斐があったといえば、その通りなのだが、なんかしっくりこない感じが残った。

  2021.08.29

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  『大統領の料理人』

  大統領の料理人 [ カトリーヌ・フロ ]楽天で購入この前に見た邦画の『南極料理人』と同じように、一流の料理人が南極の基地で働いている様子を見て、食が人間に与える影響の大きさを感じずにはいられない映画だった。エリゼ宮でミッテラン大統領の食事作りを任されたオルタンスは、もともと片田舎で小さなレストランを営んでいたという。その彼女がなぜ大統領専属シェフを任されることになったのか、それは、大統領が田舎料理を好んでいたということもあるだろうが、彼女の年齢も影響していたのかもしれないと思った。主人公の女性シェフを演じたカトリーヌ・フロの熟女ぶりは、大統領でなくても惹かれるものがある。年を取っても食の好みは急には変わらないわけで、人によっては油っこい食べ物が何よりも好きで、高級食材を使った料理を命を削っても食べたいというのは、人間の遺伝子に刻まれた本能なのかもしれない。それは他の動物を殺してでも自分が生き残りたいという、人間の基本的な欲求が関係しているからこそ、単なる料理といえども、誰もが夢中にならずにはいられないのだろう。人間というのは、他の動物の肉を様々に調理して食べて、人生を楽しんでいるんだなぁと、気づかせてくれる映画だった。それがまた人生を豊かにしてくれるわけで、それはそれぞれの国で培かわれた文化なのだから、他国の人間がとやかく言うことではないのだろう。

  2021.08.29

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  『南極料理人』

  南極料理人【Blu-ray】 [ 堺雅人 ]楽天で購入南極のドームふじ基地というのが、標高3800メートルの高所にあるというのをこの映画を見て初めて知った。この映画は、その南極ドームふじ基地に派遣された海上保安庁の料理人とメンバー7人の南極での日常生活を描いたもので、海上保安庁の料理人が作る飯は絶品だということが描かれた映画だった。（ちなみに、25年ほど前に海上自衛隊の揚陸艦で硫黄島に行った時に食べた海上自衛隊の料理人が作る飯も絶品だったと記憶している。陸自では糧食班は各班1名を除いて料理人は専属ではなく、一般隊員が3ヶ月交代でやっていたので、海自ほど凝った飯は出なかった。現在はどうかわからないが。）なにしろ、日本から14000キロも離れた極寒の地にあるふじ基地では、1年半もの長期に渡って、男8人だけで過ごさなければならないわけだから、相当にストレスも貯まるようで、娯楽の中で最大の楽しみが「飯」みたいな感じになっている様子がよくわかった。きたろうさんが演じた観測隊の隊長は、大のラーメン好きで、自分で夜食にラーメンを食い過ぎて、予定より早くラーメンが無くなってしまったことにショックを受け、少しおかしくなりかけていた。他の隊員も何かしら、個性の際立った人たちだった。そんな隊員たちの生活を描写しているシーンが面白かった。実際、退屈な男だけの生活という点では男子校や自衛隊にも共通するところがあるような気がして共感する部分も多かった。例えば、黒田大輔さん演じる通信担当の盆さんは、でかいうんこが出たと他の人に言い触らすのを趣味のようにしていたが、私がいた教育隊の班付きも、でかいうんこ自慢をしていただけでなく、実際にそれを見せようとして、みんなに嫌がられ、嫌がる様子を見てさらに喜んでいた。

  2021.08.29

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  『海の上の君は、いつも笑顔』

  【中古】海の上の君は、いつも笑顔。 [DVD]楽天で購入有名俳優が出ている割に、あっさりとした映画だった。主演の谷村美月さんは部活をサボりがちな女子高生役なのだが、その見た目となんだかキャラがズレているように感じた。すでに顔が大人の女性のように落ち着いているのに、やたらと子供っぽい素振りをする女子高校生役で、なんか違和感があった。しかし、大杉漣さんや津田寛治さんなど、ドラマの常連が出ていて、脇をしっかり固めてそつがない。だからといって、面白いかと言われると、そうでもなかった。面白さではなく、若者たちの成長を真面目な目で見守る映画のようだった。この映画で私が一番かっこいいと思ったのは、政治家になる前の山本太郎さんだった。もっこりした競泳用水着を着てゴムの水泳帽を被って『天才たけしの元気が出るテレビ』に出ていた頃の山本太郎さんは本当に面白かった。その面影が、この映画には残っていた。その点で、先日見た『GO』の山本太郎さんとの間を繋ぐ感じの映画であった。海の上の君は、いつも笑顔【動画配信】

  2021.08.29

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  『極楽家族』

  【中古】NHKアーカイブス ドラマ名作選集 「極楽家族」 [DVD]楽天で購入このドラマは、オレオレ詐欺の先駆けのような話なのかと思ったら、違ったようだ。人情味のある押しかけ代理息子は、本当の息子より良い息子のようだった。しかし、実際は罪滅ぼしでやったことらしかった。国広富之さん演じる若者は、虚無僧姿で全国を放浪している時に腹が減って民家に押し入り、飯を盗み食いしている間におばあさんに見つかり、そのおばあさんの首を無意識に締めてしまったらしい。この若者に同情の余地があるのかどうか、虚無僧姿で長期旅行して食い詰め、おばあさんの首を絞めことがない私にはよくわからない。ただこの若者は、その罪滅ぼしに、全くの赤の他人のおばあさんを、自分の稼ぎで面倒見ようとしていた。そこのところは偉いと思った。なかなか出来ることではない。既に刑務所に入って罪を償ったと思っている本人にしてみれば、なんで今更、昔のことを蒸し返すのかと思うのも無理はない。しかし、乞食同然の若い男に家に押し入られ、首を締められたおばあさんにしてみれば、その恐怖は計り知れないし、その罪滅ぼしに、全く関係ないおばあさんを大事にされても、私しゃ許せいないと思うだろう。いったいどこまで反省したらいいのか、一生反省して生き続けるというのも、若者にとっては辛いことだから、あのおばあさんの代わりに別のおばあさんの面倒を見て、自分で区切りを付けたくなるのもわかる気がした。このドラマには、二十歳くらいの大竹しのぶさんが出ている。中学生のような顔をしていたが、演技は既にベテランだった。

  2021.08.29

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  『キャッチ・ア・ウェーブ』

  キャッチ ア ウェーブ [ 三浦春馬 ]楽天で購入この映画は、竹中直人さん演じるデューク川原の登場シーンが面白かった。浜に転がっているのは人形かと思った。その茶色のシルエットがいつまでも目に焼き付いて離れなかった。この映画でヒロインを演じた加藤ローサさんは、年よりみたいな喋り方をしていた。それに比べて、高樹沙耶さんは熟女的可愛さが際立っていた。その他、なんとなくサーフィンは、大きすぎる海でやるにはちまちましたスポーツのような気がしていたが、映画でプロのサーファーを見ると、想像以上に凄かった。サーフィンを体験することは、自然の怖さを知るのに良いという話は、嘘ではなかったと思った。

  2021.08.29

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  『嘘を愛する女』

  嘘を愛する女 DVD 通常版 [ 長澤まさみ ]楽天で購入この映画では、今まで私が見た映画とは違った長澤まさみさんを見たような気がした。誰でもいつかはそうなる、その辺にいそうなババアを演じていたのである。女優の長澤まさみさんに関して見方が変わったものの、映画自体には共感できず、感動した点は思い浮かばない。仕事にかまけて妻と子供をほったらかしにした医師が、妻子の死をきっかけに生き方を改め、都会に来てキャリアウーマンのヒモになるという話で、そのヒモを高橋一生さんが演じているから、とても誠実さが伝わってきて、事情を忖度して共感すべきなのだろうが、私にはその器がなく、残念ながら無理だった。長澤まさみさんのひもをやりながら、川栄李奈さん演じる喫茶店の店員と出会系で遊んで、みたいな、そのあたりが微妙に共感できたが、普遍性のある共感ではなかった。ただ、灯台の下の空洞に、子供の頃、宝物を隠した件などには共感した。私も保育園に通っていた頃、保育園の縁の下の通気口の隙間とか河川敷の樹のウロとか橋桁の下などに、くだらない宝物を隠していたことがあった。なぜあんなにワクワクしたのか、今思い返しても不思議である。

  2021.08.29

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  『GO』

  GO [ 窪塚洋介 ]楽天で購入窪塚洋介さん演じる主人公の青年クルパーと、新井浩文さんと山田太郎さん演じる朝鮮学校の仲間の遊び方が、狂っていて面白い。警察と追いかけっこするのは、日本人の若者も大好きそうで、今でもやっている若者を時々見かけるが、地下鉄と追いかけっこするという遊びは、聞いたこともないし、ましてや、やっている人を見たことがなかった。道路を走っている車の前にいきなり飛び出すという遊びは、小学生の頃流行ったことがあったが。その他、クルパーのお父さんを演じた山崎努さんのパンチが痛そうだった。クルパーは親父のパンチで何本歯を失ったのだろうか。抜けてしまえば差し歯ではどうにもならないのだが、そんなことなど関係ない感じだった。コリアンジャパニーズ差別を扱った映画なのだが、このような差別は、昭和30年代に生まれた人までだったような気がする。身近にはなかったので、リアリティーは感じなかった。しかし、それを男女間の問題と絡めることで普遍性のある物語になっていたようで、中年が見ても面白い映画だったが、付録の試写会と窪塚洋介さんのインタビューなどを見ていたら、目力が強すぎて、なんだか疲れた。確かに個人は、他人との間に国境線のような壁を作って生きているわけだが、それを取っ払えば上手くいくというわけではないような気がする。

  2021.08.29

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  『百円の恋』

  百円の恋 [ 安藤サクラ ]楽天で購入カタルシスが半端ではない映画だった。主人公の一子は、非常に真面目な女性のようだった。だから、実家の弁当屋の味が落ちてしまったことが許せなかったのかもしれない。そして絶望し、ポテチを食い続ける自堕落な生活に陥ったように見えた。そんな小さなことで人は自堕落な生活に陥らないと思う人もいるかもしれないが、私はそうは思わない。一子が自信を取り戻した時、きっと斎藤亭の味も復活し、前のコンビニ店長が懐かしんでいた、うまか弁に戻るだろうと思うと、感動して涙こぼれた。

