名医のセカンドオピニオンスペシャル<心の悩み(1)>
みんなの家庭の医学(2011/5/3放送)より長引く治らない症状 本当の原因をもう一度探ります!名医のセカンドオピニオンスペシャルセカンドオピニオンとはなかなか治らない1つの病に対し今までの医師だけでなく他の医師に違った角度から診断を求めるもの。それこそが今までの長引く身体の不調を解決する大きな手がかり。<心の悩み(1)>心の悩み心の悩み M・Tさん(52歳・女性)専業主婦。この春、一番下の子供もようやく所帯を持ち、独立。肩の荷がおりたものの、心なしか寂しさも感じるこの頃。 子供たちが手を離れた途端、今度は夫が定年退職を迎えて毎日家に居るようになり、夫の世話に明け暮れる日々。何かにつけてうるさい夫。それでも辛抱強い性格のM・Tさんは、じっと耐え忍んでいました。そんな生活が始まって半年。なぜか最近身体がだるく、やる気が湧いてこないのです。だるさは日を追うごとに増していきました。また、身体はだるいのに夜中に何度も目が覚めてしまうため、朝が辛く、布団から出る気力すら消え失せてしまいます。M・Tさんは、夫の提案で心療内科を受診しました。 【ファーストオピニオン】 うつ病による気力低下 うつ病はストレスなどが原因で意欲が低下したり、気分がふさぎこんでしまう心の病。M・Tさんの場合、夫の定年などライフスタイルの変化がストレスとなり、うつ病を引き起こしたと考えられました。こうしてM・Tさんは、抗うつ薬と睡眠薬による治療を始めます。しかし、なぜか昼間のだるさは全く治らず、日に日に憂鬱な気分が増していったのです。さらに夜中も、身体はだるいのに何度も目が覚めてしまうのです。悩めるM・Tさんは、ドクターショッピングを繰り返しました。しかし、一向に熟睡することができません。そんなある日、息子夫婦が心の悩みと睡眠を両方診てくれる大学病院を探してきてくれたのです。それこそが、心のスペシャリストである内村直尚先生(久留米大学病院 精神神経医学講座教授)率いる久留米大学病院の精神神経科でした。 問診により、確かにM・Tさんには軽いうつの傾向が認められました。次に、先生は質問の内容を「睡眠に関すること」に絞ることに。実は、うつ病と判断するのに大きなカギとなるのが「睡眠の状態」。M・Tさんは、夜中の目覚めと昼間の眠気を訴えていました。すると、先生はなぜか夫にも話を聞きたいと言います。3日後、夫とともに再び病院を訪れたM・Tさん。先生は、M・Tさんが寝ている時、いびきをかいているかどうかを聞いた上で、M・Tさんが寝ている時の脳波や目の動きなどを測定。彼女をうつ状態にした本当の原因へと迫ったのです。【内村先生が導き出したセカンドオピニオン】 睡眠時無呼吸症候群によるうつ状態 睡眠時無呼吸症候群とは、何らかの原因で睡眠中にのどの気道がふさがり、低酸素状態になる病。彼女の場合、睡眠時の呼吸を検査した結果、なんと1時間に50回以上も呼吸が止まっていた事が判明。これは、診断基準の10倍もの数値でした。この病を発症すると慢性的な睡眠不足を引き起こし、睡眠不足と低酸素状態によって脳内の血流が減少。やる気や集中力などを司る前頭葉の機能が低下し、うつ病と同じような症状が現れるのです。なぜ、うつ症状の原因を見抜くことができたのか?そのカギは、M・Tさんの場合、寝つきはよく、朝も早く目が覚めることはないということ。うつ病患者はその反対で、寝つきが悪く、早く目覚めるのが特徴。 うつ⇒寝つきが悪く、早く目覚める 睡眠時無呼吸症候群⇒寝つきは良く、 朝も早く目が覚めることはないが、夜中に何度も目が覚めてしまう そこで先生は、彼女のうつ状態は別の病が原因と判断。さらに、夫から聞き出した問診で、M・Tさんが毎日大きないびきをかいていることがわかり、睡眠時無呼吸症候群を確信したのです。現在、M・Tさんは治療の結果、夜も熟睡できるようになり、うつ症状も改善しました。