☆パンズ・ラビリンス☆
最初は子供向けファンタジーかな、と思っていましたが、アカデミー授賞式で流れたグロテスクな映像とPG12だという事を知り、興味を持ちました。1940年代半ばのスペイン。スペイン内戦後も圧制に反発するレジスタンスは山間部でゲリラ闘争を繰り広げていた。内戦で父親を亡くした少女オフェリアは、ゲリラの鎮圧の為に山間部に駐屯する将軍と再婚した臨月の母親と共に、その山間部にやって来たのだった。そして・・・なるほど、これは小さな子供と一緒には鑑賞できません。観たらトラウマになるかも、夢でうなされるかも。所謂子供向けのファンタジーではありません。スペイン内戦を引きずる場所で、継父は冷徹、残酷極まりない人間。生まれてくる子は男の子だと信じ、妻は二の次、オフェリアに関してはもちろん愛情も何もない。そんな継父をオフェリアは恐れ、憎しみを抱くようになります。様々な辛い場面に遭遇していく内に出会うのは昆虫の姿をした妖精。その妖精に導かれ謎の迷宮へ足を踏み入れたオフェリアを待っていたのはパン(牧神)。オフェリアは地底の魔法の国のプリンセスの生まれ変わりで、満月の夜までに三つの試練を乗り越えれば、彼女は魔法の国に帰ることが出来る、とパンは言うのです。童話、おとぎ話は「めでたし、めでたし」 「そして永遠に幸せに暮らしました」 と言うようなハッピーエンドが普通ですが、本来はブラックの要素が多く、本当のエンディングはそうではない、と言う話もよく聞きます。いろんなエグイ話がいっぱいで、でもそこから勇気や優しさを持った人たちが希望を持って歩んでいくハッピーエンド・・・これがよくある所謂ファンタジーで、子供達はこういうものからいろんな事を学ぶのだと思います。オフェリアの現実は辛い事だらけ。地底に行けばその辛さから逃れられる。もしかしたら、パンや妖精や地底の世界は彼女の妄想だったのかもしれません。辛い現実から目を背けたい為に作り上げた世界かも。そして、ラスト。あのラストをどういう風に捉えるかは観た人それぞれに判断を委ねているのでしょう。私は、あの微笑を見て彼女は結局幸せになったのだと判断しました。ここから子供達にどういうメッセージを与えられるのでしょうか?救いようがない現実を見せて、そこから逃避する術を学べと言っているのか、それともこんな事が起きる戦争の悲惨さを教えているのか。小学生の子供達にそれらの意味を理解する事は出来ないでしょう。では大人たちに向けたメッセージだとすれば何なのか? 救いを求めたオフェリアの切実な願いを、誰も救ってあげられませんでした。オフェリアを救ってあげられなかった事への罪の意識、私はそれを感じました。現実世界で不幸だった少女は、結局○で幸せになった。この作品は、大人へ向けた痛烈なメッセージだと思うのです。戦争にしろ、もっと身近に起る虐待やイジメにしろ、我が子のことだけでなく、周りの大人たちが子供達をしっかり見守り、愛情を持って接する事の大切さを言いたかったのではないか、と。これは大人が観るべき作品です。目を覆いたくなるような戦争の現実と、ファンタジーの世界を巧くいい具合に絡めあわせています。非常にグロテスクなモンスターたちと魔法の国の不思議な世界は、CGと言うよりアナログ的な感じも受けました。ハリウッドものとは違う、胸が痛くなる、何か重いものを背負わされたような感じになる作品です。でも、だからこそ心に残るのではないでしょうか。EL LABERINTO DEL FAUNO / PAN'S LABYRINTH2006年メキシコ/スペイン/アメリカ監督/脚本:ギレルモ・デル・トロ出演:イバナ・バケロ、セルジ・ロペス、リベル・ベルドワ、ダグ・ジョーンズ、アリアドナ・ヒル、アレックス・アングロ 他パンズ・ラビリンス 通常版(DVD) ◆20%OFF!