エリ・エリ・レマ・サバクタニ / 青山真治
■エリエリレマサバクタニ たしかに映画の冒頭、浅野忠信と中原昌也(暴力温泉芸者)はガスマスクをつけて砂漠だか谷だかわからない風景の中にいる。そして聞こえてくるのは圧倒的な音量の波の音だ。■エリエリレマサバクタニ たとえばエコエコアザラクのような呪文の言葉だと思っていた。Eli, Eli, Lema Sabachthani ? 神様、どうして私を見捨てたのですか?十字架に貼りつけられたイエスが残した最後の言葉だそうだ。■エリエリレマサバクタニ DVDの選択画面が綺麗。ただっ広い草原に立つギタリスト浅野、4台の巨大なJBLのスピーカー、背景は真っ青な空。それが徐々にゆっくりと横に移動していく。それを聞いているのは目隠しされた黒尽くめの宮崎あおい。この宣伝ポスター、ぜひ手に入れて部屋に飾りたい。■エリエリレマサバクタニ 音を探して創っていく過程が面白い。高性能の収音マイクを持っていたら、自分だったらどんな音を拾うのか。貝殻が擦れる音、トマトを握りつぶす音、何かと何かが擦れる音。そういえばその昔、わたしもデンスケ少年だった。■エリエリレマサバクタニ 爆音が世界を救う。コードを知らないわたしでも、エレキギターと巨大なスピーカーとそれを聞いてくれるあおいちゃんさえいれば、延々と膨大なギターソロを体力のある限り、かき鳴らすことができるような気がする。気分はジミヘン、実はマジヘン。■エリエリレマサバクタニ これだけ書けばこの呪文のような言葉も覚えてしまった。ノイズを意識すればするほど、それを取り除こうとする意志が自然発生してしまうわけだが、ノイズだけをことさら強調して見せられると(聞かせられると)意外にそれらに癒されてしまうのも不思議だ。告白すると途中30分はこの映画の記憶はない。爆音で癒されるわたしも満更すてたもんじゃないなんて思う。