昭和の時代にタイムスリップする甘味処
穏やかな陽気に包まれた午後の昼下がり某駅前にある商店街を、当てもなくブラブラと歩いていたそこの商店街は、いかにも昭和の時代を感じさせるレトロ感が漂っていたおふくろの味的な料理がたくさん並んでいる惣菜屋、自分の眼にはどうみてもガラクタとしか思えない怪しいものばかり並んでいる骨董屋、まだ昼過ぎだと言うのに常連客で賑わっている大衆酒場…それから、煎餅屋、豆腐屋、宝飾品店、洋品店など、良くも悪くも時代に取り残されたような古い店が軒を連ねているその古臭さが自分は気に入って、懐かしい匂いを手繰るようにしてワクワクしながら見て回ったそんななか、一軒の店が目に留まったかなり年期の入った店構え店の前に置かれたショーケースを見ると、どうやら甘味処のようだあんみつ、パフェ、プリン、おにぎり、焼きそば…まるで埃でもかぶっているかのように薄汚れた食品サンプルたちクリームソーダにいたっては色が焼けてしまい、セピア色をしたそれは、もはやクリームソーダではなくなっているその廃り具合が長い年月を物語っているかのように思えた店に入るにはちょっと躊躇ってしまうような空気感が漂っていたが、歩き疲れていたし、それよりもこの店に何故か心惹かれるものを感じ、恐る恐るガラス戸を開けた甘味処ということではあったが、店のなかは下町の定食屋といった感じだったそれにしても古臭い!いや、年期が入っているといった方が正しいのだろうか木目調のテーブルに、薄い革が張られただけのパイプ椅子…壁は長年の月日の味が滲み出ているのか、茶色に焼けている飾り棚には、鮭を銜えた熊の木彫りの置物があるかと思えば、すぐその脇には苔だらけで中に何が泳いでいるか判らない水槽が置かれていたりと、怪しさいっぱい!店内の隅には、今は使われていないレジが無造作に置いてあって、おおよそ客を招き入れる気があるとは思えないような内装であるそんな甘味処でも、自分以外にすでに親子4人の先客がいて、賑やかな声が店内に響いていた一昔前の喫茶店でよく見かけたメニュー表に視線を向ける軽食もできる甘味処だけあって、意外と種類はあるチョコ、パイン、バナナと、パフェだけでも数種類あるほどしかもその値段が安い店だけでなく、価格設定も昔のままのようだカウンターの奥から店主らしき男性が水を持ってきたので、バナナパフェを注文した一体どれほど待ったことだろうか…少なくとも20分は経ったはずバナナパフェごときで、どうしてこんなに待たされるのだろう?待っている間手持ち無沙汰だったので、色々と観察していたどうやらこの店は店主ひとりで切り盛りしている様子それにしても、自分以外の客は親子4人だけこれほど待たされる理由がわからないひょっとして、バナナパフェみたいなハイカラなメニューのオーダーが入ったの久しぶりすぎて、作るのに困っているとか!?あまりにも待ちすぎて、普通ならイライラしそうなものなのだが、まるで昭和の時代にタイムスリップしたようなこの店のなかにいると、不思議と苛立つこともなく、まったりとしていたようやく出されたバナナパフェ450円と、パフェにしては安いなぁ…と思ったけれど、実物を見て納得!うん、妥当な金額かもしれない自分が子供の頃食べたパフェと言えば、こんなガラスの器に盛られてたような気がするいたってシンプルなバナナパフェ不思議なもので、パフェからも昭和を感じた味は普通可もなく不可もなくこの毒々しいほどに赤い色をしたチェリーなんて、久しぶりに見たかもしれないこれだけのパフェ作るのに、なんでこんな待たされたんだろ?う~ん…謎だ…ま、ゆったりとしたひとときを過ごせたからいいけど