  2021.08.23

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  『うつくしいひと』

  うつくしいひと/うつくしいひと サバ? [ 橋本愛 ]楽天で購入この映画の主人公、大学生の透子を演じた橋本愛さんが、このドラマの題名の、うつくしいひとなのか。それは石田えりさんが演じたその母親である鈴子のほうなのか。橋本愛さんは、若い頃の清水美砂さんを縮めたような見た目で、確かにうつくしい。テレビで見る女優さんというのは、実際見ると、その数倍は美人だという噂がある。噂というか以前、「5時に夢中」で言っていた。映画で主役を演じる橋本愛さんクラスになれば、オーラを感じるほどの美人であるに違いない。鈴子を演じた石田えりさんも同様である。だから、この親子二人が、うつくしいひとたちなのだろう。高校時代に、鈴子に恋をしていた中年の紳士は、この二人のうつくしいひとたちに対して、本当に怪しげなことをやっていた。本屋でいきなり外人の詩を引用しても不自然に見えない博学さが顔に現れていなければ、ストーカーとして通報されてしまいそうだった。鈴子の勤め先にいきなり現れて、幽霊のように立ちすくんで木々の間から覗いたり、その娘の透子を母親に似ているからという理由で、車で連れ回してしまうのである。こんなことが、かつての親友だからといって許されるのだろうか。姜尚中さんだからこそ、許されたような気がしなくもなかった。話としては、かつて初恋の女の子に思いを伝えられなかったおじさんが、その時渡すつもりだったべっ甲の櫛を、本人ではなく、その娘に渡すという、なんだか奇妙にも思える話である。確かに、そこに映る熊本の景色は良かった。特に、阿蘇の草原みたいな場所は行ってみたいと思った。しかし、その話の内容は、誰にでも経験がありそうだが実際にやらないようなことをする、変なおじさんの話という感じがしないでもなかった。父親とも親友だったからこそ、許されたのかもしれない。

  2021.08.23

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  『グリーンブック』

  グリーンブック [ ヴィゴ・モーテンセン ]楽天で購入2018年アカデミー賞作品賞含む3部門受賞作品だという。1962年のアメリカは、まだ黒人差別が酷く、南部は特にそうだったらしい。ドクターシャーリーは、全米各地から招待され、大統領にも顔が利く天才ピアニストだったが、黒人のため、南部へ行くと、あてがわれる楽屋は物置で、レストランに入ることも許されない。イタリア系のトニー・リップは、ナイトクラブで用心棒として雇われていたが、客を殴って首になり、ドクターシャーリーの付き人になる。最初は黒人に対して差別的な感情を抱いていたトニーだったが、ドクターシャーリーのピアノの腕と気品ある態度に感銘を受け、南部への2ヶ月のツアーの間、ドクターシャーリーの右腕として働き、差別的な南部の人々からシャーリーを守り、差別と戦っていくうちに、友情が芽生えていく。互いを結びつけたのは、ドクターシャーリーの気品と、トニーの愛妻家ぶりだろうか。この映画が素晴らしいのは、アメリカにおいて当時はマイノリティだった二人が、協力して自分たちの居場所をより良い場所に変えていこうとしているところだ。実際にこういう人たちがいたからこそ、法律も改正され、いくらか住みやすい国になっていったのだろうと思えた。他人のために戦う人間には、確かに感動する。

  2021.08.23

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  『僕らは歩く、ただそれだけ』

  【8月全品P10★要エントリー】【中古】DVD▼僕らは歩く、ただそれだけ▽レンタル落ち楽天で購入安藤サクラさんが演じるカメラマンのみゆきが、いくら故郷の街とはいえ、知り合いとも思えない年寄りや子供など、その辺に歩いている人に、いきなりカメラを向けてシャッターを切っている映像を見て、これはそうとう昔の、のんびりした時代を描いた映画なのかなと思った。今だったら、そして、もしこのカメラマンが男だったらなおのこと、通行人にカメラを向けること自体、何かの法律に触れるのではないかと思わずにはいられなかった。それとも、カメラマンというのは、そういう法律に触れない、何か特権のようなものを持った人たちなのだろうか。なんだか、すごく偉そうに見えた。しかも、この映画に描かれているのは、みゆき自身のことばかりのようである。遠くの場所で起こった戦争や飢餓や災害を伝えるという役割はなく、美しい人を写して他人の気分を良くするというわけでもなく、ただ、自分の知り合いを写して、懐かしんでいるだけのようだった。他人にカメラを向けて写真を撮り、それを誰かに買ってもらうのが商売だとすると、その一枚の単価はどの程度ならこのような生活が成り立つのだろうか。主人公みゆきを見ていると、決して安くないように思える。売れっ子カメラマンのみゆきは、その稼ぎで、そこそこだらしない生活が出来るような雰囲気を漂わせていた。そこでまず、反発のような感情が湧いてしまい、この映画のストーリーに入っていけなかったようだ。『僕らは歩く、ただそれだけ』とか言ったって、ただ歩くだけでも大変なんだよ、と。そういうことが伝えたかったのだろうか。

  2021.08.23

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  『ハナ肇の一発大冒険』

  ハナ肇の一発大冒険 [DVD]楽天で購入最近見た邦画の中では特に面白かった。ハナ肇さん演じる肉屋の主人と倍賞千恵子さん演じる淑女は、歩いて初冬の北アルプスを長野から富山へ抜けており、大冒険自体にリアリティーはないのだが、引き込まれる映画だった。その理由としてまず、肉屋のアルバイト役で出てくる中村晃子さんと、近所の主婦役の久里千春さんが可愛いかったからである。また、若い頃の倍賞千恵子さんも、なんだかクセのあるアイドルみたいな顔をしていて可愛い。ハナ肇さんの奥さん役で出てくる野村昭子さんもまだ若く、おばあさん役で出てくるドラマしか見たことがなかったので新鮮だった。最後に、倍賞美津子さんが出てきたときには、私はどっちかといえば倍賞千恵子さんより倍賞美津子さんと大冒険したいものだと思った。そんなふうに本題の冒険とは関係なく、出てくる女優さんたちに魅了されたのは、懐古趣味もあるだろうが、その中心にいるハナ肇さんに男気があり、かっこ良かったからではないかと思う。太っ腹で気取らない、男からも好かれるような男だった。

  2021.08.23

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  『北斎漫画』

  あの頃映画　松竹DVDコレクション　北斎漫画 [ 緒形拳 ]楽天で購入浮世絵師の葛飾北斎や歌麿、滝沢馬琴、式亭馬琴、十返舎一九などの芸術家が、狭い街に集まって暮らしていた時代が本当にあったのかどうかは知らないが、こんな人間たちが近所にいたら、かなり迷惑だっただろうと思うような話だった。しかし、傍から見ると、型破りで狂っていて、非常に面白い。北斎や馬琴が全く違う職業を本業にしていたとか、北斎親子が他人の家に居候して極貧生活をしていたとか、現代の芸術家のイメージとは全く違った人間に描かれていて、これは事実なのかと最初は疑った。その他の見どころは、田中裕子さんが北斎の娘、お栄を演じていて、初っ端からオッパイ丸出しで、大胆な演技をしていたところ。同じく、若い頃の樋口可南子さんが、北斎の枕絵のモデル、お直を演じているシーンが特に見応えあった。下駄屋の丁稚と交わるシーンや、北斎の絵のモデルになってタコを乗せられて喘ぐシーンが特にエロく、あの貞淑そうな樋口可南子さんと同一人物とはとても思えなかった。私が知らないだけかもしれないが、今の若い女優さんで、ここまでやる人は少ないと思う。映画のラストでお栄が、「人は死ぬときゃあ誰でも、体裁のいいことを言い残すもんだ」と言って泣いていたのが印象的だった。

  2021.08.23

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  『ダイハード・ラストデイ』

  【中古】ダイ・ハード／ラスト・デイ / ジョン・ムーア【監督】楽天で購入『ダイ・ハード』シリーズは、最初のビルと二番目の飛行機のやつしか見たことがなかったが、あれから随分経っているはずなのに、主人公を演じたブルース・ウィリスは、あまり歳をとっていないように見えた。もとからスキンヘッドだからというのもあるだろうが、その肉体も衰えを感じさせない強靭さだった。敵の弾はめったに当たらず、どんな攻撃を受けても死にそうになかった。この映画では、息子まで危ないことが好きな大人になっていた。とにかく、銃を撃ちまくって、カーチェイスして、物を壊し続けてスッキリする映画だった。カーチェイスでは、ベンツの強靭さが印象に残った。装甲車に体当たりしてもほとんどダメージを受けない様子を見て、欲しくなる人もいるのではないか。

  2021.08.23

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  『フルスロットル』

  【8月全品P10★要エントリー】【中古】Blu-ray▼フルスロットル ブルーレイディスク▽レンタル落ち楽天で購入この映画の見どころは、なんといっても主人公リノを演じたダヴィッド・ベルの、アクロバティックなスタントだと思う。その並外れた身体能力に度肝を抜かれた。ダヴィッド・ベルはパルクールの第一人者だという。この映画では、ビルとビルの間を飛び移ったり、壁を駆け上がったり、明らかに足が折れそうな高さから飛び降りたり、通常なら飛び降りるシーンと着地シーンは別撮りされるような、かなりエクストリームなスタントを、本人がやっていたようだ。まあ、こういったことは半世紀も前にジャッキー・チェンがやっていたことではあるが、身長のデカい西洋人がやると、また違った迫力がある。前半の、リノがトレメインの部下たちから逃げる部分だけで、見た甲斐があったと思った。物語としては、今より更に所得格差が広がり、住む場所も明確に分けられたアメリカの街で、都市開発を進めようとする企業と行政が結託し、低所得者の住むマンションを核攻撃するという、マンガみたいな話だった。デトロイト郊外のブリックマンションと呼ばれる低所得者層が住むエリアでは、暴力とドラッグがはびこっていたが、そこに住むリノは暴力は好きでもドラッグは嫌いなようで、ドラッグを一掃しようと孤軍奮闘していた。そのブリックマンションのボス、トレメインとその部下たちは、住民をドラッグ漬けにしたり、法外なみかじめ料を取ったり、悪いことばかりしている様子だったが、顔はなぜか善良そうだった。その見た目通り、後半、真の敵が明確になった時、彼らは実際に善良になっていた。直前まで酷く残虐なことをしていたのだが、トレメインは次期市長になりそうな勢いだった。そのへんがまたマンガチックなのだが、格子自体は現実にありそうな話だった。

