屋根の上のバイオリン弾き
良い映画だった。ウクライナの農村に住むユダヤ人達がロシア政府によって迫害されるストーリーと、自由恋愛はおろか男女が一緒に踊ることすら許されない因習が背景にあった。トポル演じる農家の家長には5人の娘が居る。あろうことか、自分より年上の肉屋が長女を見染める。元々、父親は彼が嫌いであり教養のある男と結婚させたがっていたので一旦、断ろうとするが、貧しい自分と違い裕福な肉屋と結婚させた方が娘が幸せになるだろうと思い承諾する。喜んだ肉屋と居酒屋で飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをやらかす。だが、長女は貧しい仕立て屋と恋仲だった。泣いて嘆願する長女に折れ、父親は肉屋との縁談を喜んでいた妻に一芝居打つ。それは、肉屋の死んだ先妻が夢に出て来て「もし長女が結婚すれば3週間後に殺す」というものだった。これが効を奏し、めでたく長女と仕立て屋は結婚する。結婚式のシーンで歌われた「Sunrise, Sunset」は私のサントラ史上屈指の感動物だった。 その後も父親の目論見はことごとく破れる。次女は革命を夢見るキエフから来た学生と婚約し、ペテルスブルクで活動中逮捕されシベリア送りになった婚約者を追って行く。三女は、ロシア男と勝手に結婚する。人種も宗教も違う為、父親が猛反対すると、さっさと家を出て行った。ラスト、ロシア政府により村を追われることになった家族の元へ三女が別れの挨拶をしに来る。頑なな姿勢を崩さなかった父親も最後の最後にかろうじて許すのだった。時代はどんどん変わって行くのだ。タイトルの「屋根の上のバイオリン弾き」は不安定な人生の中でも精一杯生を楽しもうという比喩なのだろう。