庵野秀明展(11)トップをねらえ!/ふしぎの海のナディア
2021年10月2日(土)、国立新美術館で「庵野秀明展」を見ました。ガイナックスにより1988年からOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)として発売された「トップをねらえ!」の紹介がありました。「オネアミスの翼ー王立宇宙軍」を制作したガイナックスが、興行不振の借金を返済するために作った作品です。原作は岡田斗司夫さん、監督は庵野秀明さんでした。キャラクターは「超時空要塞マクロス」などの美少女キャラクターで有名だった美樹本晴彦さんのデザインが使われています。アニメ「エースをねらえ!」や映画「トップガン」のパロディ要素も入った作品になっています。岡田斗司夫さんですが、土曜日の朝日新聞に「悩みのるつぼ」というコーナーがあり、連載で名回答をされていました。毎回読むのを楽しみにしていましたが、岡田さんの回答が終了してしまい、大変残念でした。「オタクの息子に悩んでいます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より/岡田斗司夫 FREEex/幻冬舎新書」という本を持っています。悩みの相談に対して、どのように回答を導き出すのかという思考経路が詳しく記載されており、勉強になりました。岡田斗司夫さんはyou tubeで、色々な分野についてコメント、解説などをされています。その中で、「トップをねらえ!」についても述べられています。面白かったのは、主人公のノリコとカズミが二人のバスターマシンを合体させ、ガンバスターになるとき、「トップをねらえ!-Fly Highー 作詞:松宮恭子、作曲・編曲:田中公平、歌:日高のり子・佐久間レイ」の曲が流れる理由でした。スポンサーのバンダイから、ビデオ5~6話を制作する予算獲得のため、条件としてこの「トップをねらえ!-Fly Highー」を挿入歌として入れてほしいとの話があり、5話のバスターマシン2機が合体してガンバスターになるシーンに使用されることになりました。歌はノリコとカズミの声優である日高のり子さん、佐久間レイさんです。私は、この歌は合体シーンにマッチしているのではないかと思います。「オタク学入門/岡田斗司夫/新潮文庫」p188に、岡田さんが書かれた「美少女キャラの文脈」という次の文章があります。「アート業界には、『文脈を押さえる』という言葉がある。今までいろんな作品が発表されてきた。その個々の作品の個性や関係性を考慮しながら、最新の作品をとらえる、という意味である。何を継承していて、何が新しいのか。こういう見方、つまり『文脈を押さえて』いないと、作品を理解することができない。ぼんやり見ていたのではアートは理解できない。ただ、目に映るものを見るだけではいけない。これはあまり語られることのない真実だ。アート業界の人はすぐに『ただ、見ればいいんです。素直に感じればいいんです』とかいう。もちろんウソっぱちだ。素人相手のメクラマシだ。『文脈を押さえる』ことこそ、アートの本質なのだ。アニメにも、やはり文脈を押さえて見ないと理解できないことがいくつもある」p189~191には、当時の話として、他社が9,000万円という大金をかけて60分のオリジナルアニメを作り、岡田斗司夫さんの方はオリジナルアニメ「トップをねらえ!」45分を1巻あたり2,500万円で作った話が載っています。結果として、「トップをねらえ!」は3万本以上が売れたのに、他社は2,000本しか売れませんでした。他社の担当者が岡田さんに、「なぜ『トップをねらえ!』は売れて、自分たちのビデオは売れなかったのだろうか?」と聞かれたことがあり、岡田さんは「『見たらわかるじゃないか』としか説明のしようがなかった」と書いています。「『トップをねらえ!』のキャラクター設定は『超時空要塞マクロス』で大人気の美樹本晴彦、こっちが受けるに決まっている。だから僕は、そのとき『見たらわかるじゃないか』としかいいようがなかったのだ。でも、これはアニメをずっと見続けていないと分からないことだ。その担当者は『文脈を押さえて』いなかったのだ」また、p191には、村上隆さんの作品の話も記載されており、これも興味深いので紹介します。「村上隆、という現代アーティストがいる。彼の作品『ヒロポンちゃん』を初めて見たのは1994年の秋だった。巨大なオッパイの女の子が、自分の乳首から飛び出る母乳でナワトビをしている、というトンデモナイ作品だ。村上氏は僕に『オタクの王様として、遠慮のない意見を聞かせて下さい」と尋ねた。そこで僕は思いっきり遠慮なく、本当の事を答えた。『こりゃブッサイクですね~。どれぐらい不細工かというと、まるで1985年あたりに不動産屋が『いっちょ映像業界にでも進出するかぁ。まずアニメでも作るべ』とかいって、スカみたいなスタッフ集めて適当にでっち上げて発売したはいいけど、300本しか売れなかったアニメのキャラクターみたいにブッサイクです』村上氏は一瞬当惑して、その後大笑いした。彼はわかっていたのだ。自分がアニメキャラの『文脈を押さえて』いなかったことを」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー1990年からNHKで放送された、庵野秀明さんが総監督の「ふしぎの海のナディア」も紹介されていました。オープニングソングは「ブルーウォーター 作詞:来生えつこ、作曲:井上ヨシマサ、編曲:ジョー。リノイエ、歌:森川美穂」で、耳に残る歌です。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「トップをねらえ!」↑ 主人公のノリコとカズミが二人のバスターマシンを合体させ、ガンバスターになった。↑ 「トップをねらえ!-Fly Highー 作詞:松宮恭子、作曲・編曲:田中公平、歌:日高のり子・佐久間レイ」が流れる。ーーーーーーーーーーーーーー①オタク学入門/岡田斗司夫/新潮文庫。②オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より/岡田斗司夫 FREEex/幻冬舎新書。③オタクの迷い道/岡田斗司夫/文春文庫。以前、岡田斗司夫さんの「いつまでもデブとおもうなよ」を持っていたが、古本屋に売った。↑ オタク学入門/岡田斗司夫/新潮文庫。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「ふしぎの海のナディア」↑ ノーチラス号。