  2021.08.23

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  『それでも恋するバルセロナ』

  【バーゲンセール】【中古】DVD▼それでも恋するバルセロナ▽レンタル落ち アカデミー賞楽天で購入激情的な天才肌の芸術家、マリア・エレーナを演じたペネロペ・クルスは、私のイメージではもっと背の大きい人だと思っていたが、スカーレット・ヨハンソンと並ぶと背丈は同じくらいか、むしろ小さいくらいだった。スカーレット・ヨハンソンは、単独で映るとなぜか小さく見える。この映画は、ナレーションがいい。慎重派で堅実な結婚を求めていたヴィッキーも、実際は情熱的な生活を求めていたという、がっかりなようでやっぱりかというラテン的なラストだった。美人が4人出てくる映画だが、この中ではペネロペ・クルスがひときわ美人に見えた。酒場で芸術論を戦わせている様子を見ると、遊んでいるように見えるアントニオも、常に芸術とは何かを考えながら絵を描いていて、作品を向上させるための苦労は絶えないようだ。芸術家というのは遊ぶのが仕事なのかと見始めは思ってしまったが、それも仕事の内で、作品を誰かに高く買ってもらうためには、作品に見合った自分を演出しなければならないのかと、この映画を見て思った。とにかく、一気に見れる楽しい映画だった。

  2021.08.23

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  『ローマでアモーレ』

  ローマでアモーレ Blu-ray/ウディ・アレン[Blu-ray]【返品種別A】楽天で購入『屋根裏部屋のマリアたち』と並んで、最近見た映画の中で特に面白かった。フランス映画もいいが、陽気なイタリア映画も面白い。4つの物語が並行して語られるのだが、どれも平凡で真面目に生きてきた人間が、少し倫理から外れた行動をして、人生を楽しむというもので、それを肯定的に描いているように思えるところが良かった。個人的には、披露宴のために田舎からローマに出てきた新婚カップルのエピソードが面白かった。婚約者が留守の間に間違えてその新婚カップルの部屋に舞い込んできたコールガールを演じたペネロペ・クルスがセクシーだった。婚約者の女性が出かけていたため、部屋にいたコールガールを奥さんだと身内に紹介してしまった夫が、夜の相手までしてしまうところが羨ましくもあり、また、普通なら後々まで問題になりそうなことなのに、妻の方も買い物に出たローマの街で、憧れていた俳優と偶然知り合って誘われて、一晩を共に過ごしてしまったため、お互い深く問い詰めないところが、結婚前の最後の晩くらい、という互いの正直な気持ちを現しているようで、面白かった。純朴なのか田舎で育った若者たちのしたたかさなのかわからないが、思い出と割り切って先に進むところがさっぱりしている。

  2021.08.23

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  『ラビット・ホール』

  送料無料【中古】ラビット・ホール [DVD]楽天で購入事故で子供を失った親に、宗教が救いをもたらしてくれることもあるが、科学が救いになることもある、という話のようだった。ニコール・キッドマン演じるベッカとアーロン・エッカート演じるハウイーの子供を、車で轢いてしまったマイルズ・テラー演じるジェイソンは、平行宇宙に関する本を読んで、別の世界では子供を轢かない自分が別の生活をしていると想像し、癒やされているようだった。子供を失ったコーベット夫妻はもちろん可愛そうだとは思うが、突然、犬を追って飛び出てきた子供を轢いてしまったジェイソンも、酷く可愛そうに思えた。こちらも被害者ではないかと。それはコーベット夫妻も理解していたようで、ベッカはジェイソンを自分の子供のように心配していた。この映画のニコール・キッドマンは天女のように美しい。

  2021.08.23

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  『屋根裏部屋のマリアたち』

  屋根裏部屋のマリアたち/ファブリス・ルキーニ[DVD]【返品種別A】楽天で購入1960年代のパリの有産階級とメイドの交流の話。最近見た洋画の中で、特に楽しめたし、後味もいい。スペイン人のメイドたちが、貧しくてもお互い助け合い、よく働き、そして自分たちの時間はとことん楽しんでいるように見えたところに共感した。スペインの女性は、みんなフラメンコを踊るのかどうか知らないが、この映画では、みんなで集まって、若い女性も年寄りも踊っていて、非常に魅力的だった。一方、パリで証券会社の社長をしているジャン・ルイという男もまた魅力的なおじさんで、最初は見た目からおじいさんかと思ったが、奥さんのシュザンヌはまだ若く、マリアたちと遊んでいるうちに、次第にルイも若返って行くように見えた。この映画の良いところは、ルイの不倫が成功するところである。成功というのは適切な表現かどうかわからないが、不倫が本気になり、それが成就したという点で、しかも、結果的には誰も悲しまず、陰気くさくないという点で、非常にいい。ルイの奥さんのシュザンヌも、自分の生き方を見直して再婚し、幸せになった。主人公ばかりでなく、みんながみんな、幸せになって終わったところが、この上なく良い映画だと思った理由である。そんなことはありえないとしても、ラテン系のノリで可能なような気がした。個人的には、ルイが風呂場でシャワーを浴びているマリアを見て欲情し、代わりに奥さんのシュザンヌに、真っ昼間から迫るシーンが見どころだった。

  2021.08.23

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  『アリスのままで』

  アリスのままで [Blu-ray]楽天で購入この映画に感動した理由の一つは、ジュリアン・ムーア演じる主人公のアリスが、極めて稀な遺伝性の若年性アルツハイマー病に罹ったにも関わらず、自分らしい生活を維持できていたことだと思う。この病気は50％の確率で子供に遺伝し、遺伝したら100％発病するという。50歳で若年性アルツハイマー病になったアリスは、高名な言語学者としてコロンビア大学で教鞭をとるインテリ女性だったが、アルツハイマーになることで、理知的な自分と自分が培ってきた業績をすべて失ってしまう。アリスの主治医によると、若年性アルツハイマー病は、インテリほどその知性によって能力の衰えを補えるため、重度になるまで発見しずらく、かえって進行が早いのだという。アリスの場合もそのようだった。言語学者として、自分の人格も含めた世界全体を言葉で定義することを仕事にしてきた人間にとって、言葉が出てこないという状況はすごく辛そうだった。だから、まだ自分の意識がしっかりしているうちに、その時に備えて、尊厳死を確実に実行する方法を考え、準備していたようだったが、病気が進行したアリスに、それを実行するのは無理のようだった。思い通りの最後を迎えられなかったという点では、アリス自身にとっては不本意な展開ではあった。しかし、アリスには優しい夫と3人の子供たちがいて、彼らとの関係は発病後も良好に続き、その家族がアリスを助ける様子が感動的だった。それまでにアリスが築いた家族との関係が、アリス自身が自分を忘れてしまった後も、アリスがアリスであることを定義していたように見えた。

  2021.08.23

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  『ギフト　僕がきみに残せるもの』

  ギフト 僕がきみに残せるもの [ スティーヴ・グリーソン ]楽天で購入この映画の主題は、親子関係のようだった。このドキュメンタリー映画の元になった映像は、ALS（筋萎縮性側索硬化症）の患者が、将来、子供とのコミュニケーションが取れなくなることを見込んで、自分の息子のために撮った個人的なビデオだという。しかし、この映画自体は、自分と息子の関係というより、自分の父親との関係に主題が置かれているように見えた。主人公の元アメリカンフットボールのスター選手、スティーヴは長年、父親の押し付けがましい信仰と戦ってきたようだった。教会に連れて行って神の奇跡で息子のALSを治そうとする父親と、それに反発するスティーヴの映像には、涙を禁じ得なかった。スティーヴの奥さんのミッシェルは、素直という言葉を体現したような顔をしている女性で、素直という言葉はこの表情を意味しているような気がした。ミッシェルがいたからこそ、スティーヴはALSに対応してこれたし、父親との関係を改善することができたように思えた。そういった意味で、ミッシェルはスティーヴに取って救世主のように見えた。その他、私がこの映画で学んだのは、幼少期のトラウマや人間関係の鬱憤をスポーツで晴らすというのは正しい解消方法かもしれないということだ。私はそういうストレスをスポーツで晴らすのは良くないことだとずっと思ってきた。しかし、他に何か良い方法があるのかどうかもわからなかったので、ストレスを貯めないことが一番大切だと思っていた。しかし、この映画を見ていると、スポーツで鬱憤を晴らすのは生きる上で正当な権利なのかもしれないと思えて来た。一方で、マイナスのエネルギーの発散にスポーツを使うと、益々心が乱れるような気がしたし、マイナスのエネルギーの発散による競い合いは過激になり、怪我の元になるような気もした。そして、そのエネルギーが病気の元になってしまう可能性もあるのではないかと思えなくもなかった。だから、発散という言葉より、昇華と言った方が適切かもしれない。その他、ALSの患者が喋れなくなった時に、目の動きで文字を拾うシステムが便利だと思った。スマホにも標準装備して欲しい。

  2021.08.22

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  『エデンより彼方に』

  エデンより彼方に トッド・へインズ HDマスター [ ジュリアン・ムーア ]楽天で購入1960年代のアメリカでは、同性愛は病気であり、治すべきものと考えられていたらしい。しかも、精神科医の行動療法や化学療法を受けても、同性愛が治る確率は5％から30％の間だったという。病気の中でも治りにくい病気と捉えられていたということが意外だった。この映画を見ると、1960年代のアメリカというのは、先日見た映画『イミテーション・ゲーム』で、主人公のアラン・チューリングが同性愛者だったためにわいせつ罪で逮捕され、強制的にホルモン治療させられた1950年代のイギリスと、そう違わないということが分かる。この映画では同性愛に加えて人種差別の問題が取り上げられており、自由と民主主義の一番先を進んでいるように見えるアメリカでも、つい最近までこの映画のような理不尽なことが行われていたとは驚きだった。60年前まで、アメリカは不自由な国だったということを思い知らされる。それに加えて、女性の人権というのも、当時はないがしろにされていたようだ。ジュリアン・ムーア演じるブルジョワ家庭の主婦キャシーは、デニス・クエイド演じる夫のフランクの言いなりだった。フランクは、自分は好きな男とイチャイチャしているくせに、妻が少しだけ黒人と親しそうにしていただけで激怒しているのである。どう見ても、いけ好かない男である。それでも社会的地位があり、いいお父さんで通ってしまうのである。そして、この映画では、お気に入りの女優パトリシア・クラークソンは、まったく鼻持ちならない気取ったババアを演じていて、もう、この顔を見るだけでムカつくのだった。

