「オーヴェール・シュル・オワーズの教会」@オルセー美術館&原田マハ著「リボルバー」
「オーヴェール・シュル・オワーズの教会 後陣」1890年 カンヴァス 94x74.5 原田マハ著「リボルバー」の「Ⅴ オルセーの再会」の中でパリのオークションハウスに勤務しゴッホとゴーギャンの研究家である小説の主人公「冴」がこの絵の前に立ち「オルセー美術館が所蔵するゴッホの作品の中で白眉の一作、描かれているのは教会であって教会ではない。隅々まで力がみなぎり自分がここにいるんだと叫んでいるそれは、まるで画家の化身だ。これを描き上げた数週間後にゴッホはこの世を去るわけだが、冴にはそれが不思議でならなかった。何度見ても、まもなく自殺を遂げる人物が描いたものとはとうて思えない・・」と綴られる箇所があります。 2006年と2014年にオルセー美術館を訪問した際に見ているはずだけれど記憶に残っていないこの絵を画集で見直しても実際に見る絵と迫力が違い過ぎるのか原田マハ氏のようにゴッホの強い生命力のようなものが中々伝わりません。ただゴッホの他の絵のサイズと比較してみると、カンヴァスは「星月夜」の72.5x92よりも大きくそれだけゴッホにとっても意欲作だったのかなぁと想像します。 私にとって今でも「自殺する人が描く絵だろうか?」と思うのはサン・レミからオーヴェールに移ってから弟テオの子供の誕生を祝って描いた「花咲くアーモンドの枝」でこの絵を見ると平安で穏やかな気持ちになる事が出来ます。「花咲くアーモンドの枝」のようにゴッホが描いた日本風の植物の作品には彼自身の人生観が込められているとも言われているようです。 サン・レミの病室 1889年 サン・レミ時代の絵の1枚「サンレミの病室」が「オルセー見学ガイド」に下記の解説付きで載っていてこれも興味深い内容です。 『生前にヴァン・ゴッホの絵画について唯一発表された研究書の中で、アルベール・オーリエは「まるで戦闘中の巨人たちのようなねじれた木々...。彼の作品のすべてを特徴づけているのは、過剰な力、過度の苛立ち、過激な表現といった度を過ぎたものである』 ねじれを生命力と感じるか苛立ちと考えるかは見る側よって正反対にもなるのかなぁと思います。「オーヴェールの教会」を描いた数週間後に世を去ったゴッホの葬儀をこの教会で行う事を教会側から拒否されたのはとても皮肉な感じがします。