『若草物語』1949年版
≪魅力溢れるキャストで描かれた若草物語≫多くの女性が子供の頃読んだと思われるオルコットの『若草物語』。私も大好きな小説の一つです。何度も映画化されていて、1994年版は教室定番の作品なので何度も繰り返し観ていますが、'49年版と’33年版を観たいとずうっと願っていました。'49年版ははるか昔に観たことがあるのですが、エリザベス・テイラーが出ていたことぐらいしか記憶にありませんでした。映画は'94年版もそうですが、原作の『若草物語』(“Little Women”)と『続若草物語』(“Little Women Married, or Good Wives”) を基に作られています。南北戦争時代、マーチ家の父親は従軍中、マーチ夫人と4姉妹たちが貧しいながらも支えあい、励ましあいながら生活していく愛情あふれる物語です。オルコットは自分を含め、実際の姉妹たちをモデルにこの物語を書きましたから、半自伝的な小説です。小説で描かれている人物像としては、長女メグは、女性らしく美しい。贅沢に誘惑されそうになりながらも、そうすることなく貧乏な男性と結婚する。次女ジョーは、作家を夢見る、明朗活発な男勝りの性格。背が高く、手足が長く痩せすぎ。三女ベスは、優しく物静かで、ピアノが大変上手い。しかし病弱で、若くして死んでしまう。四女エイミーは、おしゃまでプライドが高い。外見的な美しさに憧れて着飾る事を好み、ブロンドの巻き毛が自慢だが、自分の鼻の形は気に入らない。'49年版が他の作品と違う点は、三女エイミー、四女ベス、となっている点です。これは、みんなから愛されながらも若くして死んでしまうベス役を、当時子役として人気絶頂のマーガレット・オブライエンに演じさせたかったからだとか。当時の彼女の年齢では末っ子役が適当だったと言うことでしょう。逆に、エイミー役はエリザベス・テイラーでしたから、そういうことになった訳ですね。'94年版のジョー役とベス役にちょっと不満だった(エイミー役のダンストは最高!)のと比べると、アリソンとオブライエンは適役だったと思います。ローリー役も私のイメージとしては、クリスチャン・ベールよりローフォードの方が近いかも…。'33年版のジョーがキャサリン・ヘプバーンだと聞くと、それは正に適役ではないかと、そちらの方を是非観たくなります。ストーリーとしては、何だか淡々と進んだ感じ。時間は、'94年版とほとんど変わらないけど、ここは外さないで、と思うエピソードが描かれていないのがちょっと残念。もっと多くのエピソードを描き、駆け足で物語が進んでいるはずの'94年版の方が詳しく描かれているように感じるのは、おそらく私がそちらを何度も観ているからでしょう。しかし、それぞれの時代に作られた、それぞれの良さがあるのです。四姉妹に華々しいキャストを揃え、テクニカラー色彩が見事なこの作品もまた、私の心に残る『若草物語』であることには違いありません。LITTLE WOMEN1949年監督:マーヴィン・ルロイ脚本:アンドリュー・ソルト、ヴィクター・ヒアマン、サラ・Y・メイソン原作:ルイザ・メイ・オルコット出演:ジューン・アリソン、エリザベス・テイラー、マーガレット・オブライエン、ジャネット・リー、メアリー・アスター、ピーター・ローフォード DVD