  2021.08.22

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  『花よりもなほ』

  【送料無料】花よりもなほ 通常版/岡田准一[DVD]【返品種別A】楽天で購入すごく面白い映画だった。戦国時代に活躍した武士階級が、平和が続いた江戸時代後期には何をやっていたのか、その疑問に答えてくれるような映画だった。（ほんとにそうだったかはともかく。）戦争がない時代に長い刀を腰に下げて外を歩かなければならないというのは、心身共に、さぞかし大変だっただろうと想像できる。映画に出てくる長屋の酔っぱらいの話ではないが、武士は農民のように食べ物を作るわけでもなく、職人のようにモノを作るわけでもなく、商人のように何かを売っているわけでもなく、ただ偉そうに刀を差してぶらぶらしていだけだったのではないかと疑いたくなる。おまけに、農民や商人から集めた年貢で禄を食む立場にあったのだから、周りの目も相当厳しいものだったに違いない。他人に言われるまでもなく本人たちも、自分たちは何のために存在するのだろうと自問せずにはいられなかったのではないだろうか。この映画では、その武士階級の役割の一つを説明していた。それは、働くものたちを楽しませる、芸人のような立場だったというものだ。農民や商人の手本になるというよりも、彼らの娯楽になるような話題を提供したり、彼らから吸い上げた年貢を使って経済的な面で困窮者を支えることもあったようだ。また、江戸時代の武士は知識階級でもあったようだ。岡田准一さんが演じた主人公の青木宗左右衛門は、剣の腕はダメだったが、学問はそこそこできたので、長屋で寺子屋を開き、無料で、子どもたちや知識欲のある大人に読み書きやそろばんを教えていた。

  2021.08.22

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  『ディパーテッド』

  ディパーテッド【Blu-ray】 [ レオナルド・ディカプリオ ]楽天で購入この映画はギャング映画の中でダントツに面白いと思う。マフィアのスパイと警察のスパイ、それぞれの二重生活を描いている点と、ギャングのボス、コステロを演じたジャック・ニコルソンの表情が良かった。といっても、ギャング映画をたくさんみているわけではないので、正直、ダントツなのかどうかは分からないのだが、説教臭くないところと、ギャングの人間性を肯定的に描いているところと、警察とギャング、FBIとのつながりなど、体制側と反体制側、というか、それに反逆する役割を担っている側の馴れ合いを表現しているという点で、戦後日本を描いた『東京アンダーワールド』を読んだ時と同じような面白さがあった。結局、関係者で生き残ったのは極秘潜入捜査チームのマーティン・シーンだけだったようだ。ジャック・ニコルソンは本当に悪人顔だ。ディカプリオは、『ワンス・アポン・ア・タイム・インハリウッド』で見せた大胆さとは対照的に、繊細さが顔に現れた役だった。マット・デイモンは、頭は良いのに何か間の抜けたようなポカンとした顔をした瞬間の演技が良かった。その他、心療内科医役のヴェラ・ファーミガが、パトリシア・クラークソンに似て可愛かった。【中古】単行本(実用) ≪歴史・地理≫ 東京アンダーワールド / ロバート・ホワイティング 【中古】afb楽天で購入

  2021.08.22

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  『ラスト・ホリデイ』

  送料無料【中古】ラスト・ホリデイ [DVD]楽天で購入なんだかステキな映画だった。あんな健康そうな見た目で余命2週間というのは、いかなる難病と言えども嘘くさいのだが、本人は医者の言うことを真に受けて、人生の最後を飾ろうと全財産を処分して旅に出てしまうところが潔い。クイーン・ラティファ演じる主人公のジョージアは、ランピントン病という難病にかかってしまったという。そのうえ、ウイルスによってその病状が早められてしまったという。この映画のように、人生でやり残したことを考えさせられる映画は他にもあるが、年寄りが主人公の場合が多いような気がする。この映画の場合は、働き盛りの女性が主人公というの点で珍しい。また、一見、それまで負け組だった女性が、全財産を使って今までやりたかったことを、とこんまでやるというのが良い。つまり、自分に近い境遇の人の話だからこそ、引き込まれるところがあった。しかし、負け組と言っても、相当カネを貯め込んでいたからこそ出来ることではあった。

  2021.08.22

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  『わたしに会うまでの1600キロ』

  わたしに会うまでの1600キロ【Blu-ray】 [ ローラ・ダーン ]楽天で購入母の死をきっかけに自堕落な生活に陥り、そこから立ち直るために旅に出かける女性の話。3ヶ月以上も一人旅を続ける中で自分の心と向き合い、本来の自分に戻ろうという趣旨のようだった。しかし、この映画の主人公の場合、ヤク中のようだったから、自然の中で自分探しというよりも、自然の中で規則正しい生活をすることで、健康を取り戻したように見えた。また、自分で決めた目標に挑戦し、結果を残すことで、現実の生活を生きる上でも自信を取り戻したようだった。人間は何百万年も自然の中で暮らしてきたのだから、むしろそっちの方が自然なわけで、都会の生活とは違ったストレスを受けることで、生きている実感のようなものを味わうこともできたのだと思う。ただそれは、新しい自分に出会えたというより、自然にそうなっただけで、思い出に残して話のネタにでもすればいいことなのかもしれない。また、自分を見つめるために自然を使うというのはよく聞くやり方で、実際有効なのかもしれないが、自然を挑戦の手段として使うのは、生死を左右するというだけでなく、ある意味、身勝手な行為でもあるようにも思えた。人間が自然の中を歩くことは本人にとって意味があっても、自然の側にはなんの意味もない。自然の側では反対することもできないし、そのことに意味付けなどできない。全て人間の勝手な思い込みに過ぎない。こういった自然の中を歩いて自分を取り戻すみたいな旅に、アメリカでは理解ある人が多いのかなという気がしたし、そこに意味を持たせることも上手いように見えた。そんな話はいいとして、この映画のトレイル自体の映像にはリアリティが薄かった。エンドロールに出てきた本人の写真が写った映像の方にリアリティを感じた。だからか、実際にシェリル自身が体験したことは、この映画とは違うのかもしれないと思えた。

  2021.08.21

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  『永遠の僕たち』

  永遠の僕たち【Blu-ray】 [ ヘンリー・ホッパー ]楽天で購入両親の交通事故死をきっかけに死に捕われ、他人の葬式に参列することを趣味としていたイーノックは、顔は美男子なのに、ちょっと何かが足りないような雰囲気を漂わせている。そのためか、その気持ちはわからないではないものの、物語に今ひとつ入り込めなかった。両親の死と自身の臨死体験を通じて死を身近に感じながら生きる若者というのは、全く自分と関係ない他人の葬式に繰り返し出たりするのを止められないものなのだろうかと、そこもよく理解できなかった。何十年も前に死んだ全く知らない日本人の霊が見えるという部分も、何が原因なのか最後までわからなかった。そんな特技を持っていて、特攻隊員のヒロシの霊が見えたからこそ、ヘンリー・ホッパー演じるイーノックは、ミア・ワシコウスカ演じるアナベルと親しくなれたように見えたから、物語の核心部分であるような気がするのだが、つながりが私にはわからなかった。イーノックの霊視は、アナベルの死後も続いたのだろうか。そういうことなら、また見方が変わってくる。この映画で余命3ヶ月の少女アナベルを演じたミア・ワシコウスカは、儚そうな顔をしていて、彼女の病気と苦悩を思うと、とにかく応援したくなるような美少女だった。

  2021.08.21

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  『東ベルリンから来た女』

  東ベルリンから来た女 [ ニーナ・ホス ]楽天で購入ベルリンの壁が崩壊する9年前、西側への移住申請を撥ね付けられ、田舎町の病院に左遷された女医の物語。ちょっとキツめの金髪美女、ニーナ・ホス演じる女医のバルバラが、非常に患者思いなのに幸薄げなのが魅力的だった。医療や教育の分野は、資本主義社会においても市場を自由化してはならない領域という話を聞くことがあるが、その医療に携わる人間として、「ヒポクラテスの誓い」に忠実なバルバラは非常に尊敬できる人物のように見えた。自由診療と保険医療制度を都合よく使い分けて儲けているように見える地元の歯医者とは正反対の人間のように見えた。それはともかく、この映画の見どころは、金髪女医のバルバラが自由で豊かな西の恋人を選ぶのか、東に生きる誠実な男を選ぶのかにあるのだろうが、ロナルド・ツェアフェルト演じる上司のアンドレが非常に優しそうないい男だったので、なんとなく残るだろうなという感じは、見ながらも予想できた。それよりも、自分の代わりに西に逃がしてやった精神に病気を抱えた少女は、果たして西側でちゃんとやってけるのだろうか、そのことの方が気になった。

  2021.08.21

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  『真夏の体温』

  真夏の体温 【DVD】楽天で購入ジュノー・テンプル主演の「青春エロティック・ドラマ！」ということで借りた。冒頭の、ジュノー・テンプル演じる主人公のアイリスが、湖みたいな川で泳ぐシーンに見入った。アイリスの、バッハのように爆発したモジャモジャ頭と、ちょっと太めの裸体に惹きつけられた。もし近くに、アイリスみたいな女子大生のねえちゃんが全裸で泳いでいる川があったら、木陰に隠れて覗き見してしまうだろうなと思った。あるいは、河童のように水中に潜って、足を引っ張ってしまいそうだった。それくらい、ジュノー・テンプルの裸体は魅力的だった。それくらい、というのはどれくらいなのか、正確に説明しずらいが、金髪美女というのは天使みたいで、その天使がちょっと堕落した感じがたまらなかった。話自体は、そんな下らない私の感想とは真逆の、事故で親友を亡くした若者の心の傷について描かれた深刻な話だった。

