『ローサのぬくもり』
≪きっとお母さんに逢いたくなる≫昨日は町内会の道路清掃がありました。清掃後に役員の方たちが用意してくださった昼食を頂いていた時、60,70代の方数人が横にいらしたのですが、その方たちの会話が「私達の頃は嫁いだら絶対に帰られないと思っていたし、親もそう言ってたけど今の親達は何かあったら帰って来い、だからね。だからこんなに離婚が多い」と言うものでした。確かに、今とはその辺の意識は少し違うかもしれません。でも、多くの人は結婚する時、「この人と一生添い遂げたい」と思ってすると思います。しかし、してみたらとんでもない暴力夫だったとか、ギャンブル狂の借金男だったとか、別れなきゃどうしようもない場合だってあります。もちろん、男性側にとっての妻がそういう場合だってある。昔の人は、打たれようが借金こしらえてきてお金に困ろうが、我慢していた人が多かったようですが、現代はそんなに辛い目にあって我慢するより、さっさと別れて人生やり直した方がいい、と思う人が多いんじゃないでしょうか。私の周囲で別れた人たちはみんなそうです。話は今日の映画ですが、この映画の主人公ローサも、暴力的な夫に苦労しながら、我慢して一生を送った女性です。暴力的な父親が嫌で両親の元を離れて都会で暮らすマリア。でも、職は無く、アル中で、愛してもいない男の子供を身ごもってしまった。そこへ父親が倒れて街の病院へ入院する事に。そして看病の為に母親のローサも一緒に村から来て、マリアのもとへ身を寄せてしばらく一緒に生活をするのです。夫や娘に嫌な態度や言葉を投げかけられても、怒りもせず(我慢してる)、ただただ自分のペースで日々を送るローサ。最初怖ろしいほど殺風景で、ひんやりとするような冷たさの感じられるマリアの部屋も、ローサが買ってきた鉢植えの花や、彼女が編む赤ちゃんの服を見ていると、その部屋が段々明るく、彩が良くなっていくのです。多くを語らない母親の愛情がそんな何気ない事でマリアの気持ちの変化も生んでいく。荒れてしまっていたマリアの生活に、ローサがもたらしたほんのちょっとの温かさが、実はかけがえのないものだったと気付く頃には…そして階下の老紳士とのエピソードもいい。みんな孤独なんですよね。だから誰かとコミュニケーションを取りたい、でも都会ではそれもままならない。ローサが縁でマリアと老紳士との繋がりが出来、思わぬ展開になって行くラストも、私にはとても安心できるものでした。ローサは結局幸せだったのかもしれません。いろんな試練や葛藤を通り越したら、悟りみたいなものが開けるのかも。私ならあんな夫だったら絶対に我慢できないけど。母親って、やっぱりいつまでも温かくて安心できる場所でいなきゃいけない、って思いましたよ。地味な映画だし出演者もスターはいないけど、ジンワリと胸に来るいい映画でした。SOLAS1999年スペイン監督/脚本:ベニト・サンブラノ出演:マリア・ガリアナ、アナ・フェルナンデス、カルロス・アルヴァレス=ノヴォア、アントニオ・ペレス=デシェント