セトウツミ / 大森立嗣
■池松君と菅田君が放課後、学ラン着て川辺で横並びに座って、ただただしゃべくるだけの100分。その中央にマイクでもあれば異種M1かと思うくらい笑いの要素が強い。ふたりの役名は瀬戸君と内海君、つまりおぎやはぎ的なコンビ名をタイトルにした節がある。■全編通して同じ舞台で繰り広げられるわけだが、一話完結の原作の形を崩さずに6つのお題が映し出される。第1話「セトとウツミ」第2話「アメとムチ」第3話「イカクとギタイ」第0話「内海想の出会い」第4話「先祖と子孫」第5話「瀬戸小吉の憂鬱」第6話「出会いと別れ」エピローグ「樫村一期の想い」これはDVDのチャプター機能向きで、私はアメとムチの回を何回もリピートした。■河原には通行人もいれば、後ろの道路では車もバイクも行き来する。もちろん撮影は車両制限なり一時的な通路封鎖なりをしながら進められたと思えるが、ぼそぼそ喋る二人の声を明瞭に拾う録音技師の腕前もこの作品にはなくてはならないものだ。■原作は『別冊少年チャンピオン』に連載中の此元和津也による「セトウツミ」。この漫画の完成度が素晴らしく、この映画はほとんど原作通りのセリフ回しで実写化したもののようだ。だからセリフの掛け合いの面白さを味わうのなら自分のペースで読み進めることができる漫画の方が適しているかもしれない。■では映像化した際の強みはどこにあるかと言えば、この旬の役者二人が登場人物たちに完全に憑依して、それぞれの声色と表情と抜群の間であのやりとりを肉体化してしまっているところ。そして随所に意味ありげに流されるアコーディオンに寄るタンゴ風味の音楽の効果だろう。■しかしいつ頃からこの人を笑わせるという行為がヒエラルキーの上位に位置することになったのだろう。今では体力よりも学力よりもコミュニケーション能力がある者の方が高校生の間では優位に立っていると思う。相手の言ったことに対し見事につっこんでしまえる能力こそが周囲を唸らせる最高の技量。それが人を貶めることをしない限りはやはりないよりはあった方が良いと思う。■このふたりのやりとりを見て安心して笑ってしまえるのは、そして何度も何度も見返してみたくなるのは、いつの間にか友だちを通り越して相方と呼んだ方が良いようにも見えるふたりの関係性によるところが大きい。