プログレッシブ・ロック 第20回 【初級編】 Pink Floyd 新作「永遠 (TOWA)」Part2
日本生まれの音楽ジャンル Progressive Rockプログレッシブ・ロックを聴いてみましょう!第20回【初級編】『Pink Floyd 新作』Part2永遠 (TOWA)The Endless River (2014)まさかの前回の続きです単に 栄えある第20回を ピンク・フロイドで占めたかったという理由からでブログでは 動画リンクとアフェジャケ写は共存出来ないという 大人の事情から今回はアートワーク編として登場しましたそれでは ピンク・フロイド独特のジャケットを観賞しながらその音楽性を探ってみる事にしましょう△▼ △▼ △▼The Endless River - 『永遠(TOWA)』 (2014)(David Gilmour, Nick Mason, Richard Wright)ピンク・フロイド15枚目のオリジナルアルバムにして 前作から20年ぶりとなり故リチャード・ライト追悼盤としてリリースされた最新作です一曲を除いて 全曲がインストゥルメンタル作品でそれらは前作 「対」でのセッションを纏めたもので構成された性質上純然たる新作とはやや趣が違う事から 早くも 問題作として話題となった作品です本作のアートワークを担当したのは これまでフロイド作品を手がけてきたデザイン集団「ヒプノシス」の故ストーム・ソーガソンから同ヒプノシスのメンバーで ストーム・ソーガソンの盟友オーブリー・パウエルが担当し今回のビジュアルは 18歳の気鋭アハメッド・エマッド・エルディンの作品を基にして作られ雲の海をボートで漕ぎ進むという 非現実性を帯び 天国をイメージする様な如何様にも解釈できるミステリアスな いかにもフロイド的なビジュアルとなりました△▼ △▼ △▼The Division Bell - 『対』 (1994)(David Gilmour, Nick Mason, Richard Wright)Marooned - 『孤立』 収録アルバム2,033円(税込)1,883円(税抜)14枚目のオリジナルアルバム「コミュニケーションの欠如における対立」をコンセプトにベルリンの壁が崩壊後の世に問う問題作として話題になった作品です本作のアートワークを担当したのはデザイン集団「ヒプノシス」のストーム・ソーガソンヒプノシスは ミステリアスで 奥の深い アート・ワークで知られる音楽アルバムのジャケットに芸術性をもたらした 元祖的存在で殆どのフロイド作品を担当して来たデザイン工房ですこの対になった巨大な顔のオブジェは 本作のコンセプトに則ったもので観る者の解釈に委ねる いかにもヒプノシスらしいデザインとなりました △▼ △▼ △▼A Momentary Lapse of Reaso -『鬱 モメンタリー・ラプス・オブ・リーズン』 (1987)(David Gilmour, Nick Mason)Learning to Fly - 『幻の翼』 収録アルバム2,015円(税込)1,866円(税抜)13作目のオリジナルアルバムで中心人物だったロジャー・ウォーターズ脱退後 新体制で制作された作品ですこの遥か彼方まで並べられたベッドというビジュアルはフロイド独特の 非現実的世界を表現したものでこの様なヒプノシスのデザインは ピンク・フロイドそのものと言っても良い程のサウンドとビジュアルが 他に類を見ない程一体化した印象がありましたこのベッドの写真はCGの合成では無くイギリスのデボン州ソーントン・サンドの海岸に実に700位上ものベッドを実際に並べたものでジャケットを良く見ると セッティングしたスタッフ達の大量の足跡が確認出来ます撮影当時 ソーガソンは、ベッドを並べ終えた後 急な雨に遭いベッドを退避させられる羽目となりその後再びベッドを並べた事を振り返り「悪夢だった」と話していたそうです△▼ △▼ △▼The Wall - 『ザ・ウォール』 (1979)(Roger Waters, David Gilmour, Nick Mason, Richard Wright)『アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パート2)』収録アルバム2,890円(税込)2,676円(税抜)11枚目のオリジナルアルバム全世界で空前のレコードセールスを記録した ロック史に置いても歴史に残る名作で世界で最も売れた2枚組アルバムとしても知られる作品ですヒプノシスから離れ 風刺漫画をモチーフにした新たなアートワークはこれまでの現実の中の非現実性を描いて来た 浮遊感漂う様なものとは異なり白い壁に 血文字の様に描かれたタイトルからは世の風潮に物申す ピンク・フロイドの過激なまでに毅然とした姿勢が現れた問題作となりました△▼ △▼ △▼The Dark Side of the Moon - 『狂気』 (1972)(Roger Waters, David Gilmour, Nick Mason, Richard Wright)Money - 『マネー』収録アルバム2,043円(税込)1,892円(税抜)フロイド8枚目のスタジオ・アルバムにしてロック史に残る名作プリズムの光をモチーフにした シンプルにして深いイメージのビジュアルはピンク・フロイドのステージ独特のライティング効果で通称 「ライトショー」と呼ばれるスポットライトワークを モチーフにしたデザインで「シンプルで客観的で正確な何か」というリチャード・ライトの言葉からインスパイアされたとの事でしたこのプリズムの光のイラストは レコードの見開きジャケットを利用した表と裏が繋がったデザインになっており内ジャケットは 7色の光の一部が音声波形を取るという シュールなアイデアが盛り込まれジャケットの表裏を交互に並べると 連続的なデザインが形作られる様に工夫されていましたこの様に ある種のアイデアや誇張によって 単純でシンプルに作られたものが刺激的なアートワークへ変貌して行く仕掛けも ヒプノシスならではの事でした△▼ △▼ △▼Ummagumma - 『ウマグマ』 (1968)(Roger Waters, David Gilmour, Nick Mason, Richard Wright)『Careful with That Axe, Eugene - ユージン、斧に気をつけろ』収録アルバム2,851円(税込)2,640円(税抜)4枚目のオリジナルアルバムで 1枚目がライブ、2枚目が各メンバーのソロという方向性を模索していた時期の 実験的な側面が大きな作品です額縁の下にはなぜか55年のミュージカル映画「恋の手ほどき」のサントラ盤が置かれておりますが無限鏡の様な デザインは、庭のメンバー達と額の中のメンバー達をローテーションして入れ替えて心理学的な無限の逆行を 写真で再現する意図で作られ遠近を付ける場合 理論上は無限に後退できるはずが 実際には限りがあるというジレンマを題材に額の中に段階的に小さくプリントされた写真をモンタージュして行った作品との事でした△▼ △▼ △▼さて、ヒプノシスのデザインは写真をコラージュしたり 一連の模様を連続的に並べるリアルでありながら 非現実的な 浮遊感漂う特異なビジュアルに特徴がありそれらは一貫して 単純なイメージやアイテムを深い意味をもたらすメタファーや象徴へと変貌させるというコンセプトの下で様々な創作的工夫を施し 生み出されたものでした思うにヒプノシスが作り出すイメージとは同じ人間でありながら 一般人が持ち得ない カリスマ的アーティストが持つ巨大なオーラの様な目に見えない 物理を越えた力の根源をあり得ない物体を置く事の不条理感やコラージュによって非現実的光景を生み出す 違和感を利用して再現しようとしたものなのかもしれません■ というわけで いかがでしたでしょうか。芸術の秋にはピッタリな、食欲の秋にはお腹いっぱいな 更新となった事と思いますさて 次回は一体 何が 更新されるでしょうか それではごきげんよう