「発達障害児者の問題行動」という本
ちょっと書籍のご紹介です。↑「発達障害児者の問題行動 その理解と対応マニュアル」志賀利一著 発行:エンパワメント研究所 発売:筒井書房 税込み1,155円【目次】(「BOOK」データベースより)イントロダクション(5つの事例/マニュアルの目的 ほか)/1 PLAN(計画)(行動に名前をつける/状況を整理する ほか)/2 DO(実行)(実行する/記録をつける ほか)/3 SEE(評価)(記録を整理する/継続か修正かを決定する)/4 TIPS(事例集)(問題行動が起きない分析/計画的な無視の効果 ほか)/これからが本当のスタート(問題行動をなくす名人はいない/長期的なゴールを設定する)----------------------- ご存知の方も多いかも知れません。初版第一刷は2000年2月で、同年10月以降、増刷を重ねています。著者の志賀先生は、心理職として民間の診療所で発達障害児の療育相談に長くかかわってこられ、現在は社会福祉法人電機神奈川福祉センターの常務理事として、障害者の一般就労の支援に携わっておられます。NPO法人ジョブコーチ・ネットワークの実行委員もなさっている方です。↓志賀先生の個人のHPMachito's web pege↓NPO法人ジョブコーチ・ネットワークJC-NET ジョブコーチ・ネットワークこの本は、自閉症児者への療育・教育・福祉の現場から「問題行動」という行動をどのようにとらえ、行動を具体的に把握し、前後の状況と行動の関係を分析し、援助者が理解していく、つまり、「評価」していくのか、そして、その改善のための働きかけ方と環境調整について、Plan→Do→Seeのサイクルにのっとってどのようにすすめていくのかを事例をもとにチャート式にまとめてある援助者のためのマニュアルです。対人援助サービスの領域で、「マニュアル」という言葉を使うと、「一律の」「型にはめるような」「パターン化した」、場合によっては、「心がこもっていない」などの悪い印象をもつ場合もあるかと思います。でも、このマニュアルは、それぞれの当事者の「問題行動」をどのように把握・理解し、その状況分析から「問題行動」発生の仮説をたて、対応策を計画して実施し、その評価を行なう、という「取り組み方」のマニュアルです。「マニュアルの目的」を同書の8ページから引用すると、------------- 私たちはこれまで、知的に重度な遅れを持つ人、あるいは自閉症やコミュニケーション障害といわれる人たちがしばしば見せる行動に驚かされ、困惑してきました。突然大きな声で叫んだり、些細な物音をおおげさに怖がったり、強烈なかんしゃくで自分ノ頭を壁にぶつけたり、近くにいる人を力一杯突き飛ばしたり……私たちはこのような行動を「問題行動」と呼んでいます。そして、頻繁に強烈な問題行動を見せる人に「強度行動障害児者」という名前をつけました。 このような発達障害児者の問題行動について、実証的な研究が開始されてから、すでに40年以上経ちます。その間、多くの技法やノウハウが紹介され、実践の場で応用できるようになりました。不思議なことに、効果的な方法を見つけた実践家はみんな「私達が彼らのことを理解していなかったから問題行動が起きていた」としるしています。問題を解決しようとする試みは、発達障害を持つ人たちが「周囲をどのように見、考えているのか」について理解する第一歩なのです。-------------太字の部分はよたよたあひるが、「そうなんだよね!」とブンブンうなづいたところです。まさに、「問題行動」って、当事者ご本人が、周囲との関係の中で「困っていること」を表現している事態なので、「問題行動」の「矯正」のみを考えるのではなくて、なぜその行動がでているのかを理解したうえで、対処方法を組み立て実行していくと、ご本人が「困っていること」が解消されて結果として「問題行動」が軽減します。ここでいう「理解」は、単に「問題行動の発生を防ぐために特別扱いをして、ご本人の障害を放置する」という意味ではありません。「問題行動」という形でしか表現できないでいた「困っていること」をきちんと把握して、その解決のために、ご本人の持っている力を生かす、ということなのだと考えます。その理論的な立場は、同書のP11によれば、-----------理論的な裏付けとしては、「機能的アセスメント(functional assessment)」と「構造化された指導(structured teaching)」と呼ばれる手法をベースにしています。これらは、現時点で、問題行動の対処法を考える上でもっとも明快かつ有効な理論だと思われます。-----------と書かれており、アメリカ・ノースカロライナ州で行なわれているTEACCHプログラム等、認知療法と行動療法をベースにした、当事者の行動をもとに、当事者への働きかけ方と環境の調整の両方にチームで取り組んで、対応・解決方法を考えていく立場だといえるでしょう。登場する事例は、養護学校だったり作業所だったり、療育相談での事例だったりするので、事例に描かれている対応方法そのものは、現在、うちの施設で取り組んでいる「高機能」「アスペルガー」の大人の方が抱えている問題や対応方法にそのままじかに応用するのはちょっと無理があるのですが、それこそ「機能的アセスメント」や「構造化された指導」がどういうmのであるのか、そして、問題解決への取り組み方の視点を理解するには、わかりやすくてよかったです。アセスメントに必要な視点や解決のための仮説の立てかた、そして、チームを組んで取り組む、という基本姿勢は変らないと思いますから。もちろん、チームの中には、当事者ご本人もご家族も含めて考えていくことが大事だとよたよたあひるは考えています。さて、今日は書籍のご紹介で終わってしまいました。楽天ブックスでこの本をみつけて嬉しかったので。