諸田玲子「お鳥見女房」
2007/06/27 mercoledi雑司が谷霊園の中に、こんな立て札が建っている。へ~ぇ!と思って通り過ぎるだけだったのだが、音訳雑誌のお当番で担当して、とても面白かった諸田玲子「お鳥見女房」は、まさにこの辺りが舞台。お鳥見役というのは、鷹の餌の分布状況を調べたり、鷹狩りの準備をする仕事だが、実は、その裏に、幕府隠密の役目もある。タイトル通り、主人公は、そんなお鳥見役の妻珠世。裏の仕事で主人が留守の間、舅や息子と娘、更には大勢の居候まで抱えながらも、明るく切り盛りしている。ちょっとした事件があったり、主が行方不明になったりと、ミステリアスな部分もあるけれど、どちらかというと、時代劇ホームドラマ?日常の家の中の様子がよく描かれている。捕り物とか、有名な偉い人が登場するというのではないけれど、面白い!その上、今も残る道をあれこれ、想像しながら読むというのも、これまた楽しさ百倍。鬼平にもよく鬼子母神あたりが出てきたものだが、より極地的というか、身近で具体的。この辺の古地図が欲しくなる。この作者、向田邦子のドラマの小説化などを手がけているというだけあって、読み進むままに、頭の中で、ドンドン映像化されていく。それが小説としていいのか悪いのか?登場人物がみんな、憎めない、というのも良いのか悪いのか?心地よく読み進めてしまう。まだ単行本3冊。文庫化されたのはそのうち2冊。一気に読めてしまうので、もっと溜め込んだ上で、読んだ方がよかったのかも、な~んて思ったり。この中でいう鬼子母神に続く幽霊坂が何処なのか?私の思い浮かぶ坂は2つあるのだが、果たしてどっちだろう?或いは、もっと別の坂なのか?そんなことも気になる。