映画レビュー 『ノーマ・レイ』 女性の自立心を爽やかに描いた社会派ドラマ
女性の自立心を爽やかに描いた社会派ドラマノーマ・レイNorma Raeアメリカ(1979年9月)119分■ 監督 マーティン・リット■ 出演者 サリー・フィールド/ロン・リーブマン/ボー・ブリッジス/パット・ヒングル バーバラ・バクスレー小企業が大企業に立ち向かい 弱者が強者に打ち勝つ熱血逆転魔球系ドラマが近年人気を博していますがこうした内容のドラマは 過去にも多数作られており描き方としての器が幾分現代的になったものの勧善懲悪という内容にさしたる代わりはありませんつまりこうしたドラマが人気を博す理由はブラック企業撲滅に動き出した 近年の政府の方針がポーズなのかどうかの真意はさておき世の中のバランスが大きく変わりつつある状況と言ったその様な 社会風潮に呼応した 流れの方に背景がある様です例えば、大企業や政治の不正腐敗が次々と発覚し 社会問題になった70年代はその殆どが 巨大な権力を駆使して罪を逃れる様を国民が目の当たりにした時代でしたそうした強者が弱者を踏みにじる図式を心底味わうと、作られるドラマも描かれる敵が、怪獣、秘密結社と言った仮面ライダーやウルトラマンの様なヒーロードラマなどの敵対勢力が実感の伴わない 設定上の悪を叩く 虚構な痛快活劇だったり正義が負け社会悪に恫喝するのみで終わる様なものが多かった様ですハリウッドの場合も、 ベトナム戦争の敗戦やニクソン・ショックやウォーターゲート事件においての 政治不信で大国神話が崩れ去り アメリカが自信を喪失していた時期には(71)『フレンチ・コネクション』(78)『ディア・ハンター』などの後味が悪いものや 現実味の高いものがヒットした様ですその後、武力介入を擁護する急進的 新保守主義的な政策が推進され再び強いアメリカを取り戻しつつあった70年代後半から80年代にかけては過去を乗り越えて新たな一歩を踏み出す機運が国内でも高まり(77)『スター・ウォーズ』の様な 正義が勝利する勧善懲悪作品や(79)『地獄の黙示録』の様な 封印したい歴史を顧みる様な作品がヒットしショービジネス界に活気が戻って行きました殊更それを望んだ訳では無く、どの国、どの時代においても社会で話題になっている様々な事柄に対して呼応した様な内容の作品に 興味が向く風潮は変わらない様です例えば今、世界で勃発している大国が圧倒的な力で小国を弾圧する様子を視点を変え、その真逆の国内に大きな問題を抱え国民の恫喝を抑えきれない政府のなりふり構わない行動という図式で捉えると弱者が強者に泣き寝入りしない内容がドラマとして作られる日本のブームとは図らずも、世界で同時多発的に起こっている 時代の大きな波に呼応していると考えられなくも無い点が、興味深く感じる所です一方で、大国、大企業といった存在とはそもそも一個人の集まりで成り立っているものと捉えると近年の風潮とは集団という、総意無くして存在し得ない集まりの意味を現代を生きる私達一人一人がその一員として今一度、問われている時期に来ている現れと言えるのかもしれません。さて、今回は一作業員に過ぎない無学の女性が、労働組合から派遣されてきた人物との出会いを通して人間的成長を遂げ、企業に立ち向かい労働組合設立を勝ち取るまでを激しく、そして爽やかに描いた感動作 『ノーマ・レイ』をご紹介いたします-STORY-アメリカ南部の紡績工場に勤める女工ノーマはだらしの無い性格の低所得者だった。そんな彼女の家にルーベンと言う男がやってくる。彼は全米繊維組合から派遣された労働組合作りの活動家で、彼女の働く工場に組合を結成するためにやってきたと言う。何とは無しに彼との交友を深めて行くノーマだったが、彼に感化され次第に組合結成に協力していく。