伝承される語り芸(浪曲師天中軒の男)
日本の伝承芸能というと皆さんはどのようなものを想起するのでしょうか?もう少し、枠をせばめてその中で「語り芸」というと何を想像しますか?先日、友人である浪曲師の「年季明け」公演が浅草「木馬亭」で行われた。僕の記憶が確かならば、5代目天中軒雲月師のもとに弟子入りしたのは5年近く前?(今更ながら、コーヒーカップを片手に「俺は浪曲を通して語りそして唸る」と語っていた彼の表情をありありと思い出すことが出来る・・そして、その後、正式に弟子入りしたと聞いた時は少なからず驚くことになった)師を中心に「その一門」が舞台に上がった時のある緊張を伴う「格式美」そして失われてはならない「礼節」表面的な形式ではない「心の在り様」伝承芸能には踏襲すべき「様式美」「手法」が必ず存在する、(フラメンコにもそういう面はありますよね?)そしてそれらを学ぶと決めたならば好むと好まざるに関わらず「古典」を学ぶ必要が出てくる、そのうえで自らの欲する表現へと昇華すべく学びと共に「構築」と「解体」を生涯繰り返すことになる。「年季明け」とはそういった断固たる決意と責任の元に歩み始める「儀」なのであろうかかつてより「語り」は、その「物語」を通じて人と人を繋いできた。彼には「語るべき物語」があり、そして、心の奥底からそれらの共有を希求する強い気持ちがある今後、彼自身が持って生まれた「生来の声」を通じてどのような(或いはどのように)物語が語られていくのか、静かに見続けたい