  2021.08.21

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  『真田幸村の謀略』

  真田幸村の謀略 [ 松方弘樹 ]楽天で購入この映画は、昭和54年9月公開と結構古く、特撮映像は偽物だとバレバレな感じなのだが、今のCGを駆使した時代劇映画より面白い気がした。戦闘シーンに出てくる模型の爆破や合成シーンにスケール感はないのだが、チャンバラや鉄砲に撃たれて落馬するシーンなど、アクションシーンは迫力満点だった。また、登場人物たちが現代の常識にとらわれない破天荒な人間ばかりで、実際どうだったかはわからないが、現実の侍というのはそうだったのだろうなと、思わずにはいられないようなリアリティーがあった。最初に糸で吊られた火の玉が出てきたときは、見て失敗したと思ったが、しばらく見ると面白くなってきて、最後まで目が離せなかった。この映画の主人公は真田丸なので、真田丸が英雄として扱われるのは当然かもしれないが、真田丸を演じる松方弘樹さんに比べて萬屋錦之介さんが演じた徳川家康はいつも刺客を気にしながら謀略を巡らしているからなのか、極端に顔色が悪くて、いくら天下をとって長生きしたとしても、あれじゃイヤだなと、見るものに感じさせる設定になっていた。真田丸役の松方弘樹さんは非の打ち所のない二枚目でかっこよかったが、個人的には猿飛佐助を演じた西郷輝彦さんが一番かっこよかったと思う。最初から最後まで、この戦争をコントロールしていたのは猿飛佐助のように見えた。

  2021.08.21

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  『ディヴァイナー　戦禍に光を求めて』

  【バーゲンセール】【中古】DVD▼ディバイナー 戦禍に光を求めて▽レンタル落ち楽天で購入穏やかな反戦映画のようだった。実際この時代に、ジョシュア・コナーのように自分の息子を戦場に送ったことを悔い、戦死の報を受けて、息子の遺体を自分の手で持ち帰るために、戦場まで足を運んだ父親がいたとしたら、すごいことだと思う。同じような思いを持った親は沢山いたとしても、コナーくらい自分のサバイバル能力に自信がなければ、オーストラリアからヨーロッパの戦場などに入り込んむ事は無理ではないか。そういった意味で稀有な存在だったからこそ、語り継がれる物語になったのだろうが、それだけでなく、コナーは神秘的な力を持っていたようで、ダウジングで井戸を掘り当てたり、息子たちの遺体の場所を、想像力でピタリと特定している。この父親が、そんな特殊能力を持っていることを、なぜこの映画では殊更に描いているのだろうか？神にも守られた存在であったことを示しているのだろうか。第一次世界大戦中、連合国軍がイスタンブールを占拠するために行われた上陸作戦「ガリポリの戦い」は13万人以上の犠牲者を出したという。

  2021.08.21

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  『ダイアナ』

  ダイアナ【Blu-ray】 [ ナオミ・ワッツ ]楽天で購入ダイアナ妃の人間的な魅力を描いた感動的な映画だった。1997年にダイアナ妃が亡くなる前、英国王室のスキャンダルは日本でも大きく報道されていたので、ヨーロッパ人は王室といえど、性的に自由奔放なのかと思ったものだが、この映画を見ると、そいういわけではなく、ダイアナ妃は純粋に愛に生きた人なのだと、認識を改めた。この映画を見ると、ダイアナ妃はハスナット・カーンとドディ・アルファイドの間で二股をかけていたというより、ハスナット・カーンの気を引くために、ドディ・アルファイドと付き合っていたようで、なんともいじらしかった。また、ダイアナ妃が行ったアンゴラでの活動が世界の国々の対人地雷全面禁止条約締結に大きく影響したことを知り、人類全体の幸福を考えていた慈悲深い人でもあったと知った。ダイアナ妃が36歳の若さで亡くなったと知って、残念でならなかった。今も健在なら、そのビジョンと強い意志によって、更に世界をより良い場所に変えるべく影響力を発揮されていたに違いない。ハスナットカーンからの電話があと1分早ければ、ダイアナ妃は交通事故で死なずに済んだような設定になっていて、あれが事実だとしたら、ハスナットカーンの後悔は想像し難いものだろう。

  2021.08.20

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  『灼熱の魂』

  灼熱の魂[DVD] / 洋画楽天で購入おすぎさんが、「63年、映画を見てきて、これほど衝撃を受けたラストはありませんでした。そのあとに胸が張り裂けるほどの感動が押し寄せてきました。必見の映画です。」と紹介されていたので、期待して見た。中盤までは、憎しみの連鎖で内戦が拡大していく紛争地域の国の内情を現した残酷な映像が多く、問題を解決するのは永久に無理なのではないかと暗い気分になってしまった。しかし、最後まで見ると、この映画に描かれている物語は、希望のある話のようだった。それは、ナワルとその子供たちにとっては、この事実は死ぬほどショックなことだったのかも知れない。しかし、話としては、なんだかキリストの誕生神話のような、神秘的な雰囲気が漂う物語だった。部族と宗教が異なる男女の恋愛話が、屈強な意志を持つ女性によって、伝説にまで昇華されたような物語だった。途中までそれは、マルワン家にとって不名誉なことという、一家族の問題に過ぎないのかと思っていたが、中盤に娘のジャンヌ・マルワンが母の故郷の村デルオムを訪れた時、年寄りから聞いた内容によれば、その不名誉なことが部族間の対立の引き金になり、ひいては内戦の始まりだったようなことを言っていた。それが事実とすると、ナワルの行為は南部のキリスト教徒とムスリム難民の間に多大な犠牲を強いたことになり、ナワル個人が払った代償とは比べ物にならない大きさのように思われた。実際にレバノン内戦がこのような理由で始まったわけではないだろうし、彼女が憎しみの連鎖を断ち切ったことで内戦が終結したわけでもないだろうが、15年も続いた内戦の間には、部族や宗教の異なる人間同士でそのようなことも多数あったのではないかと思われ、この物語はそれらを代表する英雄伝説なのかもしれない。

  2021.08.19

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  『帰郷』

  [DVD邦]帰郷【レンタル落ち中古】価格：1100円（税込、送料別) (2021/8/19時点)楽天で購入西島秀俊さん演じる晴男が、同級生の女の子に久し振りに会って、少し成長するという話だった。晴男は純粋な青年なのだが、同級生女子の深雪と比べると、どうしても幼く見えてしまう。「誰かを守ってあげられるほど、僕は大人になっただろうか？」「君に出会えて、僕はほんの少し大人になった」という晴男の言葉らしきキャッチコピーが書かれていたが、「誰かを守る」という意味が、この場合、「金を出すこと」という直接的な意味だとよく分かる話だった。美人で子持ちのバツイチ女、片岡礼子さん演じる深雪が、お人好しの晴男を、都合よく利用しているようにしか見えなかった。それでも、純粋な晴男は、都合の良い男を演じることを通して自分は成長していると思って、まんざらでもないようだった。そして、それが大人になるということで、みんな俺を手本にしろよ、と言いたげな晴男のドヤ顔を見て、嫌気がさした。惚れた弱みなのか、その辺がなんだかモヤモヤするのだが、嘘とわかって受け入れるのが男だ、と言われると、そういうものかと、私もまた少し大人になったような気になった。

  2021.08.19

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  『目撃』

  目撃 [ ジーン・ハックマン ]価格：1100円（税込、送料無料) (2021/8/19時点)楽天で購入この映画では、クリント・イーストウッドが法を破る側、泥棒役を演じていたが、泥棒でもクリント・イーストウッドが演じる泥棒は道徳的な感じがした。おなじみアウトローでも紳士的なのであった。それに比べて、合衆国大統領を演じたジーン・ハックマンは、道徳的な顔ではなかった。大統領補佐官を演じた女性も、タチの悪そうな顔をしたおばさんだった。見た目で結末がわかるような配役だった。そのおばさんが、被害者女性の所有物であったダイアのネックレスを大統領からのプレゼントだと思いこみ、舞い上がっている様子が、あからさまに滑稽に描かれていて、それを演出した人は意地悪だなぁと思わなくもなかった。クリント・イーストウッドは自分がかっこいいからか、見た目の悪い男や女に対して冷たい演出をする印象がある。例えば、ダーティーハリーシリーズでも、見た目が明らかにブスな女性に対して、最初からあばずれ女呼ばわりして、はなっから相手にしない。ケイト・ホイットニー役のローラ・リニーは、『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』でコンスタンス・ハラウェイを演じた女優で、こちらの映画ではまだ若い。そのローラ・リニーがクリント・イーストウッド演じる泥棒ルーサーの娘役なのだが、いかにも誠実そうな顔をした弁護士で、最初は父親を疑うも、真実を知らされて、父親との長年の確執が解けていった様子も、見た目通りのエンディングだった。有力議員の豪邸の警備システムが古く、特に派手なアクションシーンもないのだが、最初から最後までテンポよく進んで飽きることなく楽しめる映画だった。

  2021.08.19

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  『007　慰めの報酬』

  【中古】007　慰めの報酬　限定版 / マーク・フォスター【監督】価格：450円（税込、送料無料) (2021/8/18時点)楽天で購入『ある天文学者の恋文』に出ていたオルガ・キュリレンコが出ているというので、『マックス・ペイン』と一緒に借りた。『マックス・ペイン』では前半で殺されてしまったが、こちらではボンド・ガール、カミーユを演じている。オルガ・キュリレンコの演じたカミーユは、Ζガンダムのカミーユに、ふてくされた時の顔が似ていた。007シリーズは、毎回度肝を抜かれるアクションシーンで、どれを見ても楽しめる映画なのだが、税金と最新の装備を使って市街地でやりたい放題に暴れているシーンを見ると、あんなのが地元に来たら凄い迷惑だろうなと思わずにはいられなかった。この映画でも、スペインの民家の屋根を使って、ミスターホワイトの仲間を追っていく場面で、他人の家の瓦を何枚割ったのかと、そして一般民衆が撃たれたりしても気にしない様子を見ていると、007というのはやはり頭のイカれた野郎だと思わずにはいられなかった。

  2021.08.18

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  『インサイド・マン』

  インサイド・マン【Blu-ray】 [ デンゼル・ワシントン ]価格：1100円（税込、送料無料) (2021/8/18時点)楽天で購入この映画は、デンゼル・ワシントン扮するキースと、キウェテル・イジョフォー扮するミッチェルの間で交わされるアメリカンギャグが面白い。それと、弁護士役のジョディ・フォスターと、警官役のアシュリーアトキンソンと、銀行の客でデカぱいのサマンサ・アイバースが可愛いいと思った。この映画は戦争犯罪をテーマにしているのに、誰も死なないところも良かった。私が好きなウィリアム・デフォーはいまいちの役回りだったが、あの警官たちの間の会話は、最高に面白かった。2回目に見た時も面白かった。時間を置いて、また見たい。

