アクト・オブ・キリング
観て良かった。これまで本物のヤクザや極右と接した事がなかったので1965年頃インドネシアで「共産主義者狩り」と称し100万人を虐殺した首謀者達のドキュメンタリー映画だと知り興味を持った。映画には4人程のリーダー達が登場した。彼らは元々地元のヤクザだったが軍事政権によって承認された殺人集団だった。手口は政府寄りの新聞記者による情報を元に捉まえた共産主義者を拷問し虐殺するというものだった。その情報もでっちあげが多々あったようだ。また、華僑狩りと称して道で出会う華僑を手当たり次第刺し殺したそうだ。その中には自分のガールフレンドの父親さえ居た。最終的には村を焼き払い住民を皆殺しにするという所までいったようだ。何故、彼らがあれほどまでに共産主義者を憎むのか分からないが美人は全員レイプし、それが14才の女の子であれば尚喜んで「お前にとっては地獄だろうがこっちは天国だ」と言いながらレイプしたり死ぬまで肛門に木を突っ込んだりしたのは明らか、彼らが残虐行為を楽しんだ事を示している。また、さらに怖ろしいのは、彼らが罪に問われるどころか現在でも国民的英雄であり彼らがマフィア映画を真似て人を殺した事を国営放送の美人インタビュアーが喜んで聴いていたり反共の民兵組織が現在でも300万人存在する事だ。彼らは、もし仕返しされたら皆殺しにしてやると息巻いていた。彼らには、なるほど、知性の決定的な欠如と残虐性があった。自身1000人を虐殺したリーダーの一人がアヒルの雛をケガさせた孫を叱り謝らせるエピソードはシュールですらあった。そして、ラスト、興味深かったのは他のリーダー達が現在も、「他の国でもやっている事だ」と罪悪感は全く無くもし、国際司法裁判所に呼ばれても有名になれるから行きたいと言い放つ一方拷問シーンで被害者を演じたリーダーの一人がようやく、自分が虐殺した人間が罪の無い人間であった事に気付いたかのごとく嘔吐する所だった。いずれにせよ、ナチスは勿論、ロシア、アメリカ、日本等も残虐行為は行っているようだしウガンダ、カンボジア、ボスニア、シリア等での内戦時の残虐行為やアフリカや中東でのイスラム原理主義者による残虐行為もよく知られている。また、程度は遥かに軽いが、現代の日本でも学校や会社でいじめは存在するし家庭での幼児虐待やDV、あるいは障害者や介護施設での虐待が後を絶たないのは人間の中に弱者への残虐性が広く分布しているせいだろう。そして、「人の不幸は蜜の味」などという残酷さも彼らの残忍さと地続きではないかと思う。