今年の「学力テスト」の問題について
さて、22日に実施された全国共通学力調査の「テスト問題」そのものについて考えてみようと思います。「学力調査」実施の意図や調査結果の活用方法については様々な議論が(今年はわりと静かですけどね・・)ありますが、せっかく税金をかけて実施しているテストですから、納税者としては「調査」のために作成された「問題」そのものについて考えてみるのも大切なんじゃないかと思うからです。 というのは、昨年度の問題と今年度の問題の傾向が若干違うんですよね。 現行学習指導要領に基づいた学力の習熟度を測るという点は共有されていると思いますが(あたりまえですよね。今の中3と小6はその学習指導要領に基づいた教育課程を受けてきているのですから・・)、問題の構成、視点の当て方がかなり違うという印象を受けます。特にB問題の変化が特徴的だと思います。また、A問題も単純に知識を評価するというだけでなく、教科内容と日常生活を結びつけた問題になっているんですよね。 下に、実際の問題と正答例、解説、問題趣旨が読めるページのリンクをはります。↓「平成20年度全国学力・学習状況調査の調査問題・正答例・解説資料について」のHP http://www.nier.go.jp/08tyousa/08tyousa.htm 国立教育政策研究所のホームページです。文部科学省のHP「報道発表資料」から入っていくことができます。このページに今年度の全問題と正答例、解説と昨年度の問題、正答例、問題趣旨へのリンクがあります。 で、結論からいうと昨年度よりも、A問題の「基礎的知識」とB問題の「活用力」という問題作成上のポイントだ整理されて、よりPISA調査の問題に近付いているように思いますし、単純にPISA調査の問題の後追いをしているだけでなく、きちんと「評価したい活用力」がなんであるのかを打ち出している問題のように思います。「基礎的知識」にも日常性が入っているように、「活用力」がただ「総合的な学習の時間」の場面設定を借りた表面的な「生活への応用力」というのではなく、またメンドクサイパズルにならずに(とろろ丼さんはやっぱり「難しいというよりメンドクサイ問題だった」と言ってましたけどww)、国語ならば「資料を適切に読み取る力」や「(まやかしではなくて)根拠を明らかにして説得力をもって主張する力」が問われていると思いますし、数学も「事象の理解に数学を応用するための基本的な考え方ができるかどうか」「数学的考え方のプロセス」を問うているように見えました。もちろん、それぞれの教科の専門の先生方から見るとまた違う評価もあろうとは思いますが。 未来をつくる子ども達にはPISA型学力が必要だと考えている私にとっては、この変化は肯定できます。なぜならば、「学力テスト」の問題の傾向は、今後の教育政策上必要と考えられる学力がどのようなものであるかのスタンダードを示そうとしていると考えられるからで、そのスタンダードがPISA型学力を指向しているというのは、私にとっては好ましい変化なんですよね。教育政策上の「求められる学力」のスタンダードは、今後の高校入試、大学入試にも反映されていくことが予想されます。特に、公立高校やセンター試験の反応は早いんじゃないかな。 実は、昨年度の問題については、あまり評価できないと考えていましたので、それに比べると今年度の問題の方がいいんですよね。 昨年の問題を見て、かなりがっかりしたのは、数学の「活用力」の問題の場面設定が「消費者」としての生活者に留まっているように見えたからなんですが、今年度の問題にはB問題で露骨な「買い物問題」がありません。「数学B」の大問題5は、富士山観光レジャーの計画を立てる場面設定ですが、その中に富士山6合目の気温を予想するという問題が入っています。6合目には観測所がないので平均気温がわからないので、既存のデータを使ってグラフを作成し想定できる気温を出すための考え方を問う問題なんですね。数学の問題として見るとかなりメンドクサイ文章があって読むだけで疲れる生徒もいるかもしれませんし、うちのとろろ丼さんのように、何を聞かれているのか読んでいるうちに混乱してしまった生徒もいるかもしれませんが、問題の趣旨は、いくつかのデータをもとに一次関数のグラフを応用して未知の値を予測するための「方法」を「説明できるか」どうかという問題なんです。 「修学旅行の計画」を立てるときに事前の「調べ学習」で「考えさせる」取り組みをしている子ども達を想像しました(まぁ、とろろ丼さんたちは、京都・奈良の事前学習で「理科的」な調査はしませんけどね)。 こっちの方が、ファミレスのオーダーを考える問題より私にとっては「考え方」「説明能力」を測るという視点であるため「活用力」として納得できる問題でした。 ↓<高齢父ちゃん 頭の良い子に育つかな>ブログさんよりいただいたトラックバックhttp://kansuke99.at.webry.info/200804/article_12.htmlせっかくいただいたトラックバックなのに、間違えてけしてしまいました。ぶろぐ村の検索でみつけることができましたのでリンクをはっておきます。