セクハラを受けやすい女性たち
外来にセクハラの相談に現れる女性たちを診ていると、ある共通点が存在することに気づく。過去の自分も含めて、「隙(すき)がある」のだ。身体不調や出勤不能で精神科に相談に来られるケースは、行為がどこまで及んだかは様々ながら「大概他者のいない空間で行われる恐怖を伴うセクハラ」である。上司が挨拶代わりにお尻を軽く触った、も社会的には十分セクハラだが、そのレベルではない。だが、もちろん挨拶代わりにお尻を触られる女性も、その先もっと深刻なセクハラに遭う可能性が高いので、注意が必要である。念のため言っておくが、セクハラは行うほうが絶対的に悪い。セクハラされた方が隙があるから悪い、などと言うつもりは毛頭ない。だが、現実にはセクハラはいたるところに存在し、社会で働く女性の皆さんに「自分の隙」を知っておいてもらいたいと思うし、それなりに自衛をして欲しいと思うのだ。セクハラに遭う遭わないは、美人であるなしとか、お色気ムンムン(笑)とか、露出度の高い服装の多少(痴漢には遭いやすいので気をつけて)とか、モテ度、仕事の出来、とはあまり関係ない。多いなと思うのがこんなタイプだ。A.どちらかと言えば明るくて職場でもムードメーカー。エッチな軽口を言っても冗談として付き合ってくれる。「イヤだぁ♪」と言いながら軽く叩き返すなど、自分からのボディタッチが多いこともある。B.どちらかと言えばおとなしくて職場では目立たない方。何か嫌な思いをしても、到底職場で訴えていけそうもない。そんなことを言い出す姿は想像的できない。セクハラをする側から見るとどうだろうか。電車で見知らぬ女性に痴漢をするのではない。職場で、顔見知りで、身元もお互いに判っている相手に行うのだから、痴漢より自分の立場を脅かされる危険度は高いはず(もちろん、痴漢も許されぬ犯罪です)。なのに、痴漢をする勇気がなくてもセクハラするのは、行う側に自分は大丈夫という「心の言い訳」があるのだ。A.「コイツに何か言われても、周囲にはそんなの冗談に決まってる、で済ませればよい」B.「間違ってもコイツが職場で声を上げるなんてことはない。念のためちょっとビビらせておけばなお確実だ」大体この2つのパターンではないか。読んで頂けば判るように、それぞれが上の女性のタイプA、Bに該当する。精神科医がこんなことを言って、と怒られそうだが、セクハラ被害に遭った場合の治療、と言っても残念ながら「日にち薬」を上回るものなどない。今後どうやって身を守るか、を考えないと、たとえ職場を移っても、同じ目に遭いやすい。・親しくなってきた上司でも、宴会で無礼講でも、絶対に自分からボディタッチをしない。・普段明るく調子よく振舞っていても、身体接触や性的な言葉に対してだけは、毅然とした態度で嫌悪感を示しておく。・普段職務に忠実、上司の命令に従順であっても、いざとなったらコイツは黙っていないな、と思わせるだけの強いオーラを感じさせられれば、しめたもの。・周辺に他者のいない場合、相手の視線や言動からいち早く危険を察知し、相手が持ち込もうとするムードに流されない。ことごとく打ち壊す。とにかく離れる、顔を近づけられないようにする、など相手がどう仕掛けてくるか、先に予想して、封じる。そこまでの事態で「ダメですよー♪」みたいないつもの調子、失礼にならないよう明るく別の話題を振るのは、隙になってしまうのでタブー。痴漢でなくセクハラをしてくる男性というのは、案外勇気も度胸も無いのだ。簡単に言うと、自分の好きなオトコをオトす時と、逆の態度をとればよい。相談に訪れた女性たちにいつも話す。「隙のあることは悪いことじゃない。でも、その隙は本当にあなたが好きな相手の前でだけ、見せなさいね」仕事に、行ってきます。