☆この道は母へとつづく☆
2005年ベルリン国際映画祭の少年映画部門でグランプリを受賞した作品です。ロシアの孤児院で暮らす6歳のワーニャは、養子を探しに来たイタリア人夫婦に引き取られる事になった。正式に引き取られるその日まで後わずか、そんな中以前他へ引き取られていった友達のムーヒンの実の母親が、孤児院に訪ねて来て院長に追い返された。それを見たワーニャは、もし自分の実母が同じように訪ねて来たらどうなるのだろう、と思い、イタリアに行く前に一目でも母親に逢いたいと、母親探しの為に孤児院を脱走するが。院長に呼ばれて面接に行くワーニャを、孤児院の子供たちは興味津々で、そしてちょっぴり羨ましそうに見送ります。イタリア人夫婦に気に入られたワーニャは彼らの養子になるべくイタリアに向かう事になりますが、それを知った孤児院の子供たちはそれらからワーニャのことを「イタリア人」と呼ぶようになります。原題はそこから来ています。極寒のロシア、灰色の空の下に建つ孤児院はそれだけでうら寂しい。その中にいる多くの孤児たちはその人数から静けさとは無縁なのですが、彼らの瞳の中は寂寥感であふれています。ワーニャが裕福なイタリア人の養子になるとわかってからは、からかい半分でワーニャを「イタリア人」呼ぶと仲間たち。ワーニャを見る子供たちの瞳にそこはかとない羨望と寂しさを見ます。養子斡旋業者はとにかくお金に物を言わせ、経営が大変な孤児院の院長は、とにかく養子口があれば子供たちを送り出す。養子縁組をしてその子供たちの臓器を売買する、そういう話も実際にあるわけで、こういう話は本当に良い縁組がなさればいいのですが、恐ろしい面も多々あります。ずうっと孤児院で育ち十代後半になった子達はそこに居つき、狡賢く、ある意味たくましく生きていくという、現代のロシアの経済事情や問題をリアルに描き出しています。ワーニャは、実の母に逢う為に字を覚える事から始め、色々と手を打って脱走し母親探しの旅に出るわけですが、6歳の子供にしてはえらく段取りがいいのは、この歳にしてガソリンスタンドでアルバイトをしたりしているからか。実際母親探しの旅が始まってからは、街の不良にからまれたり、斡旋業者の運転手に追いかけられたりとハラハラしますが、汽車でのシーンはユーモラスな部分も見られます。ただただ全く顔も知らない母親に逢いたい一心で、危険な目に逢いながらも旅をするワーニャに次第に感情移入してしまいました。しかし、ラストがあまりに…。せっかく運転手が怪我をして云々の伏線があったというのに、もっとそこを活かすべきだったと思えるのです。いい具合に進んでいただけに思わず「エッ!?」と言う感じ。まあ、ワーニャが友人アントンに宛てた手紙でどうなったかはわかるのですが。邦題の感じからするといかにもお涙頂戴、と言う映画だと想像しがちですが、決してそうではなく、身勝手な大人たちと捨てられた子供たちの悲哀、それと同時に彼らの逞しさを見ることが出来ました。だから拍子抜けするようなラストは惜しいのです。それにしても、ロシアの孤児院ってあんなものなのかしら。愛情に乏しくて悲しくなってしまいました。ITALIANETZ / THE ITALIAN2005年ロシア監督:アンドレイ・クラフチューク脚本:アンドレイ・ロマノフ出演:コ―リャ・スピリドノフ、マリーヤ・クズネツォーヴァ、ダーリャ・レスニコーワ、ユーリィ・イツコーフ、ニコライ・レウトフ 他【25%OFF】[DVD] この道は母へとつづく