スクロバチェフスキ/読響/アンドレ・ワッツのベートーヴェンとブルックナー
読響第518回名曲シリーズ(9月24日サントリーホール)を聴きました。指揮はスクロバチェフスキ、ピアノはアンドレ・ワッツで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番と、ブルックナーの交響曲第9番です。ベートーヴェンは、ワッツのピアノが本当にききものでした。鍵盤と対峙するのでなく、手が鍵盤の上をころころと楽しく動き回って、鍵盤と手とが呼吸がぴったりとあって反応しあっているような感じです。そこから紡ぎ出される音楽は、温かく、さりげなく、それでいて確固としています。ワッツの存在感が、じわじわっと少しずつ大きくふくらんでくるような、すばらしい演奏でした。そしてブルックナーの9番。スクロヴァチェフスキの9番を聴くのは2回目になります。最初は2002年4月、スクロヴァチェフスキがN響を振ったNHKホールでのコンサートでした。朝比奈・ヴァントが相次いで没して大きな衝撃を受けて以後、僕がはじめて臨んだ演奏会であり、特別な感慨深いコンサートでした。そのあと東京のオケではブルックナー9番がほとんど演奏会で取り上げられない時期が長く続きました。それはあたかも朝比奈御大に敬意を表し喪に服しているかのようでした。2008年7月9日、朝比奈隆生誕100周年の誕生日に、大植さんが大阪フィルとシンフォニーホールで9番を演奏しました。記念碑的なすばらしい演奏会でした。そのようにしてひとつのけじめが着くのを東京でも待っていたかのようにその後東京のオケでこの曲がふたたび取り上げられ始めています。2008年9月のヘンヒェン/日フィル、今回のスクロヴァ/読響、来年2月に尾高/東フィル、3月にハウシルト/新日フィル。さて今回のスクロヴァチェフスキの9番、第一楽章は緩急の変化が大きく、ちょっと落ち着かない感じでした。しかし第三楽章は、全体的にゆっくりとしたテンポで一貫し、いい演奏でした。スクロヴァチェフスキは例によってスコアにいろいろと手を加えているらしく、ところどころ聞き慣れない音量バランスで大きく聞こえてくるパートがあったりしましたが、それ自体に強い違和感はありませんでした。読響は今回もいい音を出してくれていました。ただ僕としては残念ながら圧倒的な感銘というまでの体験にはいたれませんでした。ところでプログラムにはスクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー演奏歴が載っていました。2000年3月の9番からはじまっています。その後8,7,6,4,3,2,5,0,1番と続き、そして今回再び9番でした。来年3月はスクロヴァチェフスキが読響音楽監督として最後の演奏会で、8番です。蛇足ですが来年3月下旬はブルックナー8番ラッシュが凄いことになってますね。3月25日がスクロヴァ/読響とインバル/都響の同日同時演奏対決。翌26日がスクロヴァ/読響、そして28日がティーレマン/ミュンヘンフィルです。聴く方も体力をつけておかないと。