映画レビュー『SPACE BATTLESHIP ヤマト』未知の分野で単騎世界へ乗り出す快挙
未知の分野で単騎世界へ乗り出す邦画の快挙SPACE BATTLESHIPヤマトSpace Battleship YAMATO日本(2010年)138分■ 監督 山崎貴■ 出演 木村拓哉/ 黒木メイサ /柳葉敏郎/ 緒形直人【再更新 完全新作レビュー】- INTRO -2010年の元旦 産経新聞 関連誌上で 第一面を飾ったのは一億もの宣伝費を掛けたと言われる 元旦広告展開の一環でSMAP木村拓哉扮するキービジュアルによるSPACE BATTLESHIP ヤマトの 全面広告でしたこの実写版ヤマトは極秘プロジェクトとして進行し木村拓哉が主人公古代進を演じる他は この時点で何のアナウンスも無かった所が邦画としては前例の無い徹底さで特にデスラー役のキャスティングを巡っては 毎日の様にネットで話題に上がり2009年12月12日『宇宙戦艦ヤマト復活編』公開を皮切りにヤマトイヤーと名打ったこの一大プロジェクトは ヤマトファンのみならず否応なしに盛り上がって行くのでしたさて実写化といえば 現在ハリウッド版宇宙戦艦ヤマトの企画が進行しており(95)『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー脚本賞を受賞し(93)『パブリック・アクセス』(00)『X-メン』ブライアン・シンガー監督作や(08)『ワルキューレ』(14)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』トム・クルーズ主演作で脚本を担当し(12)『アウトロー』(15)『ミッション・インポッシブル5』では監督を務めた鬼才クリストファー・マッカリーが監督し『ミッション・インポッシブル』シリーズ『スタートレック イントゥー ザ ダークネス』を手がけたスカイダンス・プロダクションズ が制作する事が決定しており『スター・トレック・イントゥ・ダークネス』規模の制作が予想され早くて2018年頃の公開を目指して進行中とのニュースが話題となっております主人公も トム・クルーズ、ブラッド・ピット級のキャスティングが予想されコレこそヤマトファンのみならず 洋画ファン必見の巨大プロジェクトとして期待感が否応無しに盛り上がるスター・ウォーズに次ぐ 個人的にも今年一番の話題と思います只、これには手放しでは喜べない落とし穴があって・・・実はこのハリウッド版、原題にはヤマトの三文字は無く尚且つヤマトのアメリカ放送版『Star Blazers』では戦艦の名前は「ヤマト」ではなく 「アルコ」だった事からそもそも『宇宙戦艦ヤマト』では無くなる可能性があり「戦艦が大和でなくミズーリ」「アイオワ」「アリゾナ」果ては「エンタープライズ」と アメリカ仕様になると言う内容のまことしやかな冗談ネタが拡がる他そもそも 「あの」ヤマトのフォルムになるのかどうかも危惧される所で更に、制作発表後も『AKIRA』『攻殻機動隊』などの様に企画そのものがたらい回しになったり最悪は 企画そのものが頓挫する可能性もあり期待感と不安が入り混じった情報で ネットが錯綜しておりますがここは続報に期待したいと思います☆という訳で、 特撮マンの経緯を持ち 初代アニメ世代の『ALWAYS三丁目の夕日』『BALLAD名もなき恋のうた』 の 山崎貴 監督による初代アニメ世代を唸らせるには 十分な仕上がりとなり同時に 『宇宙戦艦ヤマト』の実写化に対して ファンによる物議の的となった『SPACE BATTLESHIPヤマト』をご紹介します-STORY-時は2194年謎の異性人ガミラスによる遊星爆弾の攻撃は地球に壊滅的な打撃を与え人類は滅亡の危機に瀕していたそこへ惑星イスカンダルからのメッセージが届き偶然居合わせた古代進(木村拓也)は地球最後の希望宇宙戦艦ヤマト乗組員に志望する-解説-■ 本作は邦画でも破格の制作費を導入し地球を滅亡から救う為 地球の敵ガミラスの攻撃をかわしながら前人未到の宇宙の航海に挑むヤマトのクルーの活躍を中心に描いておりハリウッドに引けを取らない 渾身のVFX映像と話題の主演俳優達の体当たりな演技が見所の本格SFアクション映画で歴史的大ヒットアニメ作品 『宇宙戦艦ヤマト』の実写化に相応しい観る価値は十分ある作品に仕上がっております【ガミラスの描写を廃した潔い構成】アニメ版のドラマの大きな柱の一つとして描かれたガミラス 側の描写を一切排し一時は誰が演じるのか話題になった デスラー総統役 はありがちな日本人大物俳優や人気海外ドラマの一般的には知名度の低い俳優を起用する様な無粋な配役になる事を避けて物議を醸す事を承知の上で アノ様な形で描写しアニメ版でのクライマックスとなる 七色星団の戦いなどの様な知謀と戦術の限りを尽くす戦闘場面などの松本零士作品に見られる マニアックなミリタリー系アクションとしての側面やイスカンダルのスターシアと地球人とのロマンスを描いた「宇宙戦艦ヤマト」を語る上で 重要な愛とロマンと言った要素も カットしてイスカンダルへ向かうヤマトの描写のみに集中した構成はTVシリーズ全26話のダイジェスト作品になる事なくSF性の高い映像化を目指した世界を焦点に定め制作された作品に仕上がったと言えますし十分に予算が与えられた 