「わが闘争」61
ヒトラーは売春による性病蔓延の恐ろしさと愚鈍な芸術による文化の退廃を糾弾する。そして、「もし、自己の健康のために闘争する力がもはや存在していないとするならば、この闘争の世界において生きる権利は消滅する」「この世界は力に満ちた完全な人のものであり、弱々しい中途半端に人のものではない」とぶちあげる。私も別に売春を擁護するわけではない。しかし、人類最古の職業と呼ばれるものが、そう易々と無くなるとは思えない。嫌悪感が少なければ最も簡単な労働だろう。そして、約4割の人間が浮気を肯定している所から見ても、婚外性交渉が無くなるとも思えない。人間、食べ物であれなんであれ浮気な生き物なのだ。愚鈍な芸術を排除することも不可能だろう。人間、取り分け、芸術において色んなことをやりたがるものだ。ともあれ、ヒトラーの苛烈な強者信奉がドイツにもたらしたものを噛みしめなければならない。強者が社会を支配するのは、まぁ、ある程度仕方ないだろう。だが、大勢の弱者が居ないと社会そのものが成り立たない。弱者全員が奴隷根性とも限らない。