  2021.08.18

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  『ゲーテの恋』

  ゲーテの恋 ～君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」～ [ アレクサンダー・フェーリング ]価格：1100円（税込、送料無料) (2021/8/17時点)楽天で購入ジャケットに書かれた謳い文句は、「きっとあなたも、恋がしたくなる」なのだが、人妻に恋して銃で自殺したゲーテの友人イェルーザレムのことが、ゲーテとシャルロッテの恋よりも強く印象に残って、そうはならなかった。おまけにシャルロッテは顎が割れてて男みたいな顔をしていて、兄弟が恐ろしく多くて、なんだか多情な女のように思えて、野っ原で泥まみれになってやってるシーンは多少見どころではあったものの、「恋がしたくなる」感じではなかった。また、失恋したゲーテよりも、ゲーテに妻を先乗りされた人の良さそうなケストナー参事官の方に同情してしまった。18世紀のヨーロッパの都会は、石畳の街がきれいだが、田舎は道路がぬかるんでいて、泥まみれで汚く、昔の日本と変わりないというか、汚さは日本より酷いような感じがした。この時代のドイツで、身分というのがどのくらい人間の自由な生活を縛っていたのか、この映画を見てもよくわからない。ゲーテは若い頃から学問の才能があって法律を学んでいたようだが、詩や小説が売れる前から、仕事をしなくても食っていける身分だったようにも見えるし、没落貴族みたいなシャルロッテの家も、何をやって生活しているのかよくわからない。没落すると金持ち貴族と結婚して、家を維持していくのが習わしだったように見える。18世紀のドイツ人は意外と自由に暮らしていたんだなという印象を受けた。

  2021.08.17

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  『グランド・マスター』

  グランド・マスター【Blu-ray】 [ チャン・ツィイー ]価格：1650円（税込、送料無料) (2021/8/17時点)楽天で購入1930年代の中国では、長江を挟んで北側に八極拳、八卦掌、形意拳の3つ、南側に詠春拳があって、それらは対立しており、対日抗争を前に南北流派の統合が求められていたという。そのための会議が広東省佛山で行われた。その辺りの時代が、この映画の舞台らしい。この映画は、戦前から戦後にかけて活躍した中国の武道家で、ブルース・リーの師匠にあたるイップ・マンに関する話だ。小学生の頃、私はジャッキー・チェンのカンフー映画が大好きだった。この映画もカンフー映画だから嫌いではないが、ジャッキー・チェンの初期のカンフー映画と違って、特殊効果が多用されていて、嘘臭さを感じてしまった。ただ、イップ・マンを演じたトニー・レオンの鼻が、ジャッキー・チェンの鼻に似ていて、その点では本物の武闘家らしさが出ているような印象を持った。しかし、私の好みに照らし合わせると、全体的に面白い映画というわけではなく、かといってつまらないわけでもなく、まあ最後まで見てもいいかなというくらいの普通の映画だった。最後まで見ていられたのは、チャン・ツィイーが出ていたからだろう。内容としては、これだけ中国に多くのカンフーの達人がいたのに、なぜ抗日戦争で劣勢に立ってしまったのか、そのへんがどうも納得行かなかった。やはり飛び道具には勝てないということなのか。だから、イップ・マンが悟ったような口調で、「カンフーとは何か」とか語っても、説得力に欠けた。その答えが、日本語吹き替え版で聞くと、「縦か横か」などと言われると笑ってしまう。まあ、一時は優勢に立ったのかもしれない日本も、更に優れた飛び道具を沢山持った国々に、その後、こてんぱんにやられてしまい、80年後の今では中国にも軍事経済両面で劣勢にあるのだから、いずれにしても、100年後を考える思想は国にとって重要なのだろうということで、納得した。

  2021.08.17

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  『砂漠でサーモン・フィッシング』

  砂漠でサーモン・フィッシング [ ユアン・マクレガー ]価格：1100円（税込、送料無料) (2021/8/17時点)楽天で購入主人公のジョーンズ博士を演じたのがユアン・マクレガーだったのと、魚釣りが関係する映画だったからなのか、『ビッグフィッシュ』に似た雰囲気の、主人公たちが少し催眠状態に陥っているような感じの映画だった。要は仕事で知り合った若い女に中年男が横恋慕する話なのだが、誠実そうなユアン・マクレガーが演じると、それも良いことのように感じてしまうから不思議た。彼の後ろにイエメンの大富豪の援助があったからのような気もする。ただ、戦場で死に損なったハリエットの恋人のことを思うとやりきれないような気がした。イエメンの大富豪を演じたアマール・ワケドが非常に格好良かった。大富豪が釣りキチに関して、「釣り人が美徳とするのは、忍耐と寛容さ、そして謙虚さだ」と言っていたのが印象に残った。彼らには、「魚」と「川」と「釣り」さえあればいい、という言葉にも感銘を受けた。

  2021.08.17

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  『エルサレム』

  【中古】 エルサレム（Blu−ray　Disc） ／ヤエル・グロブグラス,ヨン・トゥマルキン,ダニエル・ヤドリン,ドロン・パズ（監督、脚本、製作、編集）,ヨアヴ・パズ 【中古】afb価格：1380円（税込、送料別) (2021/8/17時点)楽天で購入エルサレム市街地の景色が綺麗だった。なぜ、あの景色が綺麗と感じるのか、石の建物が日本人には珍しいからなのか、聖書に登場する歴史的建造物が含まれているからなのか、色とバランスの取れた建築物だからなのか、私にはわからないが、まあ、出てくる観光客が、それを見て喜んでいるからというのもあるのかもしれない。しかし、この映画に多用されている主人公サラブルマンがお父さんに買ってもらったスマートグラスを通しての映像は、見ているだけで疲れる。あんなものは100円ショップで売っていても買わないと思う。そう言えば『第9地区』も、ウェアラブルカメラで撮ったみたいな映像が多くて疲れた。目が疲れる映画は私のような中年以降の年寄りには合わない。映画の内容も、よくあるゾンビものだった。私がホラー映画に興味がないためだろう。エルサレム映画祭のなんとか賞を受賞している作品とあって少し期待していただけに、残念だった。