-解説-結婚し主婦となり、それ以上を目指すことも無く理想も目的も持たなかった無学な主人公ノーマ(サリー・フィールド)が労働組合から派遣されて来たルーベン(ロン・リーブマン)との出会いを通して労働組合運動に関わる事で女性として人間としての成長を描いた感動作ドラマです労働組合が樹立されるまでの 苦難を描いた作品ではありますが本作の柱は 主人公ノーマの人間的成長を 組合設立運動とリンクさせて爽やかな女性映画として描いた所にあります本作の秀逸な所は、主人公ノーマと組合から派遣されてきたNY育ちのインテリのルーベンとの関係を 男女の関係にしないで 人間の関係として描いている所で映画が進むにつれ、ノーマがルーベンの考えの広さに影響されルーベンの方も貸した本をお菓子で汚されそうな無学な女という印象しか無かったノーマから天性の明るさと 生きる強さに影響され互いに人として認め合いながら やがて強い信頼関係が生まれるまでになりますあの映画史に残る 爽やかなラストの感動もそのように描かれた作品だからこそ得られたものだと思います■紡績工場のオートメーションに綿が舞う映像をバックにアカデミー主題歌賞を受賞した 川を緩やかに流れる様なイメージのロマンティックなバラード曲が終わると一転して自動織機の轟音が響き渡り 一気に現実に引き戻され本作の舞台となる 労働環境がいかなるものか夢と現実がどれ程 絶望的に違うのかその差異を雄弁に物語るオープニングで映画は幕を開きます人々を牽引しまとめ ずば抜けたリーダーシップを発揮する主人公が困難と立ち向かい やがて目的を達成する といったこれまでの自己啓発ドラマの定番の内容にはしないで本作が、子持ちのシングルマザーでありまるで男の様に仕事をこなし、上司にもモノ申す タフな所を持ちながら無学で男にだらしが無い、どちらかと言えば ダメな人間などこにでも居る様な女性を主人公に据えたのは夢は到底掴めないと言わんばかりの心底現実を突きつける様なオープニングを見せ付けた後夢も希望もそれを叶える強い信念も力も持っていない少なくともそう感じている様な 自分に似ているかもしれない主人公が様々な苦難を経て 人間として、女性として、母親としての成長を通して世の中には ものの見方を変えて、一歩進むだけで誰にでも掴めるものがあるという事を伝えたいというそんな製作者のメッセージが込められた作品だからなのだと思います一方、街で唯一の働き場である紡績工場という立場を強みにしていいように搾取している会社に対してそんな現実を全く知らないで低賃金で劣悪な環境下で労働を強いられて来た従業員達は組合運動に加入するやいなや あからさまな嫌がらせをして来る会社側に対して従順にするしか道が無いと諦めてきましたがやがて主人公ノーマの 身を挺した行動に共鳴しあの有名な『UNION(組合)』ボードを掲げる場面で描かれた様に心を一つに団結しますその後映画は、組合樹立を勝ち取るまでの経緯は描かず唐突に組合設立選挙の場面に飛びますがそこには夢も希望も諦めた者など一人も無く組合設立の受理を信じる願いで一つになった作業員達で 画面は占められますこの様な急展開も、クライマックスで主人公ノーマがルーベンと共に工場の外で部外者として描かれるのも社会派の映画の器を持ちながら、映画のテーマはそこには無いという本作の秀逸な脚色の為であり、本作の爽やかな観賞後感はそうして生み出されたものでも あったのです■本作が制作された同時期にヒットし アカデミー作品賞を受賞した(79)『クレイマー、クレイマー』の場合も離婚をテーマにアメリカの社会問題を取り上げた作品ですがこちらの場合にしてもヒットの理由が、この時代の最大の感心事を物語として描いた事にありヒットドラマや映画とは 社会を映す 鏡であるという考えから現在日本でブームになっている 逆転劇作品がヒットしている理由も社会のルールが変わりつつ有る事の現れと言えるのでしょう★★★楽天エンタメナビ★★★「女性の自立心を描いた社会派ドラマ」を楽天エンタメナビで見る※リンク先 参考になった は、ランキング用クリックボタンです。洗濯機じゃないよっつキットこれ位~のパンがっつ出来るんでしょおーっつ?(※出来ません)ノーマ・レイ 【DVD】価格:2,768円(税込、送料込)Panasonic ホームベーカリーSD-BH106-PW【1斤タイプ 】<ピンクホワイト> 価格:16,329円(税込、送料込)