邦画の話題作にありがちな描写の多様性と製作者達の多種多様な思い入れが交差して引き起こす構造的破綻を避ける目的を重視したという点に置いても只単にアニメを実写で再現した作品とは違ったある種の潔ぎ良さを感じる邦画の枠を越えた意欲作と言えるスケールを感じました又近年の大ヒットSFシリーズ「スター・トレック」やSFTVシリーズ「バトルスター・ギャラクティカ」などのハリウッド作品の影響が随所に見られる画面構成や演出はSFアクション映画ファンでアレば ニヤニヤしながら愉しめる内容になっております【邦画の脆弱性の問題】しかし一方で、本作をを支える脚色と演出は邦画作品全般の傾向である 特徴的な共通の脆弱さを持つという問題を抱えた内容を持つ作品でもありました■漫画が原作ゆえに 合理的に無理がある設定を指摘する意味は無いとして集団的自衛権が問題になっているご時世ではありますがそれを考慮した論理で 映画作品を語る事は些か主旨がずれているのであくまで映画の演出効果の是非を指摘する視点に留め解説している点をご考慮頂きたいのですが内容がSFとは言え 戦争 を描いている以上最低でも乗組員は 軍人 に見えなければならないという 映画のセオリーを本作は満たしてはおりません劇中の特殊部隊の隊員は仮にも選び抜かれた先鋭のはずが動作が混沌として若いマフィアの集まりの様であったり艦橋の士官達のやり取りは訓練を受けた 軍隊の士官 の動きと言うよりはまるで 会社の社員 の様であったり と近年国内でも中東の紛争事件が大きく報じられ実際の戦闘の苛烈さを日々眼にしているこのご時世に世界を目指す以上、この様なチグハグな演出で占められた作品を自国に軍を持つ海外の観客が鑑賞した時の反応は絵面を世界レベルへ持ち上げる事に躍起になるよりも真っ先に考慮すべき懸案事項だったはずで世界を目指しながら国内への考慮に終始した 制作側の認識不足を感じる日本独特の根深い問題が今後の課題として残る印象を強く持ちました【ジャパニメーションの弊害】又冒険アクション物には欠かせない要素の主人公とヒロインのロマンスは極めてアニメ的でヒロインが歯を出せば愛らしいという主旨の演出は まだしも人類存続を賭ける戦いに 明日をも知れない運命で挑む戦士達の物語に相応しい 魂が震えるようなロマンス を描くのが脚本の腕の見せ所 という事なのですが既にコミックスやゲームではお馴染みとなった世紀末な世界というポピュラーな世界観の設定の作品にわざわざ既視感と親近感を作るフックの一環として砕けた人柄という ありがちな人物設定を施し漫画が原作の月9ドラマの範疇を越えない内容となり地球の滅亡という絶望的状況を打破する様な狂気にも近い気概と生命力を持った人物達による驚異に満ちた未曾有のドラマ展開は見られませんでした又絶滅の危機に貧した地球の場面も スター・トレックのボーグ艦内部の様な既視感ある 衝撃度が不足した 未来世界の描写は まだ良いとしても災害時の 整然とした日本人の行動が世界の称賛を得た国民性があるからと言って地球が滅亡する というもはや整然さを保っていられる段階では無いという状況下で何の暴動も略奪も起こらないかと言って深い絶望感が占めている訳でも無い不自然な市民描写に配給品をせしめようとする様な 信頼出来ない人物達と同室を共にするという ちぐはぐしたプロットの掘り下げ方の不足が目立った様に感じましたアクション映画という点においても 国民的アニメ作品の実写化という事でアニメと実写の境界を揺れ動きながら熟考する余りアクション映画に不可欠な、テンポある流れ を見失ったという典型で日本が制作する映画作品独特の傾向の多くが問題点として現れた今後の課題が多い 作品でもある様に思いました■ 80年代をピークに 東宝特撮映画で黄金期を迎えた邦画のSFはバブル経済の到来で 国民の関心が社会生活に向いた事で森田芳光、伊丹十三作品の様な日本ならではの様式を独自の着眼点で描いた作品に人気が集中し直接生活に関係し無いSFはやがて支持を失い 世界に大きく差を付けられます近年のSFアニメ実写化作品の リスペクトを感じ無い失敗作を見る限りでも未知の分野にすらなり果てた感がありますが映画の内容さながら単身世界の大海原へ乗り出し前例の無いジャンルに挑んだ本作はそれだけで評価すべき作品だと思いますこの作品においては 近年増えつつある傾向にあるも邦画ではさして開拓されていない未知の分野であるSFに企画当初からの様々な困難と問題を乗り越え、企画達成まで果敢に挑んだ関係者諸氏に最大の敬意を表したいと思います【Blu-ray】SPACE BATTLESHIP ヤマトプレミアム・エディション4,665円(税込)4,320円(税抜) 送料無料 (2016/12/16時点)【Blu-ray】宇宙戦艦ヤマト2199 Blu-ray BOX(特装限定版)28,350円(税込)26,250円(税抜) 送料無料 (2016/12/16時点)【Blu-ray】宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 16,149円(税込)5,694円(税抜) 送料無料 (2016/12/16時点)