  2021.08.17

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  『ウィニング・アローン』

  ウィニング・アローン 自己理解のパフォーマンス論【電子書籍】[ 為末大 ]価格：1650円 (2021/8/17時点)楽天で購入テレビでよく拝見する元陸上競技400メートルハードル・オリンピックメダリスト、為末大さんの著書ということで読んでみた。私は今はスポーツはやらないが、中学生の頃は陸上部に所属し、400メートルをやっていた。というか、やらされていた。あの頃体験した練習の苦しさは、その後の人生で経験した、いかなる苦しみより大きかったと思う。400メートル走において最後の100メートルの、酸欠状態で意識が薄れる中、大臀筋が割れるような痛みに耐えて足を上げ続けなけれならない苦しさは、受動的な怪我の痛みとは違った、意志の強さを試される痛みだった。だから、400メートルハードルで世界3位まで上り詰めた人の話というのは、無条件に信頼できるような気がした。スポーツをやらない自分にも、日常生活で参考になりそうなことが書かれていた。たとえば、「メンタルの弱さを短所として捉えている人も多いが、ものの見方はある程度変えられても、自分の性格を矯正するのは難しい。心そのものに手をつっこむと迷路にはまる。むしろそのままの性格の自分でも力を出せるようなものごとの捉え方を身に着けた方がいい。p84」・アイデンティティについて「しばらく悩んだが、あるときからアイデンティティとは自分の能力の発揮ではなく、何かの役割を果たしているという感覚からくるものだと気が付いた。その役割が唯一無二であるほどアイデンティティは強くなる。誰かに貢献することで新しいアイデンティティが得られる、と気づいて、自分に向いていたベクトルを社会に向け始めた。競技者は自分を中心に置いてどう戦い生き残るかの世界で生きているけれど、社会はむしろ協調でできている。自分を使って社会に貢献することで居場所ができる。p62　」「楽しいことをやることと、やっていることを楽しむことは違う。前者は受け身の行為であり、後者は主体的な行為である。前者は誰かが人を楽しませるために作り出したものによって遊ばされている。後者はそこにあるものを自分なりの工夫で編集し直して遊んでいる。もちろんきれいに分けられるものではなく、前者から後者への移行もある。ただ、比重が楽しいことをやること（＝楽しまされること）に近づき過ぎると、自らそれを楽しむという主体性が失われていく。　楽しみ方は人によって違う。私のように開放性が高く、新しいものを好む人間は、瞬間瞬間の思いつきを大事にするが、計画を維持し一貫性を保ちたい人間は、これを不快に感じ楽しめない。後者の人間は、じっくり考えそれを計画的に実行するプロセスにおいて楽しみを見出す。前者の人間は、瞬間と非連続的成長を楽しむが、後者の人間は一貫性と連続的成長を楽しむ。これは個性であって良し悪しの問題ではないが、いずれにしても主体性がそこに無ければ楽しんでいるのではなく楽しまされているだけだ。p129」という部分などである。それから、趣味でテレマークをやる時にも参考になりそうなことが書かれていた。・注意の向け方について「パフォーマンスとは動きであり、動きとは連動だ。連動するものは中心点が瞬時に変わっていく。中心点などないともいえる。この変わりゆく動きのどのタイミングのどこに意識するかでパフォーマンスは変わる。ときにはそれが身体を外れ、中空のどこか一点というときもある。注意は地味だが威力がある。注意を払うことが癖づいた人間は、何を観察させても学べるようになる。（p140）」「注意を向ける先が変われば動きは変化する。難しいのは変えたい対象そのものに注意を向けたからといって、そこが変わるとは限らない点だ。右足を前に出したいと思っている時には、右足のことを考えるよりも右腕を引いた方が前に出る。さらには右足はみぞおちから始まっているのだと、架空の身体をイメージし、そこに注意を向けた方が大きく前に足が出る。そういうことが起こるのだ。（p142）」・シンプルに考える「意識をし始めると、とにかく細かいことを気にし過ぎてしまう。私は足の裏をフラットの着くべきか、前足部で着くべきかなどを気にし過ぎてこじらせた。改めて考えると、力のほとんどは身体の中心でつくられていて、そんな細かい末端のことはほとんど影響していない。どんな競技の真髄も考え抜けば小学生でも理解できるほどシンプルだ。その真ん中から目をそらさないことが大事だ。細部を追求し過ぎてはいけない。（p89）」・理論を完全にインストールする　「私は、自分がスランプになった時に高野進さんのところに行って、走りを一から教わった。考え始めてわけが分からなくなっているのは型がないからだ。型をつくるためには、誰かの型に全部染まりきった方がいい。大事なのは素直に聞くこと、これに尽きる。それなりの年齢だとプライドもあり自分の理屈もあるが、そんなものは全部捨てて一定期間ひたすらに言われた通りにやってみる。一番良くないのは中途半端にわかったふりをしてつまみ食いをすることだ。そうするとちぐはぐでばらばらな動きが出来上がる。自分らしくやりたいなら、染まった後でオリジナルをつくればいい。また、いろいろなところにアドバイスを求めないことだ。このタイミングでは断片的な一級アドバイスより、一貫性のあるアドバイスの方が価値がある。」・適当にやる「考え始めの谷で深刻になる人間は、そもそも真面目で何かに集中しやすく、その分視野が狭い場合が多い。考え続けるからはまり続ける。結果として問題が深刻化する。考え始めの谷は、真面目に積み重ねることで抜けられるものではなく、ある日一夜にして抜けられるようなものだ。私はいくら考えても走りが元に戻らないから、ちょっと夢中になってみようと思い、自分の腕に鈴をつけてその音だけに集中して走った。これがきっかけでだいぶ改善した。諦めるわではないけれども、考えることを一旦止めて、今までと全然違うことをやるような適当さが大事だ。そういう意味では定期的に頭を真っ白にして競技をすることも大切で、考えることと考えないで夢中にやることを自在にコントロールできるようになれば、考え始めの谷から脱しやすい。」「イメージトレーニングは過去を都合よく編集し、自分にとってありたい未来を描く能力と言い換えることもできる。具体的なイメージトレーニングのやり方だが、実は私にもわからない。もしアドバイスをするなら、自らの「情動」をしっかりとイメージにつなげることではないかと思う。」「私は言語化が得意だと言われることがあるが、それにはこのイメージトレーニングが影響しているように思う。人よりも身体イメージの解像度が高いらしい。私はこの能力は「イメージトレーニング＋実践＋内省」で強化されると思っている。p97 」「コントロールできるものとそうではないものを分けられないとき、人は無力感を抱く。コントロール出来ないものをなんとか出来ると信じて行動すると、常に思い通りにならない。結果、何をやってもダメなんだという敗北者のマインドが植え付けられるようになる。自信がある人間は、いきなりすべてが出来るようになったのではなく、自分のコントロール出来る範囲でやってみて、そして実際に変化が起こるのを見て自分を説得し、また次の課題に挑戦する。この繰り返しで自信を植え付ける。p103」・言葉について「言葉の粒度は身体の粒度と同じである。「足腰」と表現する人間は、膝も臀部も下腿部も同じに捉えている。足腰を「ハムストリング」と言うこともできるし、「内転筋」と「半腱様筋」を分けて表現することもできる。言葉の粒度によって表現しようとする標的の粒度も異なってくる。粒度が細ければ繊細な表現ができるので、より細かなフィードバックが可能になる。「うまく足腰が使えなかった」という人と「大腿四頭筋ではなくハムストリングの上部が使えなかった」という人では、その後のトレーニングで意識する場所が違う。p151　」「言葉を洗練させるためには、読むか聞くか書くか話すか考えるしかない。どんなジャンルでもいいから本を100冊も読めば言葉は変わってくる。できればどう感じたかを人に話したり、書いてリしてみるといい。　言葉がうまく使えるようになれば、より正確に問題を把握でき、より正確に事実と意見を分けることができ、より正確に自分の感情を把握でき、より正確に改善できるようになる。私の競技人生を支えたのは言葉だったと思っている。p154」・筋力トレーニングについて「筋力トレーニングに限らず、すべてのトレーニングは与えた刺激に対し適応しようとする力を応用している。重たいものを持てば重たいものが持てるように適応し、長い距離を走れば長い距離が走れるように適応する。筋力トレーニングはある程度狙いたい箇所を狙って、そこに刺激を入れて、適応させることを目的としている。これは裏を返せば、どのような動きをしたいのかどこを鍛えたいのかが明確だからできることでもあって、筋力トレーニングをうまくやるためには、自分のやりたい動きがわかっていなければならない。なぜ、ただ走るだけ、競技をやるだけではだめなのか。理由は二つある。たとえば、地面を踏むという行為一つとっても、腹圧を高めて踏むやり方もあれば、膝下のふくらはぎを使って足首関節を強く使って踏むというやり方もある。前者が理想だが、後者の力の使い方でも一応踏む行為は成り立つ。そして最初のうちはこの違いが本人にもよく分からない。このように外から見て実際に競技に必要な動きはできていても、内側を見ると本当に動いて欲しい筋肉が稼働していなくて、まったく出ている力が違うということがよくある。筋力トレーニングはこの本来必要な筋肉に刺激を入れて、そこを稼働させる効果がある。もう一つは、限界値を引き上げるためだ。・・・筋力トレーニングで意識していたことは、早く動かすべき筋肉とそうではない筋肉を分けることだ。私のイメージでは、一人の身体の中でも速筋的なものと遅筋的なものがあり、末端に近くなるほど速筋的で、体幹に近いほど遅筋的だと捉えていた。だから手足では速い動きを意識することはあったが、体幹部分を稼働する場合はゆっくりと確実に動かすことを考えていた。p195」また、オリンピックなどで陸上競技の観戦を楽しむ時にも参考になりそうなことが書かれていた。・骨格と動きについて　才能とは何かと聞かれると、こと陸上競技においては骨格がかなり大きな部分を占める。そして、骨格は努力で変えることができない。肩幅と骨格の関係も走る時のパフォーマンスに大きく影響する。骨盤が広いと、でんでん太鼓の半径が広くなっているようなもので、足を素早く振り回す際に大きな力が必要になる。同じ理屈で肩幅が広ければ少し振っただけで大きな回転エネルギーを生み出せる。同じ運動量でも半径が小さければ早く回転し、大きければゆっくり回転する。だから肩幅が広く骨盤が狭ければ少し肩幅を振っただけで骨盤がくるくる動き、ピッチを生み出せる。反対に、骨盤が広く肩幅が狭ければ、大きく肩幅を揺さぶらなければならない。　ウサイン・ボルトのような身長であれだけの長い足を持っていると本来は足に振り回されて回転数が稼げないと思われていたが、あの逆三角形の広い肩幅と狭い骨盤と、大きく掻くような腕振りで、自分の足を前に引き戻すことが可能になっている。　女子選手がある年齢から急にパフォーマンスが出なくなるのは第二次性徴で骨格が大きく変化するからだろう。たとえばフィギアスケートなど回転系競技は、骨盤の幅が広くなれば同じ力が出ていても回転できなくなるということもあり得る。女性が走る際に腕を横振りにすることがあるが、これも広い骨盤を回転させるために腕を広げることで必要なエネルギーを確保する現象だと私は考えている。肩幅が狭く骨盤が広い人間は足の動きを意識するよりも、腕振りをダイナミックにした方がいい。腕振りの貢献度が大きいからだ。　教科書はどうしても、平均値をとったものになっている。途中まではその通りにして上達するが、理想の動きを求める際には自分の骨格の特徴を理解してオリジナルの動きを作り上げなければならなくなる。人の動きをよく観察し、自分の動きと何が違うのかを考える。この繰り返しで、動きと形の関係が理解されていく。私の経験上、骨格が違う人間の動きを真似したときは、決まってうまくいかなかった。動きは似せることができるのだが、力がうまく入らなかった。どのように力を生み出しているかと、どのような動きになっているかは形状によって相当違いが生まれる。動きは結果でしかない。陸上競技は、言ってしまえば生まれた時に与えられているこの骨格をどれだけ効率よく動かすことができるかという競争だ。身体の構造を直感的に理解するためには、幼少期に多様な身体経験を積んでおくこと、つまり遊んでおくことが大切だと思う。そのベースがある人間は、理屈と感覚のバランスが良く、実際の動きに落とし込むのがうまい。大人になってからはひたすら観察と分析を繰り返すことが重要だ。p185」「戦略が破綻していることにチームが慣れていくと、本当のことよりも信じたいことを重要視していくので、都合の悪い情報を遮断し始める。そして、情報収集も、本質的な議論も行われなくなっていく。私は日本的根性論とは、この願望の目標とターゲットとしての目標の違いがわからなくなり、空気とノリで戦略が決まってしまった状態から生まれると考えている。　目標設定と言うと必ず計画という話が出てくるが、計画を詳細に決めることが良いとも限らない。計画を立てない選手は長期的視野が欠如しがちだが、一方で計画がなければ自由度が大きく日々のトレーニングであれこれ試すので、学びを得やすい。私自身も大雑把に世界の3番以内を目指しながら、計画にあまり拘らず、毎日思いついたことを試行錯誤していた。p221」「敗けた方は必死にこちらを分析する。勝利したチームと敗北したチームでは分析への執着心が違う。分析の精度は疑いの強さによって決まる。勝利したチームは疑いを持つことが難しく、結果分析の精度が悪くなる。成功体験は、この分析への執着心をパーティーの喧騒の中で濁してしまう。こうして、勝利したチームは次回以降誤学習した成功の要因を信じ込んでそれを重視し、いずれ敗北したチームに追いつかれる。p224」「勝利条件から具体策まで落とし込んでいく考え方は、残酷な側面も孕む。たとえば、もし私が100メートルという種目でこの勝利条件を設定していたら、途中でこれでは無理だと判断していただろう。つまり、100メートルで世界の頂点に立つことを目指したら、引退時期が相当早まったと思う。勝利条件はすべてに優先されるから、このようなことが起こる。戦略とは勝利条件という判断軸によって決められた目標のために、具体的にやることを決めるということだ。それは何をやらないかを決めることでもある。　すべては勝利条件から始まっている。勝利条件とは夢であり、欲であり、ヴィジョンでもある。こと個人競技に関しては、勝利条件の設定は自分にしかできない。だから、自分が本当は何をやりたいのか、成し遂げたいのかが不明瞭であればそれ以下の目標や戦略もすべて不明瞭になり、評価ができなくなる。突き詰めて自問し、自分は何を勝利条件に据えるのか、言い換えれば何を優先し、何を捨てるのかがクリアになればなるほど、選択は早くシンプルになり、成功確率は高くなる。p231」「走りは能動的に筋肉を動かしているわけではなく、着地の瞬間に筋肉を固めることで足がゴムのようになり、反発して走る。よく選手が試合前にちょうどいい張りがあるといいと言うが、これは張りがあることにより反発が良くなるからだ。反対に筋肉が緩みすぎているとこの反発が起こらないので、バネがない状態になってしまい速く走れない。マッサージを嫌がる選手が時々いるが、このちょうどいい筋肉の張りがなくなってしまうことを恐れているからだ。また、張りがあり過ぎてもそれはそれで古びたゴムのようなものでうまく反発できないし怪我の恐れもある。私にとってのピーキングの鍵となる部分は、筋肉の張力の調整だった。良い状態の筋肉は、張りがある硬いゴムのような状態だった。　では、どのようなトレーニングを行えば筋肉に張りが出るのか。広義でのピーキングは1年単位で行われる。p235」・科学的思考　「競技者には、科学的思考が必要だ。日本のスポーツに一番欠けているものかもしれない。科学的思考とはシンプルに言えば、ものごとを説明しきろうとする姿勢のことだと私は考えている。　なぜウォーミングアップするのか。最も効率が良いウエイトトレーニングとは何か。そのような問いを立て、すでに説明がされているものであればそれを調べ、もし疑問があれば自分なりに納得のいく仮説を立て、説明を試みる姿勢のことだ。　このような科学的思考を持っているのはやはり研究者だろう。ただ競技者は研究者のように考えることは大事だが、科学者と競技者の違いは理解しておかなければならない。・・・この世界では科学的に証明されていない事実と、ただの迷信の違いがわかりにくい。結果として競技者は、どちらかわからないままに賭けをすることになる。昔、試合前のストレッチは良いとされたが、いまはパフォーマンスが落ちる可能性が示唆されている（まだ議論されている段階ではあるが）研究者と競技者の一番の違いは、何が科学的に正しいのかを追求するか、何が機能するのかを追求するか、だ。研究者タイプから見ると、競技者タイプは思い込みやすく拙速に見える。競技者から見ると研究者タイプは検討が多く、優柔不断な人に見える。実際の競技の現場はこの間にあって、理想は一人の選手の中に両方の人格がいて、適時それぞれの考え方が出てくるやり方だろう。p246」「日本の陸上界はおそらく世界一感覚を重視するが、逆に言えば本質の部分にフォーカスすることが苦手だ。世界に出て、枝葉は適当でいいと感じたと同時に、最も重要な股関節進展や、スタートから30メートルまでの加速はもっとレベルを上げないといけないと感じた。p254」等である。また、為末大さんの競技者時代の映像で強く印象に残っていたスタート前の鉄仮面のような表情にも意味があったことをこの本を読んで初めて知った。

