高知へ行ってきた 鰻編
四国の高速道路の分岐で、左「高松」右「松山」とあって、「えっ?えっ!」となったことは過去にもあった。今回もそうなった。 冷静に考える余裕があれば分かるのだが、分岐点はもう目前に迫っていて、停止するのは憚れる状況。そういう猶予のない選択を迫られるとダメだ。どうも私は四国の「松」とつく地名の位置関係を把握しきれていない。 島根と鳥取でまごつく人が多いとよく聞く。私はこちらは大丈夫だ。砂丘のあるのが鳥取で、鳥取は大阪に近い方。でも「鳥取って既におかしいよ。『トットリ』と読ませたいなら『取鳥』でしょ?」という意見に、初めて気付いてなるほどと思った。 たしかに紛らわしい。先の地名も、松と松で紛らわしい。 山陽自動車道に「山陽」というICがあるのも紛らわしい。 中国地方という呼び名も紛らわしい。中国地方にあった『中国食品工業』という水産物加工販売の会社は、中国産食材の信用失墜に伴って、倒産に追い込まれたそうだ。 紛らわしいのは、早々にかつ大胆に、改めるのがよいと思う。 山陽自動車道から瀬戸大橋を渡り、高知自動車道で四国を縦断して、終点の須崎東で降りた。足摺と室戸の二つの岬を端にして、土佐湾を抱え込む形で孤を描く高知県海岸線のほぼ中間あたりに、須崎市は位置する。 最初の目的地は、須崎市の少し北、佐川という町にある鰻屋さんである。情報誌るるぶをみて、『大正軒』という鰻屋さんに行ってみたくなったのだ。 十年ほど前は天丼が好きだった。何かの用事で浅草を訪れたとき、半日のうちに天丼屋を3軒巡った。外で昼となれば『丼丼亭』に代表されるような丼一杯500円の天丼専門店が行きつけだった。 今はさほど天丼に惹かれない。天婦羅の衣の油を好まない歳になったようだ。代わって、うな丼だ。 いくら美味しくても一食に\1,500以上かけるのは食事ではないと思っているので、名代の鰻屋の味を方々知っているわけではない。鰻が好きといっても外で鰻を食べることは滅多にない。スーパーで安い時に中国産を買ってきて、冷凍しておいて、ときどき鰻丼を作るという程度である。これでは鰻が好きと言う資格はないか。 しかし、何かの本にこんな風なことが書いてあった。 A氏もB氏もカレー好きである。A氏に言わせると、カレーはどこそこにあるインド料理屋の作るカレーに限るという。他のものは一切カレーとは呼べないと手厳しい。一方、B氏は、カレーとあらば何でも食べる。いろんなレトルトを比べて楽しみ、カレー屋がないときはカレーパンやカレーうどんを楽しむ。カレーの愛し方において両者はまったく違うけど、どちらも大のカレー好きなことに変わりはない。 ということで、私の鰻の愛し方も、大目に見てもらいたい。 ちなみに中国産の食材は極力買わないようにしているが、鰻と干椎茸と乾燥ワカメは降参した。白状すると、つぶ餡、ひじき、紅生姜、春雨なども。orz 開店すぐの11時半に予約を入れて訪れた。大正軒は予約が必要。予約時にオーダーも済ます。うな重を注文。\1,575。\75は消費税。一食\1,500のリミットだ。 そして料理は個室で頂く。個室しかないのだ。こういう鰻屋さんが地方にときどきある。 るるぶの紹介文はこうである。大正2年(1913)創業のウナギ料理専門店。予約制の完全個室で、待たずにゆったり食べられる。活きウナギをさばき、蒸さずに強火で焼きあげるので、身がキュッと締まってプリップリ。創業時から継ぎ足すタレも奥深い味わい。 私はこの蒸さないタイプが好きだ。蒸して焼くのは竹葉亭に代表される関東タイプだろうか。蒸さない焼きたては、焼き魚に近い食感があり、白身が秋刀魚のように香ばしい。鰻が秋刀魚に化ければ損したと思うかもしれないが、旨い秋刀魚がいかに旨いかは落語の噺「目黒のさんま」の語るところである。 畳めば筒状に戻ると思われる肉厚の焼き身。こげの具合から察しられるとおり、外側はかりっと香ばしく、内側はふっくら。ほどよくタレがからんで、一口ごとに唸ってしまう味わい。とても満足。 しかし、遠方でよい店を見つけても、そうそうリピートできないのがつらい。 高知・鰻編の最後に、私の地元大阪でお気に入りの鰻屋さんを紹介しよう。 大阪市住吉区にある『うな吉』さん。 鰻は、さばいてカリッと焼くタイプ。おすすめはうな重(\1,600)。おいしいよ。機会があったらぜひ食べてみて。