荒船山
2022年のシーズンオフは、モリちゃんとほぼ毎週、赤城山と榛名山を中心に近場の山へハイキングに行きましたが、今年は荒船山周辺を集中的にハイキングしようと企んでいました。その理由は、春先に読んだ本『酔いどれクライマー 永田東一郎物語』に出てきた、大正時代後期から昭和初期にかけて活躍した登山家・大島亮吉氏の随筆『荒船と神津牧場附近』に影響されたためです。随想の中で大島氏は、「こんなつまらないところだけれど、私にもひとつこんな、何度でも行って少しもあきないというところをもっていることはうれしい。そして私がこのあたりに時たまの遊行をなすことは、じつに私にとって山への愛を高めるひとつの手段なのだ。」と書いています。「新編」山紀行と随想 (平凡社ライブラリー) [ 大島亮吉 ]価格:1,540円(税込、送料無料) (2023/6/22時点)楽天で購入荒船山は家から一番近い登山口まで1時間程度で行ける山ですが、私はこれまで一度も行ったことがなく、他の山から眺めて、「えらく平らだな」と思うことはあっても、山頂に行ってみたいと思ったことはありませんでした。内山峠を通過する時、その岸壁は何十回も見ているし、頂上には木がモサモサ生えているので、山頂が平らといっても飛行場のような平原ではないだろうし、そうなると、その平らさは実感できないだろうと思ったからです。神津牧場についても同様で、中山峠の道の駅で売っている神津牧場のソフトクリームは食べたことがありますが、わざわざ現地に行ってみたいと思ったことはありませんでした。牧場に行くなら、実家から自転車でも行ける距離に長坂牧場がありますし、そこのヨーグルトは絶品で、それよりうまいものは望んでいませんでした。しかし、この随想を読んでから、神津牧場にも行ってみたいと思うようになりました。私も大島氏のように、搾りたての濃い牛乳を一気飲みしてみたいと思いました。「ニュームのバケツから、その搾りたてのままを厚手のガラスの大コップへ一杯になみなみと注いでくれた牛乳の、なんという新鮮さ、なんという芳醇さ、冷えた身体に生あたたかい牛乳のほんとうのうす甘い味をもって、のどをぐいぐいとおるときのうまさ。 ああ、美しい、きよらかなこの信州境いの山上牧場の春浅い朝に飲む、この芳醇甘美な一ぱいの牛乳!私は都会にいては米のとぎ汁みたいな牛乳は飲まない。けれどこの牧場へやってくると、いつも毎朝、毎夕絞り立ての牛乳を、二合ばかりはいる大コップに一杯ぐっとのむ。」現在、私は豆乳ばかり飲んでいますが、もともと牛乳が大好きでした。数年前まで、一日1リットル以上は牛乳を飲んでいました。朝でも夜でも、喉が乾いたら牛乳を飲み、パンもご飯も牛乳がお供でした。牛乳を飲むと心が落ち着く感じがしたので、外出先でもパックの牛乳を飲むことが多く、山へ行った時などは長期常温保存ができる缶の牛乳などを飲んでいました。家の冷蔵庫には常に2リットルのストックがないと不安で、いわば牛乳中毒だったのかもしれません。現在も豆乳は常に6リットル以上ストックを持ち続けていますが、豆乳の消費量は一日500ミリリットル以下です。豆乳を飲まないと落ち着かない、ということもありません。ようやく、乳離れができたようです。牛乳のことはともかく、これから秋にかけて荒船山から神津牧場周辺を歩いてみたいと思っていたところ、テレマークの師匠からタイミング良く、立岩から荒船山へのハイキングのお誘いを頂いたので、ご一緒させて頂きました。当日は、南牧村の星尾にある立岩登山口を8時頃出発し、直登コースから立岩のコルに登り、尾根を少し戻った東立岩に寄ってから、標高1265メートルの西立岩で休憩を取りました。東立岩から南側の展望は西立岩より良かったです。下の写真はコル手前のトラバースです。その手前の鎖場が、今回のコース上で一番長かったような気がします。立岩から荒船山南端にある経塚山までの尾根は、一部にヤセ尾根もありますが、危険な箇所はありませんでした。ただ、黒滝山への分岐手前の尾根を西側から巻いている途中で踏み跡が不明瞭になり、少し迷いました。その後、荒船山の最高点、標高1422メートルの経塚山で少し休んでから、荒船山の大地を北に向かってスタスタ歩き、艫岩展望台でお昼にしました。途中、クリンソウの群生地があり、クリンソウを見ながら湿地帯の堺に沿って、少し東側に入りました。山頂大地は微妙にうねっていて、樹木が濃く茂っているので、平原といった感じではありませんでした。しかし、艫岩から北側の展望はなかなか良かったです。浅間山と黒斑の下あたりに見える若干薄い緑の傾斜地が神津牧場なのでしょうか。こちらも、期待していたような天空の平原という感じではないようでした。山腹をくねった国道254号線を長野県側に辿った内山トンネルの真上には平らな場所がありましたが、よく見ると太陽光パネルが敷き詰められていました。科学の力がこんな僻地も浸食しているようでした。大島亮吉氏が訪れていた昭和初期とはずいぶん景色が変わってしまったようです。艫岩展望台で30分ほど休憩した後、経塚山入り口まで戻り、そこから往路と別れて、星尾峠に向かいました。星尾峠から星尾川の右岸コースを辿って登山口に戻りました。左岸コースは荒れているとあったので右岸コースをとりましたが、右岸コースも崩落した箇所が多数あり、何度かルートを外れました。田口峠分岐から登山口まではコースタイムより時間がかかったような気がしました。初めての荒船山は、実際山頂に行ってみると、思った通りというか、思ったより平らではありませんでした。ハイキングは立岩の方が面白かったです。さらに、立岩登山口に向かう途中にある南牧村と南牧川の景色の方が印象深かったです。酔いどれクライマー 永田東一郎物語 80年代 ある東大生の輝き価格:1,980円(税込、送料無料) (2023/6/22時点)楽天で購入