四国の名峰、石鎚山と剣山 その4
二日目は剣山系に移動して、三嶺(みうね)に登るプランだった。三嶺は剣山の西に位置し、標高は1893m。縦走路で剣山と繋がっている。 高知側から登る三嶺がいいと聞いていたので、最初は高知側の登山口を地図で追った。石鎚を降りて、伊予小松から高速に乗り高知側にまわろうとすると、太平洋の潮の香りも漂ってきそうなところまで南下し、そこから延々北上しないと辿りつけないことが分かった。なんて遠いんだ。これなら徳島側から三嶺に登り、高知側に降りて登り返した方が早い。それで高知側登山口は諦めた。 三嶺はずっしりデカい山である。林道を果敢に詰めない限りは、準備万端で一日たっぷり歩いて、やっとの長い登山路である。前日の石鎚で衣服は湿って、当日、雨で、展望も望めそうになく、それで三嶺登山自体を諦めた。 こういう雨の日は、観光客向けに登りやすく整備された剣山がよかろう。三嶺を諦めたのは、そういう剣山が頭にあったからである。 祖谷渓のしょんべん小僧、かずら橋の観光地を通りすぎ、三嶺登山口も通り過ぎ、朝11前に剣山のリフト乗り場に着いた。今日はもうお気楽登山と決め込んでいたから、迷わずリフトの乗客となった。 リフトは標高1,400mから1,700mまで上げてくれる。しかし、上で展望はない。足で登るのでもない。何をしに行くんだろう? 近隣の百名山だから、登っておきたかったのか。そう、そんなところだ。 リフト終点から山頂まで山道20分。そこだけでもとハイペースで歩いた。すると、ぴたり後ろをついてくる者がいた。振り返ると小学校高学年ぐらいの女の子。もう少しペースをあげたがそれでもついてくる。「早いね、先にいく?」と道を譲ったら、「ううん、もう精一杯」とまったく乱れのない息で答える。まさかと思いながら「ひとり?」と訊くと、親と一緒で、親があまりにとろいのでほっていくことにしたのだという。見どころのある子だ。 山頂ヒュッテに到着。ここから木道を少し歩いて、標の立つ三角点の山頂に移動した。風が強く、ポンチョがバタバタとうるさく音をたてた。おにぎりでお昼を取った。風にまじる雨が、海苔を濡らす。 帰りは、いったん次郎笈方向へ降りてから大剣神社に戻る、山頂の巻き道を行くことにした。笹原のなかを蛇行する爽快な稜線歩きを三嶺に求めていた。ここを歩けば、少しだけそんなシーンに出会えるのではないかと思えたからだ。ひとときガスがひいて、緑のなかをゆく稜線が先まで見えた。山はまた予告編を見せてくれた。 大剣神社周辺はトリカブトだらけだった。雨の中、ゆっくり道端を鑑賞しながら西島まで降りた。 さすがは四国の名峰2座、雨ながらそれなりに楽めた。そして四国は、次回の宿題もちゃんと用意してくれた。 <終>