【15】酒と車と上司と女
病室へ戻ったら、私の椅子の上に紙が置いてあった。病院の費用の明細。1,280元(当時約17,000円)昨日は624元(約8,500円)で、一昨日は800元(約10,000円)だっけ・・・たっか・・・(--;入院費・治療費・点滴代・薬代・検査代・朝食代、もろもろ明細は書いてあるけれど、薬代と検査代が高い。点滴や薬で、各100~200元、機器を使った検査なら数百元、治療費はほんのわずかだ。勿論、海外保険で清算しているのだけれど、工場で働く従業員の一月分の給与ほどの料金が毎日かかる。ここの物価を考えると、首を傾げてしまう。取れるモノから取る・・・(ため息)封筒にしまった。ここに通うTAXI代や日用品等の領収書も全て入れてある。後で本社に送って、本社が保険会社へ提出するからだ。今の所、限度額などは聞いていない。大川さんが帰国したくない理由って、全部海外保険で済ませたいってのもあるのかね・・・?などとも考えてみる。。姉ちゃんが、晩御飯を作りに帰る、と言い、大川さんと二人だけになった。大川さんは私が持ってきた週刊誌を読んで、時々「へぇ~えらいモンやなぁ・・・」と私に話しかけるので、私も「何々?どしたんですか!?」と駆け寄って「あ~すごいですね~」と話を合わせていた。話をしたいんだろうな、と思った。大川さんは、飲み屋でコミュニケーション取れるくらいの中国語しか話せないし、姉ちゃんは、日本語を殆ど話せないに等しい。ちゃんと会話できなくて、大丈夫なのかね・・・?と思うけれども、逆に細かいコミュニケーションが取れない方がうまく行く事もある、とも思う。実は考え方が全く違う事や、本当の性格が出なくて(出せなくて)お互い、良いように誤解するって事だ。後は互いの感性の問題だろうか。でも、それだって非日常の場合で。長い間一緒にいると、その内破綻が訪れる、普通なら。。二人はどうなんだろうか・・・?(考)余計な事を考えていると、契約している医療サービスセンターの丘(きゅう)さんがお見舞いに来た。「この度は、本当に大変な・・・お気の毒でした・・・」流暢な日本語と低い物腰で、安心できる。私はお茶を出して。通訳は必要ないので、側で大川さんと会話するのを聞いていた。「手術が必要だと聞きましたが・・・?」と丘さん。「ええ、そうなんですよ。まあ、帰国せずに中国で手術しようと思ってます」 大川さんが愛想笑いを浮かべて言う。「もし、ここで不安なら、上海の名医に依頼する事も出来ますから。転院して上海で手術・治療する事になりますけど」「ああ、そうですか~。やっぱり上海は都会ですねぇ・・・」 ニコニコして話す大川さん。私は、口元だけ微笑んで、黙って聞いていた。丘さんが帰る時に、見送る振りをして一緒に廊下に出た。話しておこう・・・「丘さん、あのね・・・」「・・・はい?」「・・・大川さんには内緒なんですけど、本社から帰国命令が出てて。。だから、上海でも手術は、しないつもりです。大川さんは中国で手術したがっているけど、私個人的にも、失礼とは思うけど、申し訳ないけど、中国で治療するのは、どうしても安心できません。」どう返ってくるかな、と思った。反対されて、上海での手術を勧められたら、どうしよう・・・丘さんは 「そうですか」 と、頷(うなづ)いた。「僕も日本で治療した方がいいと思っています。」「・・・そうですか(ホッ)」「実は、中国の医者ってね…」急に小声になる丘さん。「…はい」「2000年からライセンス制度が始まったんですよ。」「え~~(驚)……じゃあ、それ以前の人は・・・?(汗)」「それ以前の人は、学校でたら、医者になれます…」「・・・・(驚)・・・・」丘さんは「ホントの話ですよ」と真剣な顔をした後、「じゃ!何か決まれば連絡下さいね」と、ニッコリ笑って立ち去った。・・・・・・・・・・・・・丘さん、冗談キツくない・・・?(汗)私の中の「中国でゾッとした事ランキング」ベスト5入り…くらいの話でした。*後で調べてみると確かに、2000年5月1日から「中華人民共和国執行医師法」が実施されこれ以降は無免許の医者は罰せられる、という内容でした。急なライセンス制実施に伴う当時の関係者の混乱ぶりは想像できますし、なりふり構わずライセンス取得した者もいたでしょう。なりふり構わず・・・とは、中国でよくある「色んな手段」を使う、という意味ですが。。(ため息)つづく。 「早く続き~」と思われた方へ:是非上記バナーをですね、クリックして頂けると、モチベーションが上がって「頑張って書こう!」と思いますので宜しくお願いします。扉ページ←「ホーム」をクリック!で【今日の 小日記 (何それ、と言わないで^^;)】やってます。私の日常の小ネタをチョコチョコ載せてます。そちらも是非!