言葉は力
「お風呂に入りたい。」突然父が言い出した。病院は、ヘルパーさんの都合で数日後になるらしい事を聞いたとたんに、私の家でお風呂に入ると言い出した。父の事だから、今と言えば今。それをなだめて、翌日にしてもらう。心配な事が3つ。1、うちは浴室が2階。2、ほとんど歩けない父親をどうやって2階まで上げるか。3、娘と私だけで出来るか・・・・もし、めまいが起こればどうするのか。浴室で倒れればどうするのか。でも、病院にいる両親をとにかく、ゆっくり我が家に呼ぶことにした。兄が、来てくれることになった。一安心(^_^)v我が家に向かう途中、散髪屋さんに寄って、父は散髪と、髭剃り。いい気分♪(聞くと父は3日に一回、散髪屋さんに行くのが日課になっているらしい。自分で頭を洗ったことがないという。。)すっきりして、我が家に着き、お昼ご飯。食後、父は「しあわせやぁ。。。」と言いながら。。。ぐっすり寝てしまった。お風呂。。はどうなる。せっかく兄が来てくれているのに。結局、兄が帰る時間になった。父は「あわててまでお風呂に入りたくない」と言う。それもわかるし。。。「わしは、今日、ここに泊まる。外泊する。」と言い出した。主治医が気分がよければ外泊も可といわれていたので、早速、病院に電話。外泊の許可が出た。でも、兄が帰り、心細くなる・・・娘と私、二人だけの家庭・・しかも、私は、夕方から授業。私の仕事中、なんと、娘が父と母のお風呂の面倒を見てくれていた。父は、階段を這って上がったらしい。2階は、お風呂もお手洗いもある。父は、夜中、何回もお手洗いに行っていた。その度に、私は目を覚まして、動向を見守った。そんな中、今日、一日で、兄は、5回も電話をくれた。その度に、「ありがとう。」「世話になるな・・」その言葉が続く。私は、その言葉に励まされて、父や母を側面から応援することが出来る。両親が入院して以来、兄は毎日、電話してくる。「ありがとう。」「世話になるな。」「毎日見舞いに行ってくれてありがとう。」私も、兄に、ありがとうと言う。兄と私は、子ども時代犬猿の仲だった。でも、今、一番大切な命の事を二人で話している。兄からの、思いやり、いたわりの言葉を背に、私は、仕事の合間をぬって毎日数時間病院に行っている。もし・・近くに居るから、当たり前だ。・・なんて、言われたら、私はこれほど元気じゃないかも知れない。両親は、散髪して、ゆっくり食事して、お風呂に入って、ゆっくり寝て、「わしは、天下一の幸せ者だ。」なんて、言っていた。大動脈のところにびっしりとがん細胞が張り付いているという。その説明を兄と私と娘の3人で聞いた。諦めてしまうのではなく、家族が心を合わせて、病気の本人が、少しでも、楽に、また元気になるようにと応援することと、その熱意が、病人を含めて、医師や、周りの看護婦さんの心も動かすんだ。と兄は何度も言う。諦めかけていた私に兄は力をくれた。新たに始めた療法は功を成し、父の呼吸はずいぶんと改善した。歩行のリハビリも始めている。言葉は力だと、改めて感じる。私は、立派な兄を持った事を誇りに思う。小さい時に仲が悪くても、本当の仲は、大人になってからだね。まさかの時の真の友っていうけど、家族も本当に大事です。