  2021.08.17

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  『パツキン一筋50年』

  【バーゲン本】パツキン一筋50年　パツキンとカラダを目当てに映画を見続けた男 [ 秋本　鉄次 ]価格：990円（税込、送料無料) (2021/8/17時点)楽天で購入金髪女性について、私は今まであまり良いイメージを持っていなかった。それは、もしかすると私の金髪女性に対する憧れの裏返しだったのかもしれないと、この本を読んで思った。私が金髪女優と聞いてまっ先に思い浮かぶのは、シャーリーズ・セロンで、その次がパトリシア・クラークソン、メリル・ストリープ、ケイト・ウィンスレットといった感じだ。キメロン・ディアスというと、大きく好みから外れていたが、この本を読んでその魅力に気付かされた。ただ、この本を読み続けるのは疲れる。知らない女優が次から次へと出てくるので、いちいちスマホで調べなければならない。ならないわけじゃないが、調べずにはいられなくなる。そして、その女優が出てくる映画が見たくなる。だから、手間がかかって、なかなかページが進まない。逆に言うと、長く楽しめる。買って読むべき本だと思う。また、オヤジギャクの連発で、それもまた、過ぎるような気がして疲れる。私は、山スキー界のレジェンドH先生のブログを毎日欠かさず拝見しているが、オヤジギャクはH先生くらいの頻度で使うのが丁度いいと思った。ただ、いかに金髪女優が美しいと言っても、オリンピックに出てくるアスリートを見ていると、そちらの方により魅力を感じてしまう。オリンピックをエロ目線で見てはいけないと、朝日かどこかの記事で、何度も見て理解していたはずなのに、競技に対する興味が薄いため、自然にそうなってしまった。オリンピックは美男美女の祭典のように思える。少年少女から紳士淑女、白人、黒人、アジア系まで、あらゆる国から美男美女が集まってきて、生地の薄いユニフォームを纏って競技に集中しているのを端から見ていると、本人と同じような気持ちで競技のみに集中しろと言われても、難しいなあと、この本を読んで、その理由に気付かされる思いだった。80年前のイギリスなら、強制的にホルモン治療を受けさせられることになったかもしれないし、現代でも、イスラム原理主義を国是とする軍事国家なら、投獄では済まないかも知れない。

  2021.08.17

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  『不倫』

  【中古】老後の誤算日本とドイツ /草思社/川口マーン惠美（単行本）価格：278円（税込、送料無料) (2021/8/17時点)楽天で購入川口マーン惠美さんが美熟女だったので、題名に釣られて借りて読んだ。予想より面白かった。最初は、裕福で世間知らずの絵描きママが、欲求不満を解消するために不倫をしていたのかと、官能小説みたいなことを予想していたが、そうではなかった。熟年の不倫というより本気の恋の話だった。欲求不満を態度や行動で示すのではなく、言葉で示しているところに好感を持てた。この小説の内容は全て、本人が不倫相手に当てた手紙の体裁をとっている。一方的な描写だから、実際、何が行われていたのか不明である。最初はそれに飽き足りなかったが、後半は、だからこそ、一人の女性の心の葛藤というか変化が読み取れて、楽しめると感じた。最終的に、この不倫に関係した人たちは、それぞれ多大な犠牲を払うことになるのだが、お互いは、それ以前より賢く、幸せになったというか、人間が成長したような感じを受けた。最後の1ページを読むまでは。無邪気（ノーテンキ）な日本人よ、白昼夢から目覚めよ／川口マーン惠美【3000円以上送料無料】価格：990円（税込、送料別) (2021/8/17時点)楽天で購入

  2021.08.17

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  『殺人雪稜』

  【中古】 殺人雪稜 長編推理小説 / 太田 蘭三 / 光文社 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】価格：328円（税込、送料別) (2021/8/17時点)楽天で購入子供の頃、毎年春休みに家族でスキーに行っていた越後湯沢がこの小説の舞台ということで、物語に入り込みやすかった。内容は並行して読んでいた内藤みかさんの小説に近いくらいのエロ小説だった。この小説の主人公、山岳推理小説作家の釣部渓三郎というおっさんは、多くの男が望むような、欲望まみれの生活をしていた。その点で『人妻エステ』に登場した浩太と同じであった。男の夢と妄想を次々と叶えているように見える小説の主人公たちの生活は、読んでいて楽しいのである。それにしても、釣部のおっさんはやりたい放題であった。普段は自分の娘くらいの若いガールフレンドと半同棲生活をしているのに、飲みに行った先ではスナックのママを誘い、旅行先ではまた若い女と上手くやるのである。そして、この小説に出てくる刑事二人も、やりたい放題だった。捜査にかこつけて、湯沢の温泉に泊まってスキーをやったり、釣部の家に行って、ねんじゅう宴会しているようだった。それでも結果OKという時代の話なのか。ちなみに、題名と内容は全く関係ないような気がした。

  2021.08.17

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  『人生、ここにあり！』

  人生、ここにあり!【洋画 中古 DVD】メール便可 レンタル落ち価格：2199円（税込、送料別) (2021/8/16時点)楽天で購入この映画は、最近観た映画の中で一番感動した。何に感動したかというと、バザリア法という法律にである。イタリアでは、精神病院を無くして患者を地域に溶け込ませるという法律が、すでに1978年の時点であったという。かつては、精神病患者を一箇所に集めて管理するというのが国の方針だったようだが、それを改め、社会の中で共に生きる道を選んだようだ。その様子は、先日見た映画、『昼下がり、ローマの恋』にも描かれていたような気がする。イタリアと聞くと、現世を陽気に楽しむ人たちの国というイメージがあったが、その気質は精神を病む人たちにまで浸透しているようである。この映画のエンドロールによると、「今日イタリアでは2500余りの社会連帯協同組合が存在し、約3万人の異なるかたちで能力を持つ組合員が働いている」という。元精神病患者たちが社会に溶け込んで生活するために、どのような困難や葛藤があったのか、それを描いたのが本作のようだった。また、精神病患者の定義についても問うているようだった。この映画の主人公ネッロを助けて元精神病患者たちの社会的自立を促すことに貢献したフルラン医師によると、精神病なんてものは精神科医が作り出したまやかしなのだという。精神科医は些細なことを取り上げて問題にし、薬を与えて静かにさせるのが仕事だと思っているという。精神科医だけでなく一般人も、些細なことを取り上げて、薬でどうにかして欲しいと願っている部分があるのだろうと思う。しかし、この映画に出てくる美少女カテリーナは、「あたまのおかしい人と本当にデートするの？」と友だちに聞かれて、「みんなどこかしらおかしいものよ」と言っていた。確かに、細かいところを見れば、人それぞれみんな違うし、自分と違っている部分はおかしく見えるものだ。また、治療に使われる薬の弊害についてのフルラン医師の説明も印象に残った。薬によっては眠気が増し、精力も弱まり、生きる気力がなくなるものもあるという。元精神病患者のニキという青年が、「昔は毎日ごきげんにマスかいていたのに。」と嘆いていたのが印象的だった。彼らがいきなりキレて暴力を振るったり、寝てばかりいたり、ダラダラしているように見えたり、生きる気力を失っているように見えたり、逆に、やけにハイテンションに見えたり、ニヤけていたりする理由が、この映画を見ると、その薬や処方の仕方にあるような気がして、泣けてきた。福祉関連の仕事をしている知り合いに聞いた話によると、日本も精神病患者を一箇所に集めて集団で生活させる方向から、グループホームのような小規模施設を設けて、地域で生活する方針に変わってきているという。ただそれは、財政面の問題でそうせざるを得なくなっているという面が大きいらしい。自立を促す方向といっても、この映画のように彼らの生み出す製品を市場経済の中で活かすのは、非常に難しいのだという。だから彼らは、子供の小遣い程度の賃金で働かされているらしい。

  